罰ゲーム

正月 一日遅れで、弟T君が帰省。

朝、妻が作った雑煮を出す。とても 美味しかったので 父母の家迄、

運ぶ事となった・・・

私：「T君（弟）母さんの所に行くやろ？ついでに、雑煮を持って行ってくれ」

弟：「う～ん（少し間が空き）どうやって？」と即答しない。

私：「後ろに乗せられんか？」

弟：「・・・・いいよ」

私：「いや やっぱ 俺が一緒に行こう 乗せてってくれ」

後ろのハッチバックを空けようとしたら（あれっ？車が違う・・・）

私：「な、何だ 新車かよ！そりゃ拙いな」

弟：「いや すぐ、近くやけん何とかなるやろ・・・」

 

仕方ないなァ～コボシちゃいかんので

 

雑煮が入った片手鍋をラケットにピンポン玉を乗っけて 障害物競走をするような

ポーズで そのまま 助手席に乗り込んだのであった。

 

弟：「兄ちゃん このシートいいやろう？一脚 何十万するんだぜ・・・えっ？

   知らんとね？」と言われりゃ 余計シートを汚す事ァ 出来ない。

鍋を持つ手に余計に力が篭る。

ウィーン！ 頭が前後に揺さぶられるような 感覚！ギヤチェンジの度に

体に圧力が掛かるのだ！少し凸凹した道では 上下に揺れてしまう。

私：「うわわわわっ！こりゃ 何だっ！こりゃレーシングカーじゃねえかっ！？」

サスペンションがガチガチでサファリラリーを走っているようだ。

弟が買った車はプレミヤ物でスポーツタイプの限定車らしいのだ・・・

また、この事情を知らぬ妻は 良かれと思い 鍋にギリギリ一杯に汁を張っている。

私：「うぁっ熱ちちちちっ おい！ストップ ストップ！」

手に熱い汁がかかり ドリフの、いかりや長介みたいに、行動を制止する私・・・

 

私：「こっ これじゃあ ギアチェンジの度に 零れてしまう シートが汚れたら

   最悪だ ユックリ行こう。これじゃあ まるで罰ゲームだっ！」と

   そろ～り、ノロノロ運転をしていると 後ろから

煽り運転を噛ます ならず者が出現！「ちっ！早よう イケッ！」と弟もスピードを

落とすが 後ろにピッタリとくっついて離れない。ハザードランプを焚いてもダメだ

激怒した私は

私：「T君！止めてくれ 煽り運転がいかに社会悪かって事を、後ろの馬鹿者に説いて

   やらんといかん！」

弟：「馬鹿は相手にせんよ 正月やからね。」と諭される。

私：「ダメじゃ・・・助手席を開けてくれ 本懐を遂げさせてくれっ

   どうせ 若い奴だろう？教育的指導ばすっけん！」

弟は諦め 車を降り 助手席側に回り ホテルのベルボーイが如く 私に一礼して

弟「どうぞ！」とドアを開き、手を後ろ方向に振った・・・

 

怒りの形相で 信長の舞の如く 扇子代わりに 手鍋を水平に持ち 

すり足で ツツツツとナラズモノの後続車に近づいた！

すると 物凄い勢いでバックし 踵を返して逃げていった！

私：「良かった！深追いは、無用ぞ！俺の手鍋を持つ姿で 瞬時に我等兄弟の親孝行に

   対する行動を察してくれたのかのう！賢い奴じゃ・・・」

弟：「そりゃそうだろう 鍋持ったオッサンがスゲー形相で向ってきたら

   危ない奴と思って 逃げてはいくわな・・・」

ゴチャゴチャした 細い道・・・今は孝行息子二人を残して 冷たい日差しだが

キラキラ輝き、静かな風が吹いていた