再度暇ネタ…というか、自転車旅の合間の汽車旅です。
中国の列車環境の悪名は高いですが、まさに異文化です。
文章長いですが楽しめそうな方はどうぞ。
(※携帯電話から閲覧されている方へ)
文章の構造…改行位置を変えてみました。これまでと今回、どちらが読みやすいかコメントくださると助かります。自分で携帯の画面にどう表示されているか確認できないので、よろしくお願いします。
8月9日。7556次、普客(各駅停車)カシュガル行きは10時45分、ほぼ定刻どおりにウルムチ駅を出発した。
硬座と呼ばれる座席は日本で言う普通車(グリーン車は軟座)。一昔前の鈍行に多かったボックス席に近い固さと広さのイスが、2階建の車両にぎっしり並ぶ。下車駅のコルラまではちょうど600km。これは東京・大阪間を超える距離。じっくり14時間をかけて走る。
○写真撮影は原則禁止(現地人は撮ってる)なので少ないです。悪しからず…
自分にあてがわれた6人がけボックス席は、ウイグル人の家族で埋まった。皆カシュガルまで行くと言う。日本の汽車旅ではありえない、30時間を超える長旅だ。硬座の乗客は9割方ウイグル人だった。カシュガルまでは、飛行機、バスや急行列車もある。それぞれ、半日以上早いのだがそれなりに高くつく。この普客の硬座の値段は、現在存在するあらゆるの移動手段の中で最も安いのだ。
(ちなみにコルラまで59元=約800円)
動き出した車内は早速騒々しい。案内放送はなぜか音楽(しかも歌謡曲)付き。そして喧嘩。漢族の女性車掌とウイグル人が激しく言い合っている。荷物の置き場でもめてるみたいだ。他の乗客は涼しい顔で昼飯の準備を始める。みんなインスタント麺を持ち込んでいる。車内販売もカップ麺ばかり。私は買っておいたパンをかじる。
2時間半ほど経過した。最初はみんなお行儀よく座っていたのだが、だんだんダラダラモードになってくる。乗客は他人の座席に向かって足を投げ出したり、無意味に車内を徘徊したり。子供も落ち着かない。トルファンに着くと列車は早くも40分以上遅れている。コルラは遠い。カシュガルには一体いつ着くんだろう。
○中国では鉄道のことを「火車(ホーチャ)」といいます。
さて、途中駅のトルファン~コルラ間は、南疆線(南疆鉄道とも。トルファン~カシュガル)の中で最も早く開通した区間。その模様はNHKの「シルクロード」でもわざわざ一回分の時間を割いて紹介された。当時の終着駅コルラは今も中国の一大石油供給地。故にこの鉄道は政府の悲願でもあった。
そして何より特筆すべきは沿線風景の美しさ。万年雪をいただいた天山を貫くこの区間は、緑の草原に覆われた大地を、遊牧民と羊に囲まれながら行く。最高地点は標高3000m以上。ループ線やS字線を駆使してじわじわ登る。スイスの登山鉄道に全く引けを取らないスケールだ。
しかし開通から40年を経た今、中国の鉄道敷設技術は格段に進歩し、この区間は新たに新幹線を通せる新線に置き換えられようとしている。しかも、そのルートは今の線路よりはるか東の岩山を貫き、長い沙漠区間に出るのである。自転車で走っているとき、単調な風景のなか延々続く路盤を見ながら、南疆線に乗るなら今のうちか、と心に決めた。
かくして、中々治らない風邪の治療を口実に、南疆線に乗る小旅行に出かけたのだった。
出発から4時間が経過。列車はトルファン盆地の砂漠の中を進む。
前の席でおじさんがアカペラで熱唱している。本気だ。すばらしい声量。どこかさみしげなメロディに切なくなるが、はた迷惑と紙一重。
一緒の席にいた男の子は疲れたみたいで、椅子の下の床に布を敷いて寝てしまった。
漢族の人は相変わらず食い物の破片やゴミを床に投げ捨てる。
隣のおばあさんは、いきなり座席に突っ伏してアッラーに祈り始めた。
トランプに興じる者あれば、英語の勉強に精を出す学生もいる。
そしてどこからともなく「食え!」と瓜が回ってくる。
車内放送は最初はしっかりしてたけど、気付いたらグダグダになっていた。
音楽かけるのはいいが、CDの音はとびまくり。騒音にしかなってない。
たまに車掌が掃除に来る。その度にどっかで誰かと言い合いだ。
この路線に「世界の車窓から」の優雅なテーマ音楽は似合わない。
