HIROZOU

おっさんの夜明け

神戸物語

2021-09-24 18:14:18 | メモリー

僕の知る神戸は夜の神戸だけで昼間の神戸はあまり知らない

正確に言うと夜の神戸港

高校を出て大阪で暮らした2年間のほとんどの帰省はカーフェリーを使った

地元の港と神戸を結ぶ航路だから自宅から歩いて10分足らずで船に乗る事が出来る

船が神戸に向かうのが夕方の5時

折り返し神戸から地元の港に向かうのが夜の11時

だいたい片道5時間半

小さな港町を出た船は港の入り口に浮かぶ葛島と言う無人島を時計回りに回り神戸に向かう

一度、漁に出る親父の船とすれ違った事もあった

その頃の四国の出身者は皆どこかで船に乗らないと都会に出られない

我が町の港は天然の良港で江戸の頃より上方に船が出ていた

だから関西で暮らした母も兄も姉も乗る船こそ違ってもこの港から都会に出た

船の行先は大阪の天保山だったり南港だったり

僕が都会に出た頃、船の行き先は神戸のフェリーターミナルだった

船が神戸港に近付くと漆黒の海の向こうに小さな灯りが見えて来る

その灯りがだんだんと視野に広がった行き

やがて王女様の宝石箱をぶちまいたかのような夜景が広がる

パイレーツオブカリビアンに出て来る海賊の残した金銀財宝の山

そんな宝物の光が六甲の山の上まで連なって伸びて行く

その一つ一つの灯りの下にいろんな人の人生があるんだなと思った

不夜城の門番に合図をするかのように船の汽笛がボーボーと鳴る

ゆっくりと船が港に横付けされると乗船客が夢から覚まされたように

夜景の余韻に浸る事無く現実のツライ世界に戻される

せっせと身支度をすると、とっとと家路を急ぐ

神戸に夜11時着なので電車を使う人はうかうかすると終電に乗り遅れる

乗船客は明日からの自分達の暮らしに備える

その頃の僕はプー太郎だったので

(大阪のアパートの戻ってもわし・・する事無いやん)

と思いながら船を降りていた

また神戸から田舎に帰る時は阪神芦屋駅か深江の駅で出港の時間までを潰した

神戸港11時発なので一杯飲むのにちょうど良かった

芦屋の駅前に馴染みの店まで出来た・・

(未成年だったけど)

その頃から15年後大震災が起きた

馴染みの店もフェリーターミナルも潰れた

フェリーボートの着く港が大阪の南港に変わった

淡路島に橋が架かって四国と陸続きになってフェリー航路も閉ざされた

神戸はただ車で通り越すだけになったけど

もう一度海の上からあの素晴らしい神戸の夜景を見てみたいと思う

コメント
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