３０数年前、成人式には出席しなかった
いや出席出来なかった
親に貰ったスーツ代、全部パチンコに使い込んで式に着て行く服が無かった
それにも増して同級生達に「今、何をしているのか」を聞かれる事が嫌だった
実際何もしていなかった
たびたびテレビを賑わせる事件の若い犯罪者の職業が無職で
人を（あっ！やっぱりな）と思わせる的な無職な僕だった
（どんな無職やねん）
３度めの受験を控えていた
受かっても落ちてもとにかく大阪を脱出して
東京に出ようと思っていた
有り難いことにどうにか一つの学校が拾ってくれた
その年の２月に友人の運転するレンタカーで上京した
原宿のホコ天でタケノコ族が踊っていた
新宿コマ劇場前のビル全部の階がディスコだった
学校が始まるまで日にちがあったので
渋谷の１０９でバイトをした
社員専用の喫茶室のウェーターでたぶん楽な仕事だろうと思った。
意に反して凄まじい程の忙しさだった
それにも増して店のマネキン連中が威張り腐っていた
同じ日に入ったウェーター３人が皆、僅か２時間ほどで店を辞めた
同じ時給なら仕事の楽なところの方がいい
一人が
「２時間働いたんだから２時間分の給料を貰いに行こう」
と言った
さすがに僕はそれは出来んやろうと思った
３人で話してみたら皆同い歳で２０歳だった
一人は東京の奴で無職だった、東京の無職は休みの日はタケノコ族で踊っていると言った
僕は２０歳でタケノコなんてアホちゃうかと思った
一人は沖縄から出て来た奴で沖縄ではクラブのボーイをしていたそうだ
その頃の僕には‘クラブ，とか‘ボーイ，とか無縁の世界だったんで
さすが‘沖縄，やなと思った
僕は上京に際してまとまった金を持っていた
東京の無職はその金に目を付けた
その頃の東京には上京したばかりの田舎者を騙してやろうと言う輩が大勢いた
