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「勘竹庵」evnc_chckの音楽やそれ以外

音楽の話題が中心になるかもしれませんが日々の雑感など書いていけたらと思っています。

フランク・ザッパ風の曲を創ってみましょう(1)

2009-08-28 00:04:53 | 音楽(DTM)
フランク・ザッパは若くして亡くなったことや、ステージでのシュールで過激なパフォーマンスや政治的な発言で、(一部の)ロックだけでなく(一部の)ジャズや(一部の)クラシックの(一部の)ファンの間でも(一部の)カリスマ的な人気があります。

彼はとにかく緻密に楽譜を書き込んでいくことが大好きで、作り上げた自身の作品を実演奏が可能であればどんなジャンルからでも人材を採用しました。

完成した作品は長調とも短調ともつかない複雑で現代音楽のような響きを持ち、リズムも一回や二回聴いたぐらいで拍子がわかるような曲ではありません。また時代によって興味の対象も変化しているのか、ブルースをパロディにした演奏をしたかと思うとジャズを分解再構築してみたり、そしてその都度それに対応したメンバーを集めて演奏をしているようです。
しかしやはり底辺にはロックと現代音楽のテイストが強く流れていると思います。特に現代音楽についてはとかくわかりにくいという印象が(私も含めて)あるのですが、ザッパなりにポピュラーなアレンジをして理解を深めてもらおうという気持ちが伝わってくるように感じます。

そんなザッパの現代音楽テイストのある曲の、上澄みをすくったような「ナンチャッテFZ」を創るべく、恐らく「殆ど誰も興味も無い」でしょうがいろいろ考えてみます。

次回からフランク・ザッパの公倍数的な特徴を浅く広くまとめ、「あんな曲がオレにも創れたら・・・」と考えている変わり者のキミ!のために論じさせていただきます。

「失恋」?!思い出したくもない!

2009-08-04 00:04:10 | 音楽(DTM)
今回のE-Windのテーマ指定は「失恋」・・・。

そりゃそれなりに多感な青春期もありましたので、カノジョ欲しくてギランギランしている年頃は、聞くもあんまりな(個人的には)涙なしでは語れない失恋も何度か経験していますが・・・。

しかし、通勤電車でも職場でも疲れと緊張で草食ぶりにも程があるワタシに今更どうせいと・・・?

で、そのままストレートに表現するにはもう年を取りすぎていますので、ここは少しひねってコミックの「トーマの心臓」をモティーフにしてみました。

組曲「トーマの心臓」より「これがぼくの愛」

「トーマの心臓」は最早巨匠の領域にある、漫画家「萩尾望都さん」の初期代表作です。雑誌『少女コミック』に1974年に連載された、と言いますからもう30年以上も前の作品です。現在、大学生くらいの方々から見るとこの世に生を受ける前のことですが、男性ばかりで構成された劇団「StudioLife」が舞台化したので、案外、原作は読んでなくても題名くらいは聞いたことがある。という方もおられるかも・・・。ちなみに、「StudioLife」の舞台は私は未見ですが、先日もニュースで人気コミックの舞台化をすると報道されていましたね・・・。

ということでこの物語は以下のように始まります。

冒頭、雪の中。鉄橋から落ちて死ぬ少年トーマ。彼は全寮制の男子校シュロッターベッツ・ギムナジウムのアイドルであった。
当初、事故死と思われていた彼の死であったが、同じシュロッターベッツ・ギムナジウムでトーマの上級生で模範的な生徒として全校の信望も厚いユーリは、彼に生前のトーマから送られてきた「遺書」によりこれが自殺であることを知る。
実はユーリは、かつて自分に思いを寄せるトーマを、人前でこっぴどくふってしまったことがあり、その失恋の痛手が元でトーマは自殺したのだと理解する。そして、一方的に自分を愛して自殺した上で、押し付けがましく遺書を送ってきたトーマに罪悪感を感じ悩むユーリ・・・。
そんな彼の前にトーマと瓜二つの転校生エーリクが現れる。エーリクが目に入るとトーマを思い出してしまうユーリは、ことあるごとにエーリクに怒りや憎しみをぶつけ、またエーリクもエキセントリックな性格からお互いは強く反発しあう。しかしユーリの自分に対する過剰なまでに厳しい態度に、トーマとユーリの間に何があったのか?エーリクは興味を持つ。

そんな中、エーリクの母が事故で死に、深く母を愛していたエーリクは寮を抜け出して母のいない自宅に帰ってしまう。それを追いかけ彼に優しく接するユーリにエーリクは次第に惹かれていく。
そしてエーリクは学校の図書館で偶然見つけたトーマの詩を読み、トーマが自殺したこと。そしてそれはすべての愛から背を向け孤独に生きようとするユーリへの、トーマの純粋な愛であったことを察する。

