バンマスの独り言 (igakun-bass)

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「N響アワー」終了に思う

2012年03月26日 | 音楽:クラシック系
昨日(2012.3.25)NHKのクラシック番組「N響アワー」の放送が最終回を迎えた。

1980年4月放送開始から32年間、欠かさずとは言えないもののかなりの高頻度で視聴してきた僕にとってこの放送終了は<寂しい>というより<怒りに満ち溢れている>と表現していいほど激怒し、NHKに対し落胆していると言ってもいいくらいショックなのだ。

N響は間違いなく日本を代表するオーケストラである。最近のメンバーはエリートかもしれないが小粒な印象があるのに対し、このN響アワーが始まった頃のメンバーは最強で超個性的なプレーヤーで、それをドライブしていた指揮者も、いささかドイツ音楽寄りの布陣であるがすさまじい個性と巨匠ぶりで僕なんか(クラシック好きの若者として)ひたすら驚き感動し、伝統音楽の凄みをこの番組を通して感じてきたものだった。

指揮者でいえば、この楽団に最も貢献したサバリッシュをはじめとして、シュタイン、ライトナー、スウィトナー、マタチッチ、ブロムシュテットなどの名演が今でも忘れられない。
楽員でいえば、フルートの小出信也、オーボエの小島葉子、クラリネットの浜中浩一、ホルンの千葉馨、トランペットの北村源三、等々の当時の日本を代表する名プレーヤーがひしめきあって素晴らしい演奏を聞かせてくれたものだった。

このN響はたしか56歳くらいが定年なので、最近では若手の優秀なプレーヤーが目立つようになった。
反面、円熟したプレーヤーの演奏を楽しむことが出来なくなったのも確かで、だんだん没個性の響きになっていることを危惧しているのだ・・・

・・・なんてことを僕に言わせるバックボーンはまさにこのNHKの番組「N響アワー」があったからこそだ。長い間この番組を見てきたが、けっしてファミリー層や子供に優しい番組ではなかったけれど、クラシック音楽のすごさを教えてくれる唯一と言っていい貴重な番組だったのだ。

それをほとんど突然にやめるとNHKは言う。去年は「芸術劇場」という貴重な芸術番組を終わらせてファンを落胆させたばかりだったのに。

昔、クラシック番組といえば民放の「題名のない音楽会」と「オーケストラがやってきた」と「N響アワー」があって、それぞれに工夫した内容でクラシック音楽ファンを確実に増やしてきた。

「題名の・・・」は司会で企画もしていた作曲家:黛敏郎が死去し、その格調の高さや音楽知識の豊富さ、面白さが急速にしぼみ、現在の司会者:佐渡裕(指揮者)に至ってはその自己満足的な手法でつまらない見る価値も無い番組に落ちぶれ、ユニークな視点で音楽を楽しませた「オーケストラが・・・」は山本直純の死去でとうの昔に消えてしまっていて、唯一「N響アワー」だけが多彩な司会者をどんどん迎えて充実した内容を誇っていたのだ。

NHKには良質な紀行番組、自然番組、報道・ドキュメンタリー番組などがたくさんあるが、今回の「N響アワー」の終了をもって、その<良心>の一角が消えてなくなった。
こういう類の番組は民放では出来ない。CMもなく、長いクラシック音楽を流せるのは公共放送だけの力だった。

さらに正直言って最近のNHKはどこかおかしい。
変に大衆迎合した軽めな番組が増え、バラエティのセンスは最低なのにもかかわらずその数は増える傾向にあるようだ。

クラシック音楽を愛する人が全視聴者のどのくらいをしめているのかわからないが、こういう番組を無くしてしまうセンスそれこそ問題だし、今のNHK内にはそういった暴挙をいとも簡単に行なう人間がいるということが悲しい。

おかしいぞ、NHK!


夕べと先週の日曜日に放送された「最終回スペシャル(2週連続)」を見て、改めてこの番組の偉大さを思い知った。
紹介されたマタチッチの「ブルックナー8番」、シュタインの「ニュルンベルグ・・・」、スヴェトラーノフの「チャイコフスキー5番」・・・久しぶりに見て涙がどっと出た。

最近の世の中、全てが<軽チャー>化していてどうも腰が据わらない軽薄なものがもてはやされている。重心が定まらず、いつもふらふらして無関心・無責任な気分が支配している。
その一環として「N響アワー」が終わったと考えるのもこじつけではあるまい。

全部が軽い。政治も経済も文化も。
このままじゃぜったいに成長のない暗い国に成り下がる。

一つの長寿番組が終った今、すこし大げさかもしれないがこの国の行く先がチラっと見えたような気がして僕は日曜の夜、不機嫌になった。




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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
N響アワーがなくなって1年 (seiyou)
2013-06-15 00:35:09
N響アワーが無くなって1年。後続番組のラララクラシックが好評のようでしたが、最近は放送時間が30分になりました。出演者のキャラクターは好印象を受けましたが、中途半端な時間で中途半端なクラシックの紹介に終わっていて、何かつまらない思いです。
NHKには目覚めて欲しいですね。
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寂しいです (バンマス@発行人)
2013-06-16 08:47:47
>seiyou さま

コメント、ありがとうございます。

後続の「ららら・・・」の内容変更はどういう理由があったのでしょうか。
もう少し存在感のある番組にしないと、さらに視聴者が離れる結果になり、それはつまりこの手の番組がなくなっていくことを想像させるのです。

seiyouさんもN響アワーがお好きでしたか?
あまり硬派な番組は一般にはダメなんでしょうが、もう少しの<充実>がほしいですよね。

頂いたコメントに100%同意です。ありがとうございました。
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