バンマスの独り言 (igakun-bass)

趣味と実践の音楽以外に日々感じる喜びや怒り、感動を記録するためのブログです。コメント大歓迎です!

練習の翌朝

2007年09月24日 | 音楽:クラシック系
ライブが近づいている。
練習は気持ちにかなりの余裕を持ちながら淡々と進められている。
けっして簡単な曲を用意しているわけではない。

彼岸を境にして涼風が吹き始めたせいだろうか?
気持ちが意外とゆったりし始めた。 だからスタジオに入っての練習も技術と言うより例の<ステージの魔物>との戦いの準備をしたほうがいいという様相になってきた。

もう何十年もハードロックをやっているんだ。
その余裕で自分達が楽しむ術を知っている。プロじゃないんだから・・・あくまで趣味なんだから・・・自分達が満足できればそれで十分なんだ。

それでも歳のせいか・・・もう34年もロックをやっていると・・・4時間くらいの練習時間でも腕や肩や指先(多分喉も)が疲れてくる。僕なんか時々左の指がつったりする。

22時にスタジオから解放されると、とたんに家に帰るのがおっくうになってしまう。
でも次の日のためにはさっさと帰らなければならない。
夜の電車は若い連中が意外と多い。それぞれおしゃべりや携帯に夢中だ。

おじさん(僕)は、といえば、いま爆音の世界から抜け出てきたとは周囲の人たちに全く思われないような風体で(楽器は持ち帰らないので)腕を組み目を閉じてシートに深く座っている。途中、大きな駅でかなりの人の入れ替えがある。電車内の僕は席を立たない数少ない乗客だ。

音楽のせいで耳は一時的に難聴になっている。駅や車内のアナウンスがおぼろげだ。
それでつかの間の睡魔に襲われる。
そういえば最近、練習後の飲み会に参加していない。翌日のスケジュールがタイトだったり、練習終了後に体力が残っていないことが多いからだ。

電車内での睡魔はアルコールのせいではないのだ。
疲れてはいるが、それよりなにより、電車内の雰囲気とは隔絶した中でまどろみたいのだ。
僕が公共交通機関を利用するのが嫌いなのは、雑踏の中に必ずいるバカな連中と同じ空気を吸いたくないからだ。
バカとはもちろん常識知らずや身勝手な人間を指す。

最近は年配者にもそういう傾向の者が現れはじめた。高齢化社会のサインでもあるのだろう。

練習後の帰り道はとてもイヤだ。
疲れているからなおさらなのかもしれないが、夜の混雑した電車ほど心が萎えるものはちょっとない。

最近の練習の開始時間はちょうど僕の家では夕食時間である。だから練習日は夕食を定時に食べられない。
帰宅する頃は腹ペコ状態である。 最寄り駅につくと数々の飲食店がまだ営業中で、つい食事をしたい衝動にかられる。しかし時刻をみるとすでに日にちが変わる間際である。
このタイミングで胃に食べ物を入れていいことがあるわけがない。

だからツバを飲み込みガマンをして、暗い夜道を歩いて帰る。

シャワーを浴びてからPCを開き、日記を書きながら音楽を聴く。

こんな時にお勧めなのは管弦楽(オーケストラ)や高音楽器(バイオリンやフルート)の音楽ではけっしてない。
ゆったりと流れるチェロの独奏曲とか、華麗な響きの無いピアノの小品集などがいい。

(チェロならバッハの無伴奏がいい。ピアノはベトベンやショパンなどは避ける)


僕が<ピアノ曲の宝石>と絶賛し、妻も疲れたときによく聴いているピアノ曲を紹介しよう。

北欧ノルウェーの作曲家:エドヴァルド・グリーグ の「叙情小曲集」である。



グリーグは「ペールギュント」や「ピアノ協奏曲」などの名作があるが、なんといっても北欧の香りが清らかで、その音の色彩は水彩画を思わせる淡く控えめなものである。
これがなんとも疲れた心身に気持ちがいい。

そんな彼が青年期から生涯の最後期までずっと書き続けてきたこの作品集は全10集、66曲からなる。一気に書かれず、生涯にわたって書かれた音楽(ライフワークという)は彼の人となりや音楽的変遷をよく伝えている。

「叙情小曲集」は独創的な調性感や和声をもっており、その印象派的な作風はフランスのドビュッシーに後年、引き継がれていく。
曲は1~2分の小曲がほとんどで、長くても4分くらいで終わる。

