ヒデ系の瞳

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波紋 独著名作家のイスラエル批判

2012-04-30 | 歴史史観
言わねばならない

 小説「ブリキの太鼓」で知られるノーベル文学賞作家、ギュンター・グラス氏のイスラエル批判が同国内外で波紋を広げています。
 「言わねばならないこと」と題されたグラス氏の詩は、4日に南ドイツ新聞などに掲載されたもの。
 詩では、「なぜ私は今、言うのか?核保有国であるイスラエルがそうでなくてももろい世界平和を危険に陥れているからだ」とイスラエルによるイラン攻撃が現実的になっていると告発。イスラエルへの批判がドイツではタブーとされ、長い間、沈黙してきたが、「明日では遅すぎる」と詩を書いた動機を説明しています。また、ドイツのイスラエルへの潜水艦引渡しも、「間違った罪の償い方だ」と批判しました。

事実上タブー
 第2次世界大戦でのナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)以来、イスラエル批判は同国の事実上のタブーとなってきました。イスラエルと外交関係を結んでからは、ドイツの外交目標の一つは「イスラエルの生存権の擁護」。メルケル首相が2008年にイスラエルを訪問したときにも、「ドイツはイスラエルの安全に責任を持つ義務がある」と表明しました。こうした政治文化のなかでの、ドイツの誇る人気作家の【爆弾発言】だけに賛否両論が噴出しました。
 イスラエルのネタニヤフ首相は「イスラエルとイランを比較するとは恥ずべきだ」とし、グラス氏を「好ましからざる人物」として8日に渡航禁止の対象に指定。ユダヤ人団体も「反ユダヤ主義」と猛反発しています。
 グラス氏はこれに対し、「イスラエル一般とせず、現在のイスラエル政府が危険だとすべきだった」とする一方、「渡航禁止措置は、旧東ドイツのやり方を思い起こさせる」と再批判しています。
 メルケル首相与党のキリスト教民主同盟(CDU)の幹部のポレンツ下院外交委員会委員長はイスラエルの存在を脅かしているのがイランで、「因果関係が逆である」として、ドイツ・イスラエル間の外交関係悪化への懸念を表明しました。
 グラス氏が選挙ごとに支持を表明してきた社会民主党(SPD)では、ナーレス書記長が詩について、「不適切な表現だ」としながらも、イスラエルの措置について「ドイツの政治的文化を象徴するグラス氏を『好ましからざる人物』とするのも間違い」と批判しました。
 一方で、左翼党議員からは「グラス氏は政治上のタブーに触れる勇気を示した」と評価の意見が出ています。
 ドイツ政府報道官は「芸術の表現の自由がある」としながら、「個々の芸術作品に意見を述べない政府の自由もある」と、評価を避けました。
 
過半数が支持
 国民の受け取り方も様々ですが、ドイツの海外向け公共放送ドイチェウェレによると、世論調査では28%が「議論あるところだ」と中立なのに対し、「反ユダヤ主義だ」などと同氏を批判する意見は16%にとどまり、56%と過半数の人がグラス氏の意見が正しいと支持しています。(片岡正明)
(赤旗日刊紙2012・4・19)

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