「お帰りなさいっ。」

「山」「旅」「食」を中心に綴りたいと思います。
ただいまって遊びにきて頂ければ嬉しいです。

水の森から、風の高原へ。

2011年08月09日 | ヤマアルキ

お帰りなさい。


松本の友だちから「お祭りに来ない?」と誘われました。
お祭りは土曜日だったので、一日早く松本入りして少し歩くことにしました。

行き先は「焼山沢」

美ヶ原に登るルートのひとつですが、以前から気になっていました。

松本市街から上田方面に国道254号線、県道62号線を経て登山口まで車で1時間ほどです。

登山口手前の「武石観光センター」を左手に見ながら約1kmで登山口の大きな標識が見えてきます。

登山口には車2台が停められるスペースがあります。
登山口の手前にも路肩に停められるスペースがあり、そこも一杯ならば武石観光センターの駐車場に停められます。

メジャーなコースではないので、たぶん登山口に停められると思いますが、朝は私たちだけだったのが、下山時にはもう1台停まっていました。

さて、登山口で朝食を済ませてスタートしたのが7時過ぎ。

最初の1kmは広い道、丸太橋を渡ると山道に入ります。

このルートは、ほとんど沢沿いを歩くので、真夏とは思えない涼しさです。

登山道の脇は北八ヶ岳を思わせる苔の世界。

沢の瀬音、瑞々しい苔、木々の間を吹き抜ける風、

ここ、好き!

歩き始めて、すぐにそう思いました。

相方も気に入ったようで、いつもよりペースもゆったりです。

 

唯一、誤算だったのは、いまの私の体調ではちょっとハラハラする(相方がですけど…)箇所が幾つかあったこと。

切れ落ちた草付きの崖、滑りやすい丸太、崩落地、沢の渡渉…。

でも、気を付けて歩けば問題無しです!


歩き始めて1時間少し、「トガの親木」の案内標識があります。

コースを一旦外れて約3分。

沢を渡った先に、周囲を苔や木々に囲まれて、樹齢約400年の堂々たる巨木が見えてきます。

静かな森のなかにそびえ立つ姿は荘厳ささえ感じます。

このコース全体に、とても静かで穏やかな空気が流れていますが、トガの親木のある場所はさらに別世界。

相方も私も何も話さず、ただそこに座りこんでいました。

トガの木が創りだす優しい空間にただ身を委ねていました。

サワサワっという風の音で我に返ったときには30分近くの時間が流れていました。

「時が止まる」という感覚を久しぶりに味わいました。

 


コースに戻り、少し歩くと、今度は「焼山の滝」の案内標識。

ちょうどコースの中間点付近です。

またまたコースを外れて、焼山の滝へ。

わぁ…。


左手が荒々しく流れ落ちる「雄滝」、
右手に見えるのが幾すじもの細い流れが落ちる「雌滝」です。

 

水が流れ落ちる音、白煙のような飛沫、滝を彩る緑、

またまた時の流れから隔離されてしまう二人…。

 

 


ようやく、コースに戻ると、ここから少し道は険しくなります。

崩落地を過ぎると、こんどは「ヒカリゴケ」の案内標識。

恐るべし、焼山沢!

なかなか先に進めません…。

この後もコメツガやシラビソの道、苔むした川石や倒木に心を奪われ、なかなか足が前に進みません。

 

ようやく牧場ゲートに着いたのは、コースタイムを1時間も超過した11時過ぎ(コースタイムは約3時間)。

 

鹿止めならぬ牛止めの柵を越えると、視界全体に青い空と緑の草原が突然広がります。


しっとりした静かな森と、開放感あふれる明るい高原のギャップに、その場に一瞬立ち尽くしてしまいました。


突然開けた視界にとまどいながら、美しの塔をぼーっと眺めていると、背後から熱い視線と激しい息づかいが…。

 

んぎゃっ!

 

 

じっと私を見つめる牛さんたち。

ごめん、ごめん。びっくりしたよね。

 

焼山沢ルートから美ヶ原に上がると、牛の放牧されているエリアに出ます。

遊歩道への連絡柵までは放牧エリアを歩くことになるので、牛を驚かさないように気をつけましょう。

あっ、牛さんの落し物にも…。

 

あいにく雲の多い天気で周りの山は見えませんでしたけど、高原に吹き渡る風は爽やかでした。

何より、この開放感はたまりません。

 

塩くれ場の近くのベンチで牛さんたちに見守られながら、お昼ごはん。

牛にもいろんな性格の子がいるんですね。

のんびりと草を食む子、

他の子にちょっかいばかり出す子、

この子はちょっと怖そう。

 


予報は下り坂で、沢筋のコースなので雨が降り出さないうちにと、牛さんに挨拶してから、早めに下り始めました。


でも下りも時間泥棒のコースにしてやられ、コースタイム2時間15分のところを約3時間かかって登山口に着きました。

歩いてる時間とぼーっと止まってる時間があまり変わらなかったかも…。

 

  

  


 

私、このコース好きです。

また、あそこに戻りたいな、もう、そう思っています。

皆さんの候補リストの端っこにでも加えてもらえたら嬉しいな、

心から、そう思える場所でした。