宝石箱を開けて中の小さな一つ一つの輝きを見るようなそんな風情の曲ばかりである。

なんとも優しく穏やかで淡白な味わい。メロディーも名旋律家グリーグの名をほしいままにした美しいものばかりである。

僕はこの曲をあえて、ロシア(ソ連)の豪腕ピアニスト:エミール・ギレリスの演奏で聴いている。
スタインウエイのあのピアノ弦を切らさんばかりの強靭なパワーで弾きまくるこのピアニストはチャイコフスキーのピアノ協奏曲で鋼鉄のようなパワフル(ヘビーメタル)な演奏を聴かせロック命だった当時高校生の僕を完全にノックアウトさせたのだった。
そんな彼がやさしくピアノに向き合って演奏したこのグリーグだからこその味わいが僕にはたまらない。

ギレリスはすでに(85年)に亡くなっているので録音が新しいとはいえないが、恐ろしく味わいのある音楽と演奏で、僕はこれ以上のアルバムは無いと思って大事にしている一品である。

エミール・ギレリス(P) グリーグ:叙情小曲集 (1974年録音)

このアルバムを探すのは苦労かもしれないし、ジャケ写真が変更になっている場合もあるが、叙情小曲集は絶対にギレリスに限る。(上のジャケが発売当初のもの:ポリドール)


おりしも今年はグリーグ没後100年にあたる。

ロックファンもポピュラーファンもこの曲集は持っていて損はない。
ぜひこの音楽で心に栄養を!


(トップの写真は信州・白樺湖畔に咲く早咲きのコスモスです)




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6 コメント

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お疲れ! (再びリーマン)
2007-09-24 13:47:27
練習が終わって電車の中,そして地元でツバを飲み込むまで・・・・,
よ~く解るよ!お疲れ!
確かに毎日の通勤での行き帰りと練習日の電車での行き帰りでは,行きと帰りの気持ちの差が違うよねぇ!?
心地良い疲れではあるけど,だからなお電車内のエチケットを無視した輩が気になる!

グリーグの叙情小曲集かぁ・・・・!
昨日は久々にシャンソン聞いてまどろみの中へ・・・でした。
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Unknown (223)
2007-09-24 20:48:01
きょうは文体が芥川龍之介っぽいですね!

4時間の練習とはすごいですね。
我々は先日、久しぶりに3時間入りましたが、かなり疲れました。
集中力の限界は2時間のようです。
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ほんと (igakun@発行人)
2007-09-25 11:04:51
>フタリー さま

お互いライブ前は全く違うジャンルを聴いているよなぁ、不思議と。

公共の場所でのエチケットの問題は書けば書くほど腹が立つことが多いし、悲しいな。

みんな<遠慮>というものを忘れているんだよ。

シャンソンでまどろんでるなんて、なかなかおしゃれだぜ!

(なお、「フタリー」は223氏の命名によるものです)
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まずは (igakun@発行人)
2007-09-25 11:18:28
>223 さま

するどい所を突いてきた223くんに驚かされました。

実を言うと今、<文体>に悩んでいるのです。
最近の数回の記事の文体が「ある。である。」になったのを見落とさなかったのですね?

以前の柔らかい感じの「です。ます。」より断定調の今の方が自然体の僕により近いのですが、顔も知らず会ったこともない多くの訪問者様にはどちらがいいのか、最近ちょっと考え込んでしまったのですよ。
(今、平均アクセスが700人ほどあるんです)

芥川調とはいかにも褒め過ぎ?ですが、このパターンが実は書いていて一番楽です。
もう少し試行錯誤していきたいので、元編集長、指南願います!

練習時間のことですが、同じように緊張感をもってやれるのは2時間程度だろうと思ってます。
しかしセットリストを通すとあっという間に4時間くらいになってしまうのも事実です。

だから疲れます。

もう歳ですよね~。
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ドライブ (boogiehat)
2007-09-25 18:18:00
文体が「ある。である。」・・
オレもそうかも。

練習の後は機材を積んで家まで30分のドライブ。
窓を全開にして夜風にあたっていると、自由を感じます。
オイラにとって至福の時ですね。

それにしても700アクセスはすごい!!

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文体 (igakun@発行人)
2007-09-25 20:42:40
>boogiehat さま

文体のことだけど、僕はHatブログの「ひとり言」のような文体に惹かれています。読んでいて気持ちがいい。まぁ、あえて言うなら男性読者向きかな。

僕のは話題に花とかあるでしょう? 正直言って女性の訪問者さんも意識しているのです。
だから文体については本当はどういうのがいいのか、最近ナーバスになってます。

アクセスは最近とみに上昇しています。でもコメントを入れてくれないROM(リード・オンリー・メンバー)さんが多くてちょっと不気味です。

練習後の開放感については全く同感です。
Hatくんが練習で疲れていても幸せなのは帰りが車だからってこともあるかも? 車はプライベートな空間だから、公共交通機関に乗る時のようなストレスがないんでしょう。

バンドの方、がんばってください!
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