自分にしては大変珍しいチョイスだと思っているが、そのインパクトの強さ、独特な世界、選曲の妙、そしてこのおどろおどろしい情念の世界にノックアウトされたので紹介することにした。
この記事の題名を見て、いきなり「えっ?!」と思われた方も多かったと思う。
僕が歌謡曲を、それも演歌の歌手を取り上げるなんてきっと最初にして最後のことかもしれないから・・・。
森進一「LOVE MUSIC」
1. I LOVE YOU (尾崎 豊)
2. 桜坂 (福山雅治)
3. 雪の華 (中島美嘉)
4. 愛のままで… (秋元順子)
5. 愛人 (テレサ・テン)
6. 天城越え (石川さゆり)
7. 蕾 (コブクロ)
8. 涙そうそう (BEGIN/夏川りみ)
9. 瞳をとじて (平井 堅)
10. 吾亦紅 (すぎもとまさと)
このアルバムとの出会いは偶然だった。仕事中に聞いていた音楽番組で僕の大好きな「雪の華」(参考までにココを)が紹介されたからだ。
「雪の華」は「雪の華」でもオリジナルではなく森進一バージョンだという。
そしてその音楽がすぐに流れ出した。
短いイントロが終わるとすぐ僕は信じられないくらいのショックを受け、そして面食らった。
何なのこれ?
オリジナルの持つあのはかなく切なく初々しい情感に対して・・・やさしく降りしきる雪の華とは全く違うおどろおどろしい情念うずまく森進一の世界・・・うまく表現できないが降り積もった雪の上を歩くカップルにゾンビが這いずって追いかけて来るような、そんなちょっと不気味な世界が目に浮かんできたのだった。
大きな違和感の中にも森進一という類まれな歌手の底力というか圧倒的な存在感を感じずにはいられず、それ以来、これは全く別の歌、と自分に言い聞かせて聴くようになった。
本物の歌手に必要な資質の一つに「誰にも似ていない圧倒的な存在感」があると思う。口先だけで歌う今の若い歌手などお笑い草だとばかりに自分の世界を持ち続けているベテランの間口の広さにも驚かされるが、このアルバムで随所に聴けるオリジナル歌手を超えるような楽曲に対する情念の表現力には圧倒的に称賛されていい。
さすがと思わせるテイクの一つに#6の「天城越え」がある。
この曲は日本の歌謡曲の中でも最高位にランクされる濃く深い情念の世界が描かれている。この果てしない絶望的な歌詞を石川さゆり以来の独自の表現で歌ってみせた。
♪「誰かに盗られるくらいなら あなたを殺していいですか」♪
やはり同じ演歌の世界を担う歌手だけのことはある。オリジナルの逃げ場のないような表現に比べ森の表現はやや広いノリシロを残している。ギリギリの切羽詰まった息苦しさが多少和らいでいる。
これは大発見だ。
歌謡曲の世界での「天城越え」を情念の深さという点では頂点に君臨する楽曲だと思っている僕にとっては、ある意味「救い」を見ることができた。
もう一つ、僕にとってはこれも大きな発見だったが、#9「瞳をとじて」。
はっきり言ってこの曲は森進一のために存在しているとさえ思えた。作者(=歌い手)には失礼だが、なんというハマりかた!
オリジナルのパワフルな歌唱力に依存したベタな表現方法よりも、腹の底から歌い上げる森の歌唱はこの曲の価値を数倍は高めていると思える。
♪「瞳をとじて 君を描くよ・・・」♪ この歌い方には惚れた。懐が深いし、うわべだけの表現を意識的に避けたシンプルさも心地よい。
この曲は今後は「森進一の歌」として後世に残したい、と思うくらいだ。
森進一は日本の歌謡界のモンスターである。
彼の楽曲には色々な変遷があった。何をトチ狂っている!と思える曲も確かにあった。例えば「紐育(ニューヨーク)物語」など、薄っぺらな時代の要請に軽々しく迎合した作品の時代など、僕はこの人は壊れてしまった、と思ったくらいだった。
この人の原点は例えると「貧困の中の愛情」であったり「囲炉裏端で話す心の裏側の話」だったりする。
いずれも日本の原風景がさせる心の叫びである。けっして歌い上げるような朗々さではない。
クラシックで言うところのアリアではないのだ。不器用で暗い表情の中に強い信念を感じさせるような立ち位置で歌うことを必然的に要求されている歌手なのだ。
アルバム中に選曲ミスと思われる曲もあったが、それは聴く人の好みも相当反映されるだろうからあえて指摘はしない。
しかしこのアルバム・・・聴く人によってはその存在感さえ疑問視する人も出てこよう。
それは理解できる。
しかしこれだけ他人の楽曲を自分の元にぐっと引きよせて、ある部分ではオリジナルでも表現しきれなかった数々をあぶり出した森の楽曲に対する洞察力に感動すべきである。
上に具体例を出したように、曲によっては完全にオリジナルの上をゆく歌唱力・表現力を発揮しているケースもある。
