どうでもいいこと

M野の日々と52文字以上

今野保著「アラシ」を読んだよ

2016-10-07 01:26:51 | 日記

 

今日は泳ぎにゆく。蓬莱島には亀がいた。

台風は通過し、特に被害はなかったようだが、今日の天気は少し不安定だった。

 

 

中公文庫から出ていた、今野保氏の著作、「秘境釣行記」「羆吠ゆる山」「アラシ」と三部作を読み終えた。ダントツで面白いのは「秘境釣行記」だ。山で暮らすことの描写がきめ細かく、その釣りの仕方も凄まじく、アイヌ人との関わり合いなんかも当時の関係を書いて面白い。特に当時の彼らが当たり前だと思っていることが、淡々と記載されているのがこの本の最大の魅力だ。

担当が釣りをしているので貸して見たら、結構気に入ったようだ。嬉しいことにアイヌ人がやたら丁寧な日本語を話すのに違和感があったようだ。写真出版とはいえそういった言語感覚は大切だ。「沖縄人とアイヌ人には同和教育が徹底されて、きちんとした日本語以外を話してはいけないように仕向けられたからだ」といったら、少し納得しかねないようだった。まあ仕方がない。「沖縄人はまだ人口が多かったからなんとかなったが、各島嶼間での言語さは薄まった。アイヌ語はさらに人口差が大きかったことと経済格差の問題があって、アイヌ語でも地方言語はほとんど失われたと言われている。」

そう、当時も今も和人を相手にして標準語しか話せないのがアイヌ人だ。まだ記述された日本語の古語に近い沖縄の言葉は方言と考えられたが、単語が違いすぎるアイヌ語はそうとは思われなかった。文法同じなのにね。

 

 

「羆吠ゆる山」はエピソードが釣行記と重なる部分が大きく、少し面白くない。これは多分釣りと違って羆は本当に怖かったからだ。少しワクワク感がない。少年が猟銃を持って遊ぶところは面白いのだが、釣行記で書いたエピソードが大きく書かれた感じが否めない。ただ、アイヌの話が2話収められていて、アイヌの当時の生き方が多少知れる。

「アラシ」は今野保氏と関わった犬の話だ。当然猟犬だったりするが、彼が関わった犬21匹の中でも特に印象の強い犬ばかりだからとも言えるが、すごい犬しかいない。羆と戦う犬ばかりだからだと思う。特に表題のアラシは、大雪の中たまたま蹴っ飛ばしてしまったのが子犬だったという、よく分からないエピソードで始まるが、山犬の子だったようだ。彼が飼った犬ではないがアイヌ人の女性が飼っていたタキは、川から流木に乗ってドンブラコときた犬だった。これも当然山犬。

当時の北海道では、エゾオオカミは全滅させられたはずだったのだが、時代が時代で犬を放し飼いにする習慣があって、山犬が多かった。その中でエゾオオカミとの混血もあったのかもしれない。山犬はオオカミのようだったと書いている。現在の北海道犬がエゾオオカミの血を引いているのではないのかと言われる所以だ。

山犬の子なので、放し飼いにしているうちに山犬の群れに兄弟がいたりして、家から離れがちになるのだが、家のものに何かがあると突然駆けつけてくる。そして猛然と戦って、少し甘えて山犬に戻ってゆく。

「タキ」の項は、山犬化したはずのタキが、主人の仇討ちをするという、まあとんでもない話だ。

 

 

どうも当時の北海道で、土佐犬とか秋田犬を飼う人がおおかったようだ。「ノンコ」は秋田犬と土佐犬の合いの子で、ものすごくデカかったらしい。多分共にマスチフの血が入っているのでそちらが大きく出たのだと思う。

そのノンコを列車に乗せるために檻を用意したのだが、鉄道員が怖がってしまうという描写がある。つまり街にいる人はそういった犬は必要がないし、見栄で飼っていたとしても扱いきれない、そういった描写があった上で、これが出てくる。

当時の北海道の山と街の落差がものすごく大きかったのだ。

ただノンコは幸せな方だ。当時は列車に犬は乗せられなかったらしい。なので貨物に檻を用意して運べたのが、今野保氏の最初の犬のクロは、離別を予感して絶食して死んでしまった。アラシは山犬化していたので群れとの狭間で葛藤していたように感じるが、それでも別れを予感して群れとともに現れる。

自然と犬と人が交差するこの「アラシ」はよくある話の集大成かもしれない。だが昔にはあった伝説のような話がこうも生々しく出てくると、犬の能力をそぎ落として特化するのが現在の調教であって、それすらもしないペットというのは、自然という項目がないからああなるのだろう。

岩泉で、勝手に鹿を捕まえてくる犬がいた。当然放し飼いなのだが、犬というのはそういった能力を持っている。まあ北海道犬だったけどね。チワワにネズミとりは期待できない。

「アラシ」はいい本だ。廃番だけど。

 

 

犬好きにはたまらん本だと思う。ただ犬にも人にも欠けているのは、自然だと思う。そして犬には自然ほど好奇心を抱かせるものはない。そこを削った人工的社会の中では、犬を飼う人も不幸なのかもしれない。

まあその前に、シェパードまで戦うのだから、犬とは本来そういったものだとまざまざと見せられた。

なお水泳の方だけど、体がちぐはくだったけど、タイムはよかったよ。なぜちぐはぐだったかというのが問題なんだけどね。


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