・・・続く・・・

タイトルは自殺したトーマがユーリに送った遺書「これがぼくの愛、これはぼくの心臓の音、君にはわかっているはず」という文章から取りました。

編成は後期バロックで典型的な
・弦楽隊(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)
・木管(フルート2、オーボエ1、ファゴット1)
です。

テーマが普遍的な「人の愛」「神の愛」であることから、宗教曲のテイストを出せたら、と思って創りました。
少しポップスで使われる音使いも混じっていますが、できるだけ対位的な手法を使っています。

イントロは弦だけによるゆったりとした導入。この後に登場する主題を想起させる音形でゆっくりと下降し、じょじょに盛り上げていきます。
この部分はSlowStrings系の音色を4トラック使用し、ホール系のリバーブをかなり深めにかけています。少しイージーリスニングのようになってしまいますが、教会とか聖堂とかで響く天使の歌声のようにしてみたいという思いからのミックスです。

その後、全体のリズムを主導する中低音での細かい弦の動きが現れ、木管による主題の提示があります。
主題はホ短調で演奏され和声はほぼ2小節単位で動きますが、最低音を担当するコンバスが12小節の間主和音の基音であるE音を鳴らしており、ありがちな手法ではありますが緊張感を高めます。
主題が演奏される間に弦も対旋律や内声で音数を増しますが、23小節目で動きが止まったかのように木管が明確な四分音符で同一フレーズをくり返します。しかし内声と低音は和声的な変化を彩ることで、静かな緊張感を維持し、次の展開につなぎます。
この部分は室内楽的な響きが欲しいと思いました。
そこで弦についてはチェロとコンバスにはシンフォニックな弦より、少し小編成で演奏された響きをつけようということでリバーブは少し浅めです。
また木管も同様の考えでミックスがされています。少し前目に感じると思いますが一応は意図したことです。
宗教曲の雰囲気を出すため、木管はもっと「ノン・ヴィブラート」な音色が欲しいのですが、あまり望む音色が無くて結局はロマン派のオケのような音色になってしまいました。

主題が提示された後、弦のみの編成で主題を展開させての掛け合いが続きます。元々は2小節単位でのゆったりとした主題ですが、ここでは1小節単位に短縮した音形にしてややリズミカルにしています。冒頭は少しフーガのようですが、あまり長い尺にするのは苦手なので主唱に応唱が1回行われるのみで、あとは装飾的なフレーズが重なって、元の調に戻りながら盛り上げて行きます。
この部分はより室内楽的な響きにするため、弦4パートの配置を狭めてリバーブも浅めです。現代の弦楽器では無く、バロック期の弦楽器(所謂バロック・ヴァイオリンなど)を使っているような音色を目指しています。もっとギコギコした音が入る音色が好みでしたが、なかなか思うようにはいきません・・・。
いっそのこと、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス1本づつの弦楽四重奏にしてもよかったかもしれないですね・・・。技術的にはハードル上がりますが。

弦が盛り上がった後、また静寂が訪れるように今度は木管だけによる主題が再現されます。ここも1小節単位に短縮した音形の主題ですが、実は若干テンポを落として音色ともども素朴にならないかと試してみました。
フルート2管、オーボエ1管、ファゴット1管でのアンサンブルですが、寂しげな中に秘めた愛のような物が表現できていれば・・・、などと傲慢なことを考えていたりします。すいません・・・。

木管が悲壮感を感じるような音形を音域を上げながらくり返し、そこに壮大な弦によるカデンツァが入ります。ここはフルオケの響きで勢いだけで持っていった。といったところでしょうか?
しかし家内からは「もっと続くと思ったから、突然終わって物足りない」と評価されました・・・。確かに唐突ですよね?終わり方。

だから長い曲創るの苦手なの!

今回は3部作とのことですので、次作も「トーマの心臓」からテーマを選んで創作したいと思います。よろしければ次回もお聴きくださるとうれしいです。

ビッグバンド=スィングと思うと退屈かも・・・(最終回)

2009-06-25 00:07:37 | 音楽(DTM)
今回、EWで公開させていただいたビッグ・バンド・ジャズの新曲ですが

「One Night Match」

大体、下のような編成を想定しています。

*トランペット(tp):4人
*トロンボーン(tb):2人(うちバス・トロンボーン1人)
*サキソフォン(sax):5人(アルト2人、テナー2人、バリトン1人)
*ピアノ(pf):1人
*ベース(bs):1人
*ドラムス(dr):1人

概ね一般のフルバン編成ですがギターを編成していません。
これは一番の理由はひたすらストロークを入れるのが、単にめんどうであったという(ヲイ!)こと以上に、やはり全体にモードジャズの曲をイメージしたアレンジのため、コードを弾く楽器はあまり入れる余地がないことが理由です。

テーマはヘ長調で12小節の変形ブルースですが、あまりブルースっぽく聴こえ無いですね。新主流派のジャズ・プレイヤーが創るブルースはこんな感じのものが多いですね。
代表的なものではチック・コリアの「Matrix」などです。ってご存知ですか?