この人はやはり本物の歌手である・・・当たり前のようだがつくづくそう思った。
この記事の題名を見て、いきなり「えっ?!」と思われた方も多かったと思う。
僕が歌謡曲を、それも演歌の歌手を取り上げるなんてきっと最初にして最後のことかもしれないから・・・。
森進一「LOVE MUSIC」
1. I LOVE YOU (尾崎 豊)
2. 桜坂 (福山雅治)
3. 雪の華 (中島美嘉)
4. 愛のままで… (秋元順子)
5. 愛人 (テレサ・テン)
6. 天城越え (石川さゆり)
7. 蕾 (コブクロ)
8. 涙そうそう (BEGIN/夏川りみ)
9. 瞳をとじて (平井 堅)
10. 吾亦紅 (すぎもとまさと)
このアルバムとの出会いは偶然だった。仕事中に聞いていた音楽番組で僕の大好きな「雪の華」(参考までにココを)が紹介されたからだ。
「雪の華」は「雪の華」でもオリジナルではなく森進一バージョンだという。
そしてその音楽がすぐに流れ出した。
短いイントロが終わるとすぐ僕は信じられないくらいのショックを受け、そして面食らった。
何なのこれ?
オリジナルの持つあのはかなく切なく初々しい情感に対して・・・やさしく降りしきる雪の華とは全く違うおどろおどろしい情念うずまく森進一の世界・・・うまく表現できないが降り積もった雪の上を歩くカップルにゾンビが這いずって追いかけて来るような、そんなちょっと不気味な世界が目に浮かんできたのだった。
大きな違和感の中にも森進一という類まれな歌手の底力というか圧倒的な存在感を感じずにはいられず、それ以来、これは全く別の歌、と自分に言い聞かせて聴くようになった。
本物の歌手に必要な資質の一つに「誰にも似ていない圧倒的な存在感」があると思う。口先だけで歌う今の若い歌手などお笑い草だとばかりに自分の世界を持ち続けているベテランの間口の広さにも驚かされるが、このアルバムで随所に聴けるオリジナル歌手を超えるような楽曲に対する情念の表現力には圧倒的に称賛されていい。
さすがと思わせるテイクの一つに#6の「天城越え」がある。
この曲は日本の歌謡曲の中でも最高位にランクされる濃く深い情念の世界が描かれている。この果てしない絶望的な歌詞を石川さゆり以来の独自の表現で歌ってみせた。
♪「誰かに盗られるくらいなら あなたを殺していいですか」♪
やはり同じ演歌の世界を担う歌手だけのことはある。オリジナルの逃げ場のないような表現に比べ森の表現はやや広いノリシロを残している。ギリギリの切羽詰まった息苦しさが多少和らいでいる。
これは大発見だ。
歌謡曲の世界での「天城越え」を情念の深さという点では頂点に君臨する楽曲だと思っている僕にとっては、ある意味「救い」を見ることができた。
もう一つ、僕にとってはこれも大きな発見だったが、#9「瞳をとじて」。
はっきり言ってこの曲は森進一のために存在しているとさえ思えた。作者(=歌い手)には失礼だが、なんというハマりかた!
オリジナルのパワフルな歌唱力に依存したベタな表現方法よりも、腹の底から歌い上げる森の歌唱はこの曲の価値を数倍は高めていると思える。
♪「瞳をとじて 君を描くよ・・・」♪ この歌い方には惚れた。懐が深いし、うわべだけの表現を意識的に避けたシンプルさも心地よい。
この曲は今後は「森進一の歌」として後世に残したい、と思うくらいだ。
森進一は日本の歌謡界のモンスターである。
彼の楽曲には色々な変遷があった。何をトチ狂っている!と思える曲も確かにあった。例えば「紐育(ニューヨーク)物語」など、薄っぺらな時代の要請に軽々しく迎合した作品の時代など、僕はこの人は壊れてしまった、と思ったくらいだった。
この人の原点は例えると「貧困の中の愛情」であったり「囲炉裏端で話す心の裏側の話」だったりする。
いずれも日本の原風景がさせる心の叫びである。けっして歌い上げるような朗々さではない。
クラシックで言うところのアリアではないのだ。不器用で暗い表情の中に強い信念を感じさせるような立ち位置で歌うことを必然的に要求されている歌手なのだ。
アルバム中に選曲ミスと思われる曲もあったが、それは聴く人の好みも相当反映されるだろうからあえて指摘はしない。
しかしこのアルバム・・・聴く人によってはその存在感さえ疑問視する人も出てこよう。
それは理解できる。
しかしこれだけ他人の楽曲を自分の元にぐっと引きよせて、ある部分ではオリジナルでも表現しきれなかった数々をあぶり出した森の楽曲に対する洞察力に感動すべきである。
上に具体例を出したように、曲によっては完全にオリジナルの上をゆく歌唱力・表現力を発揮しているケースもある。
この人はやはり本物の歌手である・・・当たり前のようだがつくづくそう思った。
へえぇ~森進一がねぇ!というか,森進一「も」かぁ!
