「骨が語る兵士の最期」楢崎修一郎。アジア太平洋戦争での戦没者遺骨収集の真摯な人類学者による記録。科学的な遺骨鑑定を通じて戦争の不合理さを客観的・科学的に告発。特にサイパン島、テニアン島での遺骨鑑定と収集では女性や子供、老人の遺骨が多く発見され、子をかばう女性の遺骨などに筆者の悲しみが何の脚色もなく書かれ、その切ない悲しみ、嗚咽を込めながら、冷静に科学的に記述され、読んでいて切々と伝わってくる。ちなみに、私の母方の叔父もサイパン島で玉砕した(と伝えられている)。それだけによけいに戦争を仕掛け、民間人も含め300万人以上の国民を死に追いやった者(戦争で儲けを諮った者やその代弁者の軍部・政治家、一部の右翼国粋主義者等々)達を決して許してはいけない憤りを覚えさせる、心に残った本であった。
「銃後の民衆経験-地域における翼賛運動」大串潤児。読むのに大変時間がかかった。約1ヶ月。敗戦の時、軍部や官僚は戦争責任から逃れるために公文書はもちろんすべての文書を徹底的に焼却し、証拠隠滅を図った。そういった歴史検証上の困難を持ちつつ、本書は膨大な当時の雑誌や各地方に残されている公文書や機関紙誌等を丁寧に収集、銃後の民衆の姿を客観的に事実に基づいて詳細に報告している。その一つ一つが銃後の民衆の姿をリアルに浮き上がらせ、丁寧に読ませていただいた。在郷軍人会、国防婦人会、産業報国会、御真影を奉り教育勅語を叫び天皇のために死ぬことが最高の名誉であると叫び若者や子供たちを死地に追いやった教師たち、多く国民の孫・息子・父・兄・弟のみならず病弱者までも兵士に送り出すための行政を推し進めた地方行政官、等々は戦後何所に行ってしまったのか。前述の「骨…」と同じく、今また戦前と変わらない状況が近づきつつあることに対して、真摯に丁寧に警鐘を鳴らしておられる本だと私は感じている。
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