ユーラシアの風~2010年・自転車による単独ユーラシア大陸横断記

2010年・自転車による単独ユーラシア大陸横断記

ゲリラ暴風

2010年08月01日 | 中国(3)西寧→烏市
トルファンから西へ50km。
谷底に風力発電のプロペラが林立している。
ここは地元で「風庫」と呼ばれる強風地帯。


夕方風庫に差し掛かかると、北西からの強い横風が吹き荒れている。
これはやや向かい風。まだまだ頑張れば進めんでもない程度だった。
しかし、日が傾くにしたがって、そして谷底に近づくにつれ、
風は激しさを増してきた。
一時間で5kmも進めない。というか、もう歩いて押すことも、立つことすらできない
レベルにまでなってきた。

午後9時を回り、間もなく日没。
この時点で、路肩にうずくまり全く身動きが取れない状態に陥っていた。
次の集落までまだ30km以上。宿を諦め、姿勢を低くして何とか自転車を引きずり
橋の下で風が変わるのを待つことにした。

暗くなっても全く風は収まらない。
この風も、日中焼かれた砂漠の上を渡ってくるので熱風そのもの。
当たってるだけで体力を消耗する。
自転車の陰に隠れて時が過ぎるのをひたすら待った。


翌朝。風はむしろ強くなる一方。
どうにか進むか、戻るか。考えに考えあぐねてとりあえず道路に戻ろうとした。
朝の気温の低い(といっても30℃はある)、そして交通量の少ないうちに動きたい。

しかし、台風のような凶暴な風は、経験したことのないレベルに達していた。
進めない。歩けない。立てない。
呆然としていると、突風でメガネが飛ばされた。
道路わきの砂利の中で吹っ飛んだメガネを探しながら、
心の中で何かが折れた音がした。


爆風に背中を押され、何度も横倒しになりながらトルファンを目指した。
昨日半日以上かけてきた道を、わずか2時間で戻ってきてしまった。
その足で、バスターミナルへ向かった。
ユーラシア大陸横断・自転車一筆書きの夢が潰えた瞬間だった。





○トルファン交河古城。
 地中に掘り進めてできた2000年前の街。
 壁や通路が残り、当時の面影をとどめる。


○火焔山
 西遊記に出てくる「火焔山」のモデルとなった地。
 孫悟空は燃え盛る炎の山々を芭蕉扇で扇いで鎮めた。
 ここトルファン盆地は「火州」と呼ばれ、連日最高気温は45℃近い。
 海から4000kmも離れているのに、標高は最も低いところで海面下154m。
 中国で最も暑いと称される地域だ。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
戻ったのは正解だと思います (umibuta)
2010-08-01 08:21:27
おつかれさま。
高温の爆風って、全身でドライヤーに当たり続けるような感じだね。
水が尽きた時点で干物人間決定でしょう。

無事に進めてますか?
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日記読んでます。 (天津のIです。)
2010-08-01 16:23:48
加藤さん、大変な所に差し掛かって大変ですね。妻とこの日記を読ませて頂いています。この先のキルギスは最近は暴動のニュースありませんが、やはりよく情勢を確かめて行かれたほうがよいと思います。

先ほど外務省の海外安全情報を見た所では、キルギスは暴動で渡航延期勧告、カザフスタンも邦人が強盗に遭う事件が頻発して十分に注意となっています。

ではお体を大切に気をつけて旅を続けてください。

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無理せず。。 (谷です! (^^v )
2010-08-03 21:28:14
無理せず まずは ゴール優先で!

たまのバスも これまた一系で。。(^^v

これは 君に。。

http://www.youtube.com/watch?v=6Hi8ECF0IW0

これは 君の無事を待つ彼女に。。

http://www.youtube.com/watch?v=QYSKADc2-Y4&feature=related


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Unknown (hiro)
2010-08-07 00:13:57
umibutaさん>
まいど。気持ちはやられましたが無事です。
心が上向いてきたら今度は寒さで風邪を引きました。新疆にはなかなか適応できない。

Iさん>
おかげさまで愉快じゃないときもたまにありますが、おおむね元気に進んでいます。
キルギスは東部ナルン県から入るルートを検討しています。暴動の背景を考慮しても、このルートは比較的安全だろうと判断しています。

谷さん>
あぁ…残念。YouTubeは中国では見れないのです。。。キルギスに入ったらチェックさせてもらいます!
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