
3時になったので
妻とふたりで
お茶を飲む
のんびりと
なんの屈託もない
かといって
話しが弾むわけでもない
テーブルの上の茶碗が
ときおりカタコトと鳴り
お茶をすする音がするだけ
今は自由な時間がいっぱい
お茶を飲む時間
新聞を読む時間
テレビを見る時間
存分にある
お茶を飲みながら
意識がただよいだす
その中へ
時には過去が入り込んでくる
過去の亡霊は
ときには激しく叫ぶのだ
――こんな昼間から
――お茶なんか飲んでいていいのか
――働け、働け、コラ、サボるな!
ただよう意識の中で
こちらも大声を出す
――バカ言うな
――もう腰が曲がるほど働いてきた
――ゆっくり、お茶を飲ませろ
――お前さんこそ、サボるな
――こんなところへ出てくるな