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ジャーナリスト。1961年生まれ。大手新聞社で警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人事件や海外テロ、コンピュータ犯罪などを取材する。その後、1999年10月、アスキーに移籍。月刊アスキー編集部などを経て2003年2月に退社。現在フリージャーナリストとして、週刊誌や月刊誌などで活動中。
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 10月初旬、「録画ネット」事件の判決があった。

 録画ネットというのは海外に住む日本人向けのテレビサービスだ。エフエービジョンという社員3人の小さなベンチャー企業が提供している。申し込んだ人は、同社からテレビパソコンを購入し、松戸市にある同社の施設にパソコンを置かせてもらう。このパソコンはNHKや民放の地上波を受信し、ハードディスクに蓄積できる。加入者はインターネット経由で、番組データを海外から観られるようになっている。

 これまでも同種のサービスはあった。だがテレビ局の番組を勝手に蓄積し、ユーザーに再送信していたことは著作権法違反(公衆送信権侵害)に触れるため、テレビ局側の警告でほとんどがサービスを停止している。中には警察に摘発されたケースもある。

 だが録画ネットの場合は、電波を受信するパソコンはあくまで加入者の所有で、録画の主体は加入者であるという仕組みを取っていたことから、法律違反にはならないのではないかと考えられていた。少なくとも、サービスを提供したエフエービジョンの側はそう考えていたし、顧問弁護士もその論理で大丈夫だろうと判断していた。

 ところがNHKと民放キー局5社は7月に、録画ネットに対してサービス停止の仮処分を求める申し立てを行った。「録画の主体が加入者だというエフエービジョンの主張は詭弁で、主体はあくまで同社ではないか」という論理である。そして判決が10月に出て、テレビ局側の全面勝訴となった。録画ネットは現在、サービスを停止している。

 判決の是非はともかくとして、なぜテレビ局は録画ネットに対してこれほどまでに強硬な対応に出たのだろう。録画ネット側は社員わずか3人の超零細企業、加入者だって250人しかいなかった。かたやNHKと民放キー局5局は、日本のメディアの中核に位置する巨大な権力である。象の群れが襲いかかって、蟻を踏みつぶしたようなものではないか。

 その疑問をNHK関係者にぶつけてみたところ、こんな答が返ってきた。

 「オリンピックの放映権がからんでいるからですね。録画ネットは小さい存在かもしれないけれど、堤防の土手に空いた小さな水漏れ穴になるかもしれない。つまり放置しておくと、たいへんな事態を招きかねないと判断されたからです」

 オリンピックの放映権というのは、巨額のマネーが動く世界である。たとえばアテネ五輪で日本のテレビ局は、1650億円ものカネを国際オリンピック委員会(IOC)に払ったとされている。東京五輪の時はわずか3000万円程度だったというから、40年間で5000倍にまで高騰したことになる。たいへんなインフレだ。

 この放映権はその国の中にだけ通用する権利で、国境を越えて映像を流したりすると、IOCからペナルティを課される可能性がある。それをテレビ局側は恐れている。しかし――仮にそうだとしても、なぜわざわざ小規模なベンチャーを叩き潰す必要があるのだろう? そう聞くと、先のNHK関係者はこう言った。

 「もちろん録画ネットが放映権破りの脅威になるとは考えてません。でも録画ネットのようなビジネスがなし崩し的に普及して、海外に日本の電波を流すことが事実上認められるようになってしまったら、もっと巨大な企業が参入してくるかもしれませんよね。それを恐れてるんです」

 そして彼は、大手IT企業の名前をいくつか挙げた。「前回のシドニー五輪の放映権が未払いだったフィリピンでは、危うくアテネの放映ができなくなりそうだったんです。たとえばこうした五輪が放映されないような国に日本の電波を送り込んで、日本の大手IT企業が大々的に『われわれのサービスを使えば、オリンピックを観られます!』とキャンペーンを打ったら、どうなると思います?」

 確かに、そうなれば五輪放映権の枠組みは根底から崩壊してしまうかもしれない。そうなれば最悪、IOCは日本のテレビ局から放映権を奪ってしまうかもしれない。でも別の可能性としては、インターネット時代に応じた新たな枠組みが生まれてくるきっかけになるかもしれないのだ。さんざん言い古された言葉だが、インターネットは国境の壁を簡単に越えてしまう。五輪放映権だって、例外ではないはずだ。
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