バンマスの独り言 (igakun-bass)

趣味と実践の音楽以外に日々感じる喜びや怒り、感動を記録するためのブログです。コメント大歓迎です!

梅雨時のブラームス:江東フィルハーモニー

2012年07月01日 | 音楽:クラシック系
市民オーケストラのコンサート観賞記録もこれで5本目になる。

今日は江東フィルハーモニー管弦楽団の第14回定期コンサートに伺った。
そして今回はバンドのドラマー氏がつき合ってくれて、どんよりと湿気の多い日曜の午後をクラシック音楽で癒すこととなった。

今回のメイン・プログラムはブラームス。
オープニングはウエーバーの歌劇「オベロン」序曲で中プロはチャイコフスキーのヴァイオリン・コンチェルト。

ブラームスは第2番。第1番の重厚さ、第3番のいぶし銀のような響きと構築性、第4番の人生の秋を思わせる懐古趣味の抒情性・・・の中にあってこの2番はブラームスの「田園交響曲」だ。
ブラームス特有の渋さがあまりなく、まさしく田園の中で深呼吸するような柔らかさが特徴で、優美な旋律が惜しげも無く多彩に流れる、心がホッとする穏やかな音楽だ。
ブラームスの4つの交響曲では夏場に一番ふさわしいのがこの2番だと思っている。

今日は電車の中で久しぶりにこの曲のスコアを読んだ。この曲のスコアを買ったのはこの曲に出会った年で表紙の裏に購入した年月日が書かれてあった。昭和46年。こんな昔にこの曲と向き合っていたのか、と思うと驚くし幾分早熟だったなと顔を赤らめる。

江東フィルのオープニングは相当な緊張を感じ取れた。全ての楽器の表情が硬い。金管やホルンなど音が震えているのがわかる。
本日の観客の入りはほとんど満員御礼状態だったから、ステージから見る風景もそりゃ、緊張を倍増させるものだったのだろう。このオベロンは終始硬い表情で演奏され、あまり楽しめるものではなかった。

中プロのチャイコフスキー。ソロ・バイオリニストのぎこちない演奏とザラっとした音色にがっかりした。
ピッチも甘めで、時々音が濁る。伴奏のオーケストラはいい仕事をしたと思ったが、独奏者と伴奏者がおもったより「協奏」していなくて疲れた。

さてメインのブラームスになって編成をさらに増やしたオーケストラは見違えるようにパワフルになり音色も艶やかになっていったのには驚かされた。
おそらくメインプロだけに練習量もしっかりととったのだろう。弦の艶もふくよかで、アンサンブルもよい。
この曲は「ブラームスの田園」だけにホルンが活躍する。
ただしこのホルンという楽器がオケのアキレス腱となることも事実なんだ。あらゆる楽器の中で最も難しいと言われるホルン。音がひっくり返りやすく、しっかりと正しい音をスパっと出すのは難しいのだ。
プロのオケでも時々音がひっくり返ったり、かすれたり、音程が狂ったりと、アクシデントの多くの原因を作る楽器でもあり、市民オケのレベルではある程度のミスは当然のごとく許される範囲ではある。

しかし作曲家はこのホルンを重宝に使う。なにしろ木管楽器と金管楽器の橋渡しをする重要なパートであるためけっこういいメロディーを吹かせたり、バックグラウンド(背景)を塗り固める重要な役割もさせられる楽器なので苦労も多く、繰り返すが、思いっきり演奏が難しい。

この楽器がミスると聞いている者は腰砕けを起こすくらいがっかりする。

前に書いたサントリーホールでのグリーン交響楽団も今日の江東フィルも、最も弱いパートがホルンだ。
聴いていて痛々しいくらい音の裏返りに恐怖感を持っているのがわかる。だから積極的な音が出ない。
もっと朗々と吹いてほしかった。自信をもってしっかりと吹けばきっと音もよくなるはず。

江東フィルのホルンさんの一層の努力鍛錬を期待したい。

さて演奏や音色の方は後になるにつれて良くなっていった。笑い話のようだがアンコール・ピースでこの楽団の良さが一番出ていた。弦は力みが無く音色も艶が出て楽しげに良く響いた。弱いと思っていた低弦もズーンと来るような響きがやっと聞こえた。ラッパ隊も明るくパワフル。
これは精神的なものからきていると思われる。

僕らのバンドでもそうだが、ステージも終わりに近づくにつれて緊張感がほぐれ、本来の楽しさを味わえるようになる頃が出来も最高になるものだ。
アンコールでいい演奏ができたのもこの精神的な側面のせいだ。

江東フィルを聞くのは今日で4回目になったがこの楽団は確実に進歩している。まずアンサンブルに余裕が出て、きわどい場面でも広い「のりしろ」を持つようになったせいで、なんとか目立たなく修正ができている。厳密に言えば怪しいのだけれど、取り繕いが上手くなった。
木管群は時に不協和音を出すが、一人ひとりの技術は高い。今日の指揮者(常任指揮者)はクラリネットの出だそうで、そんなことも影響してか、クラリネット・パートは優秀。音が一人大きいといったアンバランスさは残るが音は良い。

ブラームスの2番はこの楽団にとても似合っている。難しい部分になってもじつによく練習した事を感じる。全体的に音の重心がやや軽めなオケなので曲想に意外と合っているのだ。
この曲の第3楽章は昔からそのチャーミングさがお気に入りなのだが、冒頭のオーボエがちっともチャーミングでなく重かったのがとても残念だった。コンセルバトワール式のオーボエではなくジャーマン式のウインナ・オーボエの音色が適切なだけに、もう少し軽く吹く努力をしてほしかった。

一つのオケを見続ける(聴き続ける)のは楽しい。オケも演奏者もみんな生き物だから、毎回微妙に変化が見られ、それがいい方向へと向かっていく時を目撃した時はラッキーだし幸せでうれしくなる。

今後もこのオケの発展を注意深く見ていくだろう。
プロにはない進歩の楽しみが十分に残されているからだ。ホームグラウンドの「ティアラこうとう」大ホールも雰囲気が良くて好きなホールだし主催事務局の心配りもうれしい。

最後にいっしょに穏やかな時間を過ごしてくれたバンドのドラマー氏に感謝しておきたい。
音楽の合間や待ち時間にこの歳だからこそ話せることも語り合えた。
日曜日の憂鬱な午後がなにやらどこかへ吹っ飛んでいったような別れ際だった。ありがとう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。