バンマスの独り言 (igakun-bass)

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オネゲル「夏の牧歌」

2013年05月06日 | 音楽:クラシック系
さて前回のお話の続きですが、今度はクラシックの紹介なのでカテゴリーが変わります。

先月「リリカルな牧歌~フィンジ:エクローグ(eclogue)」の記事の最後に4曲目の爽快音楽を紹介すると書きました。

それが今回のオネゲルの交響詩「夏の牧歌」です。
 
<牧歌的な音楽>のくくりでは「エクローグ」が僕の最近のヘビロテですが、この「夏の牧歌」は20世紀近・現代音楽の傑作の一つでしょう。
分かりやすい音楽でありながら、ミクソリディア旋法の匂いがプンプンしてどこか浮遊感のある独特な音世界を堪能できます。


<ここでちょっとウンチク>

 ミクソリディアンは長音階に近いスケールですが、導音(Cメジャーなら「シ」)に♭がついているのがポイントです。「ド-レ-ミ-ファ-ソ-ラ-シ♭-ド 」
隣り合う2音の音程関係は<全全半全全半全>
スケールの聴感上「全音関係は力強く、半音関係は情緒的」な感じなのですがミクソリディア旋法では、調にとって最重要である導音⇔主音の半音関係が全音関係に変わっています。この半音関係を失った影響が大きく、これだけでかなり短調に近く感じるのです。
 シ♭-ド-レ-ミ の4音がみな全音関係になっていますね。ですからミクソリディア旋法は、きわめて力強い・明瞭・大胆・広大といったイメージを聴くものに与える音階なのです。

 ミクソリディア旋法の性質は次のように言えます。
•長音階をベースにした明るい音階
•でも普通の長調よりもやや短調に近い
•でも暗いわけではなく、主音周辺がみんな全音差なので、むしろ力強く明らかな響がします

なお、旋法(モード)の話はここや ここでも 書いています。           
                              <ウンチク終了>



ざわざわと草原が風にそよぐような弦の伴奏の上にホルンが伸びやかなミクソリディアン・メロディーを大空に吹き上げていきます。フルートやクラリネットなどの木管が交互に鳥の存在を連想させるような短いフレーズをひらめかせていきます。
季節的には夏というよりは春から初夏へと移行する今の時期の音楽に感じられます。
実にのんびりとした気持ちになる美しい傑作です。




ところで余談になりますが、この曲を実際にコンサートで聴いたお話をちょっと。

比較的に短い曲なのですが、東京での演奏機会はかつてほとんどなく、僕は去年のちょうど今頃、「NHK交響楽団第1727回定期公演」(2012.5.12)で採りあげられるのを知って<この曲を実際この目、この耳で味わうために>NHKホールに足を運んだほどです。

指揮は尾高忠明。弦楽とフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、そして大活躍するホルン各1本。
室内アンサンブルのような小編成ですが、この音楽こそは演奏者にとっては難曲中の難曲なのです。
木管隊の精妙なアンサンブルの上に伸び伸びと歌うホルン。彼ら5人にそっと寄り添う弦楽隊。

彼ら5人とはフルートの神田さん(主席)、オーボエの茂木さん(主席)、クラリネットの松本さん(主席)、ファゴットの水谷さん(主席)そしてその実力を評価されて日フィルから移ったホルンの福川さん。
主席の4人はおそらく日本で最高の奏者たち。
で、福川君はといえばずっと大注目はしてはいたけれど若いのに素晴らしい技術とセンスの持ち主で、今回のオネゲルでは演奏終了後指揮者により2度もオベーション(指名されて一人で喝采を受けること)を受けた、コンサートの立役者となっていました。
(トップの写真はその五人。数ヶ月前、NHKで放映されたコンサートの画面をカメラで撮影)


1920年スイスで作曲されたこの音楽の楽譜の冒頭にはランボーの詩(スタローンじゃないよ!)「あけぼの」の一節が添えられていて美しい詩とアルプスの雄大な自然に触発されたフランスの作曲家オネゲルの耳に心地よい音楽づくりの一面が堪能できる作品です。(初演は1921年2月、パリ)

5月の爽やかな風を全身に浴びながらこの曲を聞くのは無上の喜びでしょう。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
夏の牧歌、いいですね (ゆう)
2024-06-13 11:34:41
夏の牧歌、わたしも高校生だった50年前から大好きな曲です。夏の木陰で、草原を吹きわたる風のようすを眺めながら微睡んでいるようで大好きです。ジャン・フルネの録音を愛聴しています。ライブは、大阪のアマチュア、かぶとやま交響楽団の演奏で聴いたのが唯一です。
あと、オケでは主席ではなく首席です。毛沢東ではありません。
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ゆうさんへ (igakun@発行人)
2024-06-13 21:43:49
ゆうさん、コメントありがとうございます。
ここ数年このブログの更新をさぼり、今に至っています。
正直言って最近はオネゲルのこと、忘れていました。今回のコメントをいただいて久々に聞き返して爽やかな気分に浸りました。
「高校生だった50年前から」というお話に僕とあなたは同じ年代だと感じました。そんな方と少しでもお話しできてうれしいです。
「主席」の件、ご指摘いただくまで全く気付いていませんでした。お恥ずかしいミスです。

いい音楽を聴いてお元気にお過ごしください。
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