TATSURO SHIBUYA + ARCHITECTURE LANDSCAPE DESIGN STUDIO

アーキテクチュアは建築、ランドスケープは景観。風景を生かす建築環境デザインに取組んでいます。

シャルロット・ペリアンが見出した日本のマテリアル(材料・技術)

2011-12-01 11:59:57 | サステナブル建築
シャルロット・ペリアンは日本の民藝と出会い、日本の材料や技術といったマテリアル(素材)を見出した者の一人だと私は思う。
その回顧展が神奈川県立近代美術館で開催されている。
共にコルビュジェの弟子でペリアンとも長年親交があった坂倉準三が設計した美術館でペリアン展を見ることができるとは、なんて贅沢なことだろう。

ペリアンが日本に招聘され、現在のグッドデザイン賞の原点ともいわれている「選択 伝統 創造」という展覧会を高島屋で開催したのが1941年。
1941年と言えば、安藤忠雄さん、伊東豊雄さん、長谷川逸子さん、早川邦彦さん、仙田満さんなどなど、野武士世代と呼ばれる多くのスター建築家が生まれた年でもある。

この、「選択 伝統 創造」展の内容を今回の「シャルロット・ペリアンと日本」展で垣間見ることができる。
展覧会HP:http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2011/perriand/index.html

展覧会で印象に残ったものの一つに「木製折りたたみ寝台(寝椅子)」がある。
これは、山形県新庄市にかつてあった農林省積雪地方農村経済調査所(雪害調査所)で作られたものとされるが、おそらく、地域の農民が編んだ藁のクッションをそのまま用いたものだと思う。この姿かたちがなんとも素朴でいい。


ペリアンは農閑期や不作の際の新たな産業振興策のために東北を訪れたとされているが、その際に出会った、藁を編んだ蓑や竹といった自然の素材が醸し出す美しさに興味を惹かれたようだ。
雪の里情報館(旧雪害調査所)のHPにはそのあたりのことが詳しく掲載されている。「雪調とシャルロット・ペリアン
たとえば、有名な「シェーズ・ロング(LC-4)」の竹バージョンもデザインしており、これは最近復刻されて販売もされている。

※写真はCassina ixc.より。

雪害調査所の建築は弘前出身の今和次郎が設計しており、雪下ろしの要らない屋根勾配や積雪時の採光、降雪を考慮した出入口など実験的な設計を試みていることも興味深い。


あまり知られていないことですが、この「木製折りたたみ寝台」のオリジナルが山形県立博物館蔵なのです!!
子どもの頃、毎月のように私は山形博物館を訪れていました。
そこで実際に目にしていたものがペリアンの「木製折りたたみ寝台」のオリジナルデザインだったのです!
なんという偶然。まさに縁があったとしか言いようがありません。
建築に関わっている者のひとりとしてこんなに嬉しいことはありませんでした。

地域のマテリアル(素材)を活かすデザインやディテールといった側面からもペリアンを見直すことのできる素晴らしい展覧会でした。
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