使用音源は例によってSonicCellですが、今回も拡張ボードを2枚追加しています。
ポピュラー・ミュージック用の「STUDIO SRX SRX-03」と管弦楽に威力を発揮するオールマイティーの「COMPLETE ORCHESTRA SRX-06」です。
特に今回はSRX-03に含まれている「Sax Sect mp」がサックス・セクションのパートに威力を発揮しました。まぁ所謂GMにもあるブラスのサックス版ですね。

少し気になるのはステージでの楽器の配置を意識しすぎて、ブラス、特にtpを右にパン振りをしすぎたような気がしています。
あとドラムスのEQがミックスの段階でハイをカットしすぎたように思います。最後にトータルEQで逆にロー・カットしてつじつまを合わせましたが、今度は全体に低音不足でちゃらちゃらしたような印象です。最初にドラムレスでミックスしてローを上げておき、その後にハイを上げたドラムスをミックスするのが正解のような気がしています。

追加
EWで公開させていただいたらコード・プログレッションが凝っている。というようなご感想が多いようです。
このブログに来ていただいた方限定で出血大サービスで、テーマ部分のコード・プログレッションを書いておきます。機能アナリゼなどしてお気軽に楽しんでください(何そのマニアな楽しみ方 笑)。

F△7 |E♭△7onF |A♭△7onB♭ |Dm7 |
B♭9 |D♭7 |G♭△7 |Gm7 |
D♭△7 |C7 |F△7/A♭m7 |Gm7/G♭7 |

それと次のEWのテーマ指定は困りました。この年になって今更・・・。しょうがないからハーレクイン・ロマンスでも読むか・・・。

ビッグバンド=スィングと思うと退屈かも・・・(3)

2009-06-22 00:07:32 | 音楽(DTM)
前々回からビッグバンド(以下フルバン)をご存知無い方のために少し説明をさせていただいています。
中でもフルバンで演奏経験のある方、あるいは現役で楽しんでおられる方に最も馴染みがあるカウント・ベイシーについて前回はお話しましたが、今回はフルバン=スィング・ジャズのイメージがあるフルバンの多様さを説明させていただきます。

ベイシーのバンドでtpを担当し、ベイシー亡きあとのバンマスをつとめたサド・ジョーンズもフルバンを率いていました。ピアニストのメル・ルイスと共同で運営していたためファンには「サドメル」と愛称されていましたが、ハービー・ハンコックの曲などを取り上げ、緊張感あふれる斬新なアレンジと激しいビートはスィング・ジャズが眠たい人にもピッタリです。

バド・パウエルに憧れ渡米したピアニストの秋吉敏子(憧れのバドとの初対面でいきなり「カネを貸して欲しい」と言われてショックだったそうですが)も、自作曲をバップ色の強いアレンジで演奏するバンドを率いていました。メンバーにはフランク・ザッパのバンドにいたtbのブルース・ファーラーなど、ソリストとしても超絶なプレイヤーを揃えており、その一糸乱れぬアンサンブルはジャズ界のベルリン・フィルです(笑。
ちなみに秋吉敏子の「右腕でガッツポーズをするような指揮」は妙にかっこいいです・・・。

ウェザー・リポートでその天才ぶりを発揮しながらも不幸な最期であったベーシスト、ジャコ・パストリアスが率いていたフルバンは、「スティール・ドラム」や「シンセサイザー」「エレピ」なども編成され、サウンドもフュージョン色が強いものでした。16Beatや8Beatのリズムの上で派手派手なホーンセクションが鳴り響き、スティール・ドラムも超絶に動き回る中、「それでも主役はオレ!」とばかりに弾きまくるジャコのフレットレス・ベースは好き嫌いはわかれるものの新鮮なサウンドでした。

