TATSURO SHIBUYA + ARCHITECTURE LANDSCAPE DESIGN STUDIO

アーキテクチュアは建築、ランドスケープは景観。風景を生かす建築環境デザインに取組んでいます。

建築のシズル感/実寸で考えること

2010-10-27 23:04:34 | サステナブル建築
シズル感」とは、焼肉なんかで肉が焼ける時の「ジュー、ジュー」っていう擬音語の「sizzle」に由来することば。

もともとは、広告業界などで、ビールがおいしく見えるように水滴をつけたりするなど、映像表現において、「臨場感」や「鮮度」を誇張してわかりやすく伝えるための用語。
転じて、五感に訴えるような要素や、魅力的にみえるような要素など広義に使われています。

建築業界では、「素材感」とか「リアル」といったニュアンスに近いような気がします。
また、別の言葉でいうなら、実寸(一分の一)のことだと僕は思います。
実寸とは、実物と同じ縮尺でリアルに素材に触れて確かめることが出来る。
つまり、五感で感じ取れるウソのない寸法ということ。

設計図書の多くは、紙の大きさに合わせて住宅なら1/50や1/100、詳細図でも1/5や1/10といった縮尺で描かれますが、実寸を縮小することとは、細かい部分は省いて抽象化することになります。
もちろん、設計段階ですべて実寸大で描くことは理論上はできても、実際には現場での施工精度も伴うことなので、あえて「描かない」こともあります。

建築を作ることとは、そういうことも考慮して、最終的に「現場」が重要になると僕は考えています。なので、僕は、現場では、できるだけ実寸で考えることにしています。

例えば、壁紙や外壁の素材・色を決める際に、小さな端切れを見せられても、一般の人には到底わかりにくいと思います。
カーテンの色をお店でサンプル帳から選んで、実際につけてみたら、まったく印象が違うというのは、よくある話。

しかし、実寸だと模型や図面ではわからなかった空間の密度や光の具合といった五感を刺激する体験ができるので、ウソがつけない。
つまり、「良いところも悪いところも加味して、いかに良いところを伸ばして、悪いところをカバーするか。」といった「ポジティブな」思考をすることができるのです。

このほかにも、実物大のモックアップを作ることは、職人さんと設計者とのとてもよいコミュニケーション手段にもなります。
これまでの経験上、「いいものをつくろう」という志の高い現場では、モックアップを作ることで、より洗練されたディテールが生まれたり、コスト面でもVEが可能になったりすることが多いです。
僕はこうした「建築のシズル感」が大好きです。
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