運送屋で品もんが余るってそんな訳無いですやん
品出しの時に五郎さんがパクってたんですよ
五郎さんある日突然おらんようになったけど
たぶん自分がパクられたんですよ
同い年のしげるって友達もおりました。
パチンコ屋で知り合うたんですけど
気の小さいアホみたいな奴
正直、お互いにこいつよりはわしの方が頭がええと思ってたんじゃないですか
ある日、シゲルと二人で玩具屋の倉庫番のアルバイトに行ったんですが
二人そろって二日でクビになったんですわ
理由が
役に立たんちゅー事で
そう言えば一緒に倉庫番をしてたよう肥えたおばはんが言うとった
「あんたらうちと一緒で役立たずやって課長が言うとったで」
その頃の大阪は人使いが荒かったらしいけど
それに輪をかけて役立たずのわしらでした
しげるともいつの間にやら付き合いがのうなって
風の噂ではどこぞの事務所で電話番のバイトに行ったら
誰ぞの代わりに豚箱に放りこまれたって
あくまで噂ですよ
そう言えば
かずみちゃんとデートしたな
人生初めてのデート
京都の清水寺に登ったんですけど
「二年坂でこけると二年以内に死ぬんやて」
「僕ここでこけるから死ぬ前にチューさせてくれへんか」
って言うたら
「いやや!」
言ってたな
青春の何気ない1ページですよ
ははは!
ああ、やっぱりあかんか~
て思いましたね
大坂に出て最初の年に専門学校に入ったんですが
やっぱり大学や
大学に行かんとええ女の子とも付き合えん
思て予備校に行き直したんですわ
そやけどやっぱりパチンコばかり打ちに行って
勉強もほとんどせんかった
ほんでも試験さへ受けたら間違うてどっか受かるんちゃうかな思て
受けたんやけど
やっぱりどこも受からなかった
言うときますけど
受けた大学ってある程度知られた学校ですよ
あの頃でも誰でも受かる大学ってありましたもん
関西のその手の大学って
普通の人間は行かんと
アホやないと行けん
って言われてましたもん
落ちた時
やっぱり勉強せんと受からんかって
案外さばさばした気持ちでしたね
19歳と時です。
僕の長い人生で後にも先にも学校も職場にも何処にも所属先の無い
正真正銘の無職と言うかプータロウと言うか
パチンコばかりしていたから博徒と言うか
遊び人・・・
仕送りは送って貰ってもうてたからやっぱり親のすねかじりやね
そんな風来坊にも世の中はよう出来ていて
友達が何人かできるんですよ
女友達も2人ぐらい出来ました
かずみちゃんに、ちよみちゃん
やっぱり名前からしてかずみちゃんは美人でしたが
ちよみちゃんはブスでおまけに性格も悪かったですね
男の友達は隣のアパートの僕より一つ上の五郎さん
よく、舶来のウィスキーが手に入ったから飲みにこいとか
今日は高給な饅頭があんねんとか言って
よく部屋でごちそうになったんですが
五郎さんほんまもんの貧乏人やのに
「これどうしたんですか?」
って聞いたら
「あまったんや」
って言うんです。
なんでも五郎さん運送会社の品出しのアルバイトをしていて
そこでよう品もんがあまるそうなんです。