少しポピュラーなところではアニメの「ルパン三世」シリーズのBGMを聴いてジャズが好きになった。という方がおられると思います。
あのアニメの音楽をずっと担当していたのは大野雄二ですが、比較的初期の劇場映画版のサントラを演奏したメンバーのクレジットを見ると所謂「9ピース」と呼ばれる編成に近い演奏形態のようです。
ちなみに「9ピース」とはフルバンのホーンセクションをぐっと減らして、一般にはtp2人、tb1人、sax3人(as、ts、bs)にピアノ、ドラムス、ベースを加えたものです。これにギターが入れば殆どファンクですね・・・(笑。

ルパン三世のサントラは曲にもよりますがtp2人、tb1人、sax2人(as、tsを曲によって持ち替え)にキーボード、ギター、ドラムス、ベースで構成し、必要に応じてストリングスやパーカッションを導入していますね。これも広義にはビッグバンドと言えます。
そして曲調は伝統的なバップのコード進行を多用しつつ、リズムは16Beat、8Beat、シャッフルなどのタイトで軽快なものを使い非常になじみ易くなっているので、このサントラを聴いてジャズ好きになる方が多いのは頷けます。

かように多用な表現が可能なフルバンはクラシックで言えば管弦楽に該当する表現手段だと思います。

商業音楽の世界ではかつてのフルバンはキャバレーやテレビなどのショーで、所謂「ハコバン」としてBGMや歌伴を担当していたものですが、シンセサイザーやシーケンサの技術革新により、それらの仕事が激減したことでプロのフルバンは殆ど解散してしまったと思います。また、昔はカラオケだって生演奏を録音したものでしたが、DTMに必要なコストが低減した上に、新曲を次々とリリースするニーズの拡大に、時間・コストの両面から生演奏が対応できなくなったことも大きな要因であったと思います。

しかし長い年月をかけて検証されてきたこの編成を使った音楽がもっと創作されていってもいいのでは?とやや懐古的な意味も含めてフルバン編成で1曲創ってみました。
和声的にはバップとモードのいいとこどりのような進行で、リズムは高速4Beatなんでノリもタイトで聴きやすいのではないかと思います。よろしければどうぞ・・・。

「The One Night Match」

ビッグバンド=スィングと思うと退屈かも・・・(2)

2009-06-20 00:02:06 | 音楽(DTM)
前回からビッグバンド(以下フルバン)をご存知無い方のために少し説明をさせていただいています。

フルバン。特に大学や社会人のアマチュア・フルバンに所属された方だと一番馴染みがあるのが「カウント・ベイシー」が率いていたバンドでしょう。本人はすでに故人ですがバンド自体はその後も継続しています。一時はバンドに所属していたトランペッターのサド・ジョーンズがバンマスをしていたそうです。

ベイシーのバンドの特徴はなんと言ってもその上品なアレンジでしょう。同じ上品さでも白人であるグレン・ミラーやベニー・グッドマンのバンドは少し線が細いように感じますが、ベイシーにはいかにもクロっぽいノリの上で上品にアンサンブルが動いているように感じます。構成がわかりやすいのもあって大学のフルバンでは定番です。
ただし余談ですが管楽器のアンサンブルが緻密な分、ピアノがジャカジャカ弾くのは邪魔なだけで、ベイシー自身はピアニストであったにもかかわらず、曲の中では殆どピアノを弾いていません。ところどころの要所要所で「カラン」「ポロン」と弾くだけで、私も自分が所属していたバンドがベイシーを演るときは正直ヒマでヒマで・・・。

ベイシーが自分のバンド内でピアノを弾かなかった理由は、アンサンブルが緻密なので和声を邪魔しないようにしたこととともに、盟友であるギターのフレディー・グリーンのカッティングがリズムと和声の両面から十分に機能していること、また、ベイシーの性格なのかもしれませんが自分のスタイルがストライド奏法で、古臭いものだと卑下していたらしいこと。です。
実際に彼がTVの音楽番組に出演したビデオが残されています。1950年代後半の録画だと思うのですがビ・バップの異端児「セロニアス・モンク」と一緒に出演していました。その中でベイシーがピアノを弾くのですがそのノリノリのストライド・ピアノはかなり超絶でした。ただオスカー・ピーターソンとかテディー・ウィルソンとかの名手がそれで食ってるし、バド・パウエルとかの強烈なテクニシャンが華々しく活躍していた時代なので、控えめな気持ちになるのもわからないでも無いですが。

さきほどからベイシーのバンドの話に終始していますが、何にしても大学のフルバンでは定番であり、かつ非常に奥深いアンレンジとアンサンブルの妙があるベイシーですが、ベイシーに限らずグレン・ミラーにしてもデューク・エリントンにしても、あまりにもアンサンブルを緻密にしている分、ジャズの即興性から表現される緊張感やスリリングさは希薄に感じます。また大学や社会人のアマチュアのフルバンに所属する方々は、「ジャズが好き」と言うより「中学、高校とブラバンをやってきたが軽音楽がやりたい」方々が多いように感じます。大ヒットした映画「スィング・ガール」を思い浮かべていただけるといいのですが、ブラバンとフルバンの違いはリズムの違いくらいに感じておられるのでは無いでしょうか?

