学校から帰って庭を見たら、かわいい赤毛の犬がちょこんと座っていた。
祖父に聞いたら
「最近、みかん山にみかん泥棒が来て往生しとるから山の番犬に飼うたんや、それにわし一人より犬でもおった方が心丈夫や」
と言った
その日は山から自宅に連れて来ていた。
自宅からみかん山までバイクで10分ぐらい
赤毛の犬はそのまま名前をアカと付けられた
赤毛のワンだ・・・ははは
家は代々猫を飼っていて犬を飼うのは初めてだった
しかし、アカは山の番犬なので普段はただ一匹、山の小屋に繫がれていた
真っ暗い山の中でただ一匹
何だかとてもかわいそうだった
それから僕は学校から帰るとバイクで山まで行ってアカを連れて目の前の砂浜を散歩した
砂浜はどこまでも広く遠く太平洋の荒波が打ちつける
アカは全速力で砂浜を駆け回った
広い海と夕暮れの砂浜はアカと僕の二人?しかいなかった
しかし、いつも帰り間際になるとアカは僕に近付いてこなかった
時間になるとまた一人ぼっちの山小屋に繫がれることを分かっていたんだ
そうこうして月日がたち
また僕の悪い癖がでてアカを砂浜の散歩に連れ出す事に飽きて来た
ある日、祖父に
「アカ、元気にしてる?」
って聞いたら
「犬捕り(保健所?)に連れていかれた」
って言った
「そらあかんやん、出してもらいに行かな」
「行かん、もう3回目やから、もうよう頭下げれん」
と言った
聞くと、アカが保健所に捕まったのは今回で3回目らしい
山に繫ぐのがかわいそうで祖父もしょっちゅうアカを放していたらしい
こうしてアカの最後があっけない形で終わった
それ以来、番犬を飼うのを辞めた
アカと僕が駆け回った砂浜は今や関西屈指のサーフィン場として賑わっている