(つづく)
にほんブログ村
中国の列車環境の悪名は高いですが、まさに異文化です。
文章長いですが楽しめそうな方はどうぞ。
(※携帯電話から閲覧されている方へ)
文章の構造…改行位置を変えてみました。これまでと今回、どちらが読みやすいかコメントくださると助かります。自分で携帯の画面にどう表示されているか確認できないので、よろしくお願いします。
8月9日。7556次、普客(各駅停車)カシュガル行きは10時45分、ほぼ定刻どおりにウルムチ駅を出発した。
硬座と呼ばれる座席は日本で言う普通車(グリーン車は軟座)。一昔前の鈍行に多かったボックス席に近い固さと広さのイスが、2階建の車両にぎっしり並ぶ。下車駅のコルラまではちょうど600km。これは東京・大阪間を超える距離。じっくり14時間をかけて走る。
○写真撮影は原則禁止(現地人は撮ってる)なので少ないです。悪しからず…
自分にあてがわれた6人がけボックス席は、ウイグル人の家族で埋まった。皆カシュガルまで行くと言う。日本の汽車旅ではありえない、30時間を超える長旅だ。硬座の乗客は9割方ウイグル人だった。カシュガルまでは、飛行機、バスや急行列車もある。それぞれ、半日以上早いのだがそれなりに高くつく。この普客の硬座の値段は、現在存在するあらゆるの移動手段の中で最も安いのだ。
(ちなみにコルラまで59元=約800円)
動き出した車内は早速騒々しい。案内放送はなぜか音楽(しかも歌謡曲)付き。そして喧嘩。漢族の女性車掌とウイグル人が激しく言い合っている。荷物の置き場でもめてるみたいだ。他の乗客は涼しい顔で昼飯の準備を始める。みんなインスタント麺を持ち込んでいる。車内販売もカップ麺ばかり。私は買っておいたパンをかじる。
2時間半ほど経過した。最初はみんなお行儀よく座っていたのだが、だんだんダラダラモードになってくる。乗客は他人の座席に向かって足を投げ出したり、無意味に車内を徘徊したり。子供も落ち着かない。トルファンに着くと列車は早くも40分以上遅れている。コルラは遠い。カシュガルには一体いつ着くんだろう。
○中国では鉄道のことを「火車(ホーチャ)」といいます。
さて、途中駅のトルファン~コルラ間は、南疆線(南疆鉄道とも。トルファン~カシュガル)の中で最も早く開通した区間。その模様はNHKの「シルクロード」でもわざわざ一回分の時間を割いて紹介された。当時の終着駅コルラは今も中国の一大石油供給地。故にこの鉄道は政府の悲願でもあった。
そして何より特筆すべきは沿線風景の美しさ。万年雪をいただいた天山を貫くこの区間は、緑の草原に覆われた大地を、遊牧民と羊に囲まれながら行く。最高地点は標高3000m以上。ループ線やS字線を駆使してじわじわ登る。スイスの登山鉄道に全く引けを取らないスケールだ。
しかし開通から40年を経た今、中国の鉄道敷設技術は格段に進歩し、この区間は新たに新幹線を通せる新線に置き換えられようとしている。しかも、そのルートは今の線路よりはるか東の岩山を貫き、長い沙漠区間に出るのである。自転車で走っているとき、単調な風景のなか延々続く路盤を見ながら、南疆線に乗るなら今のうちか、と心に決めた。
かくして、中々治らない風邪の治療を口実に、南疆線に乗る小旅行に出かけたのだった。
出発から4時間が経過。列車はトルファン盆地の砂漠の中を進む。
前の席でおじさんがアカペラで熱唱している。本気だ。すばらしい声量。どこかさみしげなメロディに切なくなるが、はた迷惑と紙一重。
一緒の席にいた男の子は疲れたみたいで、椅子の下の床に布を敷いて寝てしまった。
漢族の人は相変わらず食い物の破片やゴミを床に投げ捨てる。
隣のおばあさんは、いきなり座席に突っ伏してアッラーに祈り始めた。
トランプに興じる者あれば、英語の勉強に精を出す学生もいる。
そしてどこからともなく「食え!」と瓜が回ってくる。
車内放送は最初はしっかりしてたけど、気付いたらグダグダになっていた。
音楽かけるのはいいが、CDの音はとびまくり。騒音にしかなってない。
たまに車掌が掃除に来る。その度にどっかで誰かと言い合いだ。
この路線に「世界の車窓から」の優雅なテーマ音楽は似合わない。
(つづく)
にほんブログ村