そういったこともあって、スィング・ジャズよりもバップ以降の、アドリブを最重視するジャズこそがジャズだと思っているような人間(あ!俺だ・・・)には、少々退屈な音楽であることも事実だと思います。あくまで個人的意見ね。「個・人・的・意・見」。

しかしジャズがスィングからビ・バップ、ハード・バップ、新主流派(モードと呼んでもいいかも)、その他にもファンキー、ジャズロック、クールなどいろいろ派生して行く中で、もちろん時代の変化とともにフルバンの編成も含めてその表現は大きく変化しています。

次回は多用な表現を聴かせてくれるフルバンについて更に説明したいと思います。

ビッグバンド=スィングと思うと退屈かも・・・(1)

2009-06-17 00:04:40 | 音楽(DTM)
学生時代は大学のビッグバンド(以下フルバン)でピアノを担当していたevnc_chckです。

フルバンをご存知無い方のために少しだけ説明を。
フルバンはジャズを始めとするポピュラーミュージックの演奏の一形態です。編成は一般には17人で以下がその内訳です。

*トランペット(tp):4人
*トロンボーン(tb):4人(うちバス・トロンボーン1人)
・注)tp、tbをまとめて「ブラスセクション」と呼ぶ
*サキソフォン(sax):5人(アルト2人、テナー2人、バリトン1人)
・注)サックス奏者はフルートやクラリネットを持ち替える場合もあり、曲調によってはソプラノ・サックスが編成されたりもする
・注)saxをまとめて「リードセクション」と呼ぶ
・注)tp、tb、saxをまとめて「ホーンセクション」と呼ぶ
*ピアノ(pf):1人
*ギター(gr):1人
*ベース(bs):1人(アコースティック・ベースが使用されるが曲調によってはエレキ・ベースも使用される)
*ドラムス(dr):1人
・注)pf、gr、bs、drをまとめて「リズムセクション」と呼ぶ
・注)スィング・ジャズ(後述)を演奏する場合はgrは必須だが、バップやフュージョン色が強い演奏の場合はgrは編成されない場合もある

ジャズは元々はマーチング・バンドやカントリーなどがベースでは無いかと個人的には考えています。そこから考えれば当初は所謂「コンボ」と呼ばれる3~6人くらいの小編成で演奏されていたものです。

それが1930~40年代のダンスの流行によりノリの良いスィング・ジャズはBGMとして人気が上昇。演奏する場所も大きなホールが主流になり、それに伴って編成は大きく、バンド間の競争は激化し差別化を図るためにアレンジは複雑に、そしてそれを実現できる演奏技術(アンサンブルも含めて)は向上しました。
この時代のジャズは「グレン・ミラー」「ベニー・グッドマン」「デューク・エリントン」「カウント・ベイシー」などが率いたスィング・ジャズを演奏するフルバンを指す。と断言しても過言では無いかもしれません。

結果として予定調和的な編成とアレンジに刺激が薄まったことから、1950年代の後半くらいにはフルバンに所属するプレイヤーの中からより先鋭的なジャズを求める者が現れ、そこからビ・バップのストリームが始まるわけですが、そのあたりはすでに以下の記事で書かせていただいた経緯があります。よろしければご参考にしてください。

「ジャズの和声と旋法」

次回はもう少しフルバンについて説明を書かせていただきたいと思います。

エキゾチックで重厚(に聴こえる)サントラ・オケに挑戦してみた(最終回)

2009-05-22 00:09:16 | 音楽(DTM)
かつての大作洋画のサントラは本格的な管弦楽を駆使した重厚なものであったのが、最近のサントラ・オケはかなり少ない編成でも重厚さや華やかさが表現されているという実体を検証しました。
大した結論は出せませんでしたが、現在のサントラ・オケの上澄みをすくってあまり難しいことは考えずに作品を創ってみました。
今回は少しこの作品について説明を書かせていただきこの記事も最終回とさせていただきたいと思います。

今回のE-Windのテーマ指定は「遺跡」です。
私の貧困な想像力でわいてくるのは、「ナショナル・ジオグラフィック」や「BBC」の古代文明を紹介したDVDのBGMです・・・。う~む、直球勝負ですね。
この手のBGMもやはり先に書かせていただいた条件をあてはめたような音楽が多いように思います。
そこでここは殆ど機械的にこの条件のいくつかを下記のとおり組み合わせて創ってみました。

