よしーの世界

好きな神社仏閣巡り、音楽、本、アートイベント情報を中心にアップします。

蓮如   笠原一男

2019-12-15 15:59:57 | 
日本人にとっての仏教とは葬式仏教だろう。無宗教と言われながら葬式の時だけは仏教形式が

多く身近な人の死に際しては普段の生活では体験しない儀式をえて、別れを惜しみ、日常生活

に戻る。たまさかには墓参りや仏壇に手を合わせることで供養とする。その時だけの仏教体験

が相当数の日本人の仏教感だと思う。


しかし日本人と仏教の関係は歴史的にも古く最澄と空海の登場以前から天皇家との結びつきも

深い。統治するためには宗教は不可欠で宗教家も権力との結びつきで勢力を拡大している。そ

れが鎌倉時代の法然や親鸞の出現で一般庶民の中の仏教として広がっていく傾向にあったのは

非常に面白い現象でそれだけ民衆の力が大きくなってきた結果だろう。


蓮如の登場する前、本願寺は「参詣の人ひとりも無く、さびさびとしていた」と言われていた

という。親鸞没後数々の分派に分かれ、本家たる本願寺が寂れていたものを蓮如が一人で盛り

返した。蓮如の思想が親鸞の元々の教えに帰っていくことだった。宗教に接する時には根本に

帰る必要が常にある。解釈が拡大していき本来のものではなくなっていることが多々あるから

だ。極限の貧困を味わい仏教の根本に触れた蓮如を知っておくべきだと思う。


蓮如    笠原一男     講談社学術文庫
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上級国民/下級国民   橘玲

2019-12-15 08:21:09 | 
タイトルからして衝撃的だが、中身はもっと驚くべきもので国民が薄々は感じていたものが改め

てデータを示されながら見事に解説が施されている。人口動態の図表も今までに何度も見てきた

ものが1970年から2040年迄掲載されているが著者の説明で大きく頷くことになる。突出

する第一次ベビーブーム世代が日本の政策に大きく影響を与え、その世代の反発を招く事態を避

けた政府の無策によって、今の日本の停滞がある。見て見ぬふりをしてきた自民党には大きな責

任があることは免れない事実だ。


そして世界的な分断は人種等の差別ではなく、テクノロジーが人間の適応力をすでに超えており

多数の落ちこぼれを生み、中流を下流に押しやったということに愕然とする。私が世界を意識し

だした少年時代は1970年代で日本はまだ発展途上の夢も希望もある時代だった。父母とも一

生懸命働いて5人もの子供たちを育て上げたが、その努力が今の世代では賃金に反映されないこ

とになっている。今は成果主義や能力主義に適応している人物だけが、多大な報酬を得る知識階

級になり、その他大勢の人々を凌駕する。世代によってはすでにある程度の蓄えで逃げ切ること

が可能だが、若い世代では相当厳しい現実が待っている。


本を読むことは知ることだ。何も知らずに、何も考えずに生きていけば当然壁にぶち当たる。悩

みもする。問題は悩みの中身に気が付かない自分で、それを知るすべを持たない自分だ。みんな

が同じように持ち、同じように活用するツール(例えばスマホ)では、簡単な単純な事柄しか提

供されないのだ。誰があの小さい画面で何百ページもの論説を読むだろう。殆どが誰もがすでに

認知している事柄の追認でしかない。本を読めば読むほど自分の知識のなさに驚くことになる。

この本で痛感させられた。


上級国民/下級国民     橘玲      小学館新書
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