と言っても悪い意味じゃなく,このところの往年の大(?)歌手のカヴァーアルバム,リリースは歓迎したいね。
「この歌手がこの歌を歌ったらどういう風になるんだろう!?」の期待感というか楽しみが先ず来るね。
布施明なんかは何となく想像ついたけど,坂本冬美は意外だったなぁ。
最近は往年の(一線を終わっている)歌手が最近のPOPSを歌うアルバムが多いけど,
一青窈なんかは昭和の歌謡曲を歌ってて,これはこれで興味深いやね。
徳永ナンタラのシリーズ化されたカヴァーシリーズは好きになれないけどね。
しかし,このアルバム,いい曲ばっかやね!
カヴァーの場合、オリジナル以上のインパクト(良くも悪くも)がなきゃダメだよね。
「コピー」じゃ意味が無い。
私も森さんの『瞳をとじて』には感動しました。
傑作のカバーアルバムでしたね。
うれしいコメント、ありがとうございました。
一つのジャンルにこだわらず、良いもの(曲)は良い、というスタンスで音楽を楽しんでいきたいと思っています。
吉祥寺さんのページへも訪問させてもらいましたが、やはりかなりの”通”のご様子なので勉強になりましたし楽しめました。
そういう方と意見が同じだったことをうれしく思います。ありがとうございます。
この森さんのカバーアルバム「Love music」の
アルバム、私も買い、保存しています。
確か「ゆらぎ」を出した後ですよね。
09年のTBS「うたばん」に初出演した時に
アルバムの紹介をしていましたね。
森さんのハスキーボイスと切ないLoveバラードは
何を歌っても正に、「森 進一の世界」になりますね。
また、第2弾にも期待したいですね。
冒頭の「うたばん」で森さんが自分を真似た口調で
挨拶されてたのが印象的でしたが。
はじめまして!
ご訪問、ありがとうございました。
この記事はもう3年ほど前になりますが、当時このアルバムを聴いていて「森進一、恐るべし」と思ったものです。
近年ではTVの音楽(歌謡)番組も少なくなって、このジャンルのプロ歌手はどうやって活動をしているのだろうと心配していますが、考えすぎなのでしょうか?
時代はどう変化していくのでしょうか。
日本の歌謡曲を遠くからですが見つめていきたいです。
りんごちゃんさんもお元気で音楽を楽しんでください。
ありがとうございました。
録音が良いのは聞いていた通りですが、伴奏がシンプルな分森進一の声がそこに存在していて、倍音を多く含んだたっぷりの音圧が歪まずにスピーカーから出てきます。もっともっと良いステレオシステムで聴きたくなりました。
以前、松山千春が芸能界で一番声量があるのが森進一だと言っていてそれ以来とても気になる歌手の一人です。
1曲目の I LOVE YOU から打ちのめされてしまいました。ファルセットなのか地声なのかわかりませんが、あの声が歌詞を心の中に直接運んできます。
I LOVE YOUはいろいろな歌手がカバーしていますが、私的には本人(尾崎)以外はダメでした、有名な玉置浩二の歌も違和感ありました。
管理人さんがコメントされていた曲は当然素晴らしいですが、森進一リスペクトの私には全て聞き入ってしまいました。
叶うならマイクを通さない生歌を聴いてみたいと思いました。ガサガサの掠れ声だけれど圧倒的な音圧で優しく歌うのを想像してゾクゾクっとなりました。
コメントありがとうございました。
使用中のPC入れ替えで、お返事が遅れました。
ごめんなさい。
この記事を書いてからもう8年が経ってしまいました。当時は一生懸命にブログの更新をしていましたが、最近はずっとご無沙汰でした。
それでもこのようなコメントを頂いてうれしく思いました。このアルバムを最近聴いていなかったので、この機会にまた聴いていました。
いいものはいいですね!
最近の歌謡曲のアルバムで感動したのはあまりないので寂しく思っています。
ありがとうございます。