・低音はコーラス系やパルス系のシンセサイザーを重ねて厚みや音質の変化を出している
・旋律は金管楽器や木管楽器の独奏や斉奏を多用し、低音から高音へ昇っては下がるような音形で構成して盛り上げる
・高音弦は和声を支えたり、リズムに動きをつけるためにキラキラとした対旋律を担当する
・和声進行は意外と単純(マイナー系コード一発、とかⅥ→Ⅴ→Ⅳ→Ⅲとか)で耳障りよく
・リバーブのかかった打楽器が多く編成され、じょじょに楽器数を増すなどでリズム面で盛り上げる
・低音重視のEQと谷底か天空から響くような大袈裟なリバーブが処理されている

冒頭は低音のパッドが弾き流しをする上で、チャルメラのようなリードがドリアン・モードを基調にしたソロを演奏します。
このリードはイングリッシュホルンの音ですが、EQで低音をバサバサ切ってありますので、倍音の少ないペラペラした音質です。これに聖堂で唄うぐらいの深いリバーブをかけています。ピッチもベンダーでフラフラさせてエキゾチックにしたつもりです。

チャルメラが終わると低音のパッドが数を増します。弾き流しでベースラインを担当しているパッドを2トラック用意して左右に振ってあります。また金属的な音とホワイトノイズのような音で8分刻みをしているパッドをやはり2トラック用意して左右でリズムをコンビネーションで担当しています。
そしてパーカスです。今回はドラムセットは殆ど使っていません。ティンパニ、ハイ・ローのコンガ、鈴、フロア・タム、ベードラを組み合わせてリズム・パターンを作りました。殆ど変化が無いのでややだれるのが芸が無いですね・・・。
そして弦です。中音域で繰り返されるリフと、高中音域で鳴っている対旋律を左右に配置しています。リフは高音をEQでカットして軽くドライめのリバーブを。対旋律は逆に低音をカットしてホール系の深めのリバーブをかけました。
メロが入るまではリズムとリフが続きます。この部分はリディアン・モードで統一しています。少し幻想的な雰囲気が出ているといいのですが。

メロはブレスの強いフルートを使いました。高音をEQでカットしています。メロがドリアン・モードで素朴な感じなので、あまりキラキラした音にしたくなかったのと、結構ノイズが乗るので。

最後にもう一度メロが繰り返されますが、これはSonicCellに装着した拡張ボードに入っている「EthnicFlute」という音色です。あまりエスニックでも無いような・・・。つか最初にメロを演奏する音と殆ど違いがわからないっすね。

一応、以上のような創りで自分なりに「最近のサントラ・オケ」を再現してみました。お聴きいただけるとうれしいです。

「ラーの翼神龍」

タイトルは例によってコミック「遊戯王」の中で登場するカード名です。

コミックの中ではエジプトの墓守を代々の生業としてきた一家(え?)の末裔の少年が、過酷な墓守の運命を呪うあまり作り出してしまったもう一人の邪悪な人格にあやつられ・・・何か説明がめんどうになってきました。カードゲームばかりがクローズアップされがちですが、週間少年ジャンプに連載されていたとは思えない緻密な構成のこのコミック。未読の方はどうぞ。

とにかくこの墓守の末裔と主人公の遊戯やその親友の城ノ内が、世界を破滅できるほどの力が込められた三枚の神のカード(三幻神:ラーの翼神竜、オシリスの天空竜、オベリスクの巨神兵)をめぐって熾烈なカード・バトルを繰り広げます。すげぇ!どんなカードだよ・・・。


今では懐かしい「ゲームボーイカラー」の時代に発売された「遊戯王」のゲームソフトに、おまけとしてこの三枚の神のカードが同梱されていました。当時は人気絶頂。販売すれば瞬く間に売り切れた人気カード・ゲームとあってゲームソフトの販売元のコ○ミも強気でした。ゲームソフトを「遊戯版」「城ノ内版」「海馬版」という三種で販売し、それぞれに付録カードを同梱することで、3つとも購入しないと神のカードが揃えられない!という儲ける気満々の商売ぶりでした・・・。何故か三枚とも持っているevnc_chckです。大人買いってやつっすか?

エキゾチックで重厚(に聴こえる)サントラ・オケに挑戦してみた(4)

2009-05-21 00:07:56 | 音楽(DTM)
子供のころに胸躍らせた大作洋画のサントラは本格的な管弦楽を駆使した重厚なものでした。
しかし最近のサントラ・オケはかなり少ない編成でも重厚さや華やかさが表現されています。
前回は駆け足でごくかいつまんだ形ではありますが、サントラ・オケの時代による移り変わりを検証しました。

結論らしい結論が出ていないのですが、そもそも映画の劇伴音楽は映画がサイレントの時代にすでに存在しています。ただし映画の内容とシンクロさせて再生する技術が乏しかった時代は、上映の都度、舞台裏でピアニストやオルガニストが画面を確認しながらシーンに合わせて音楽を演奏していました。ロシア(旧ソ連)を生き抜いた大作曲家ショスタコーヴィチの学生時代の大切な収入源が、地元の映画館でのピアノ伴奏であったことは有名です。
その流からでしょうか?トーキー映画の技術が確立されてからも、規模の大小はあれどオーケストラが画面を見ながら音楽を演奏し、それを録音することがトーキーの初期には多く見られたそうです。
現在でも贅沢な手法として指揮者が映像を確認しながらオケをあわせて録音することがあります。

しかしそんな贅沢なことをおいそれとはできませんので、メインタイトルを録音したものを音声編集者がつぎはぎして映像にシンクロさせることが一般です。そして現在のこのDAW環境の技術革新は

スコア・ライティング→演奏→録音(エフェクト処理含む)→編集(音源の切り貼りや映像とのシンクロ)

の作業をすべてをPC一台あれば、ほんの15年位前では考えもしなかった投資と技術で実現できます。

映画、特にハリウッド映画を制作するのに必要な予算は莫大なものです。内容の良し悪しと比例しているとは言いがたいものですが、何にしても円貨にして数十億なんて当たり前。かつて歴代1位だった「クレオパトラ」などは当時の通貨で4400万ドルかかった(当時日本円は1ドル=360円の固定レートでしたので参考になりませんが、円換算レートから考えて現在なら最低でもその4倍の価値でしょうね)ということで、20世紀フォックスをつぶしかけたことも含め、いろいろな意味で話題になった世紀のクソ映画です。
このあたり語り始めると爆笑・憫笑ネタがどんどん出てきますが、また別の機会に・・・。

いずれにしても役者のギャラやら映画化権などに予算が多く取られている(らしい)実体の中で、従来なら豪勢にカネをかけたセットやら実物大模型やらモンスターは全部CGになり、同様にサントラはデジタル技術の恩恵を最大限に受け、ヒトも時間も手間もかかるフルオケは敬遠されて現在のような形になっていったのでしょう。

私はコードワークやオーケストレーションなど、ごく当たり前の作曲の知識や技術を向上させることが自分自身にとっては第一義なのですが、よほどの大家ならともかく、まずは音楽ビジネスに身を置きたい。と考えた場合は演奏者や編集者としてのスキルを向上させるほうが早道なのではないでしょうか?

という事で大した話でも無いのに長く引っ張りましたが、現在のサントラ・オケの上澄みをすくって、あまり難しいことは考えずに作品を創ってみました。という個人的な雑談が実は今回のテーマであったりします。
次回で少しこの私の作品について説明を書かせていただきたいと思います。

曲はE-Windに公開させていただきました。よろしければお聴きください。

「ラーの翼神龍」

エキゾチックで重厚(に聴こえる)サントラ・オケに挑戦してみた(3)

2009-05-19 00:02:14 | 音楽(DTM)
子供のころに胸躍らせた大作洋画のサントラは本格的な管弦楽を駆使した重厚なものでした。
しかし最近のサントラ・オケはかなり少ない編成でも重厚さや華やかさが表現されています。
前回は駆け足でごくかいつまんだ形ではありますが、サントラ・オケの時代による移り変わりを検証しました。

現在、ハリウッドを始めとする映画業界で売れっ子の作曲家は?と質問を受けるとまず名前が挙げられるのがハンス・ジマー(ザ・ロック、パイレーツ・オブ・カリビアン)、ハワード・ショア(ロード・オブ・ザ・リング)、ダニー・エルフマン(ナイトメア・ビフォア・クリスマス、チャーリーとチョコレート工場)、エリック・セラ(グラン・ブルー、レオン)あたりでしょうか?彼らの音楽は全部が全部ではありませんが、正にサントラ・オケの代表と思います。
そして実はこの4人ともクラシックの音大を出るなどでの教育は受けていません。

ハンス・ジマーはドイツ出身ですが、元々はシンセサイザー奏者でロックやテクノを演奏していました。今もバンドを率いて演奏活動もしています。

ハワード・ショアはカナダ出身で、バークリー音楽大学を出ていますが、あそこはクラシックの音大ではありません。独自のジャズのアイディアをまとめたメソッドをみっちり仕込まれます。
そして同じカナダの映画監督であるデビッド・クローネンバーグのホラー(わかりにくい映画ばっかりだけどね)の音楽を担当していました。キーキーと叫ぶようなストリングスや、シンセサイザーでノイズを組み込んだ、現代音楽のような曲調が印象的でしたが、ロード・オブ・ザ・リングで不気味で重厚、かつファンタスティックな曲が一気に評価を高めたように思います。

ダニー・エルフマンはロック・バンド出身で、歌もいけるミュージシャンです。自身も「まともな教育を受けていない」と語っていますが、それであの音楽を創るのですから真の意味で天才なんでしょう。

エリック・セラはフランスの作曲家ですが、元々はスタジオ・ミュージシャンで本職はギタリストです。スタイリッシュな作風はフュージョンかジャズの出身なのか?と思わせますがオケのアレンジもうまいですね。

思うんですが、現在の売れっ子作曲家は単なるスコア・ライターでは無く、実務つまり演奏家や編集者として音楽に精通しているのでは無いでしょうか?シンセサイザーなどの電子楽器を駆使して少ない編成をサポートする手法がわかり、スタジオでのミックスの現場で効果的な音響を演出する手法がわかる。悪い意味では無く量産に対応した技術を確立した結果なのでしょう。
スコアを書いて弦を生録りしたものの、少し音が薄いな・・・。と思えばすかさずQLSOかなんかでサポートしたり、自分でFantomやMotifを弾いて音を厚くしたりする。リズムが弱いな・・・。と思えば自分でギターを入れてタイトにする。エフェクターも自分でかける。
で編集したら、すぐにCDに焼いたりサーバーにアップしたりして監督の確認を取る。

まぁ勝手な想像ですがこんな感じでビジネス・ライクに。しかし時には実験的に映画を盛り上げる重要なミッションをこなしているのではないでしょうか?

次回ももう少し現在のサントラ・オケの傾向を自分なりに検証してみたいと思います。

エキゾチックで重厚(に聴こえる)サントラ・オケに挑戦してみた(2)

2009-05-17 00:01:51 | 音楽(DTM)
子供のころに胸躍らせた大作洋画のサントラは本格的な管弦楽を駆使した重厚なものでした。
しかし最近のサントラ・オケはかなり少ない編成でも重厚さや華やかさが表現されています。

いつからこういった傾向になっているのでしょうか?

少なくとも1970年代後半くらいのパニック映画→SF映画へのブームの移行時、ハリウッド大作映画のサントラを支えた作曲家の編成は、まだ本格的な管弦楽編成であったと思います。
この時代の大家は「タワーリング・インフェルノ」「ジョーズ」「E.T」「未知との遭遇」などを手がけた、現在でも超売れっ子にして巨匠であるジョン・ウィリアムス。そのジョン・ウィリアムスと並ぶ巨匠で「猿の惑星」「トラ・トラ・トラ!」「エイリアン」「スタートレック」などを手がけたジェリー・ゴールドスミス。などでしょう。
(余談ですがジェリー・ゴールドスミスは批判的な意味では無く、ジョン・ウィリアムスの作風を少し古いスタイルと評したそうです。)

もちろん映画の内容や時代の流れに合わせて、シンセサイザーやノイズなども取り入れており、いつも管弦楽ばかり使うわけではありません。
特にジェリー・ゴールドスミスは「猿の惑星」では「コワンコワン」と鳴る変わった打楽器に料理に使うボールを。「トラ・トラ・トラ!」では日本の琴と管弦楽の競演。などかなり実験的な作品も創っています。
しかしそれでもかなり正統的な作品群が多いです。

時代が進み1980年代はホラー映画、特にスプラッター・ホラーのブームで、オケ曲よりもゴシックやクラシカルの要素を取り入れたプログレッシブ・ロック風の曲がよく聴かれました。特にテクノや、そこから派生した(と自分は理解している)ハウスなどの淡々としたリズムと繰り返しの多い構成が、ホラー映画やSF映画にマッチすると考えられたのでしょうか?現在にいたるまでいろいろな映画にヒップ・ホップのリズムの上で、演奏自体はロックとクラシックをミックスしたような編成で、ゴシックやクラシカルの要素を感じるメロが乗っかったような音楽が聴かれます。

映画もアクション映画、SF映画、ホラー映画、恋愛映画・・・などと単純に分類できないのと同様に、使用される音楽も分類が難しい傾向になっているのではないでしょうか?

次回では現在のサントラ・オケの傾向をもう少し自分なりに検証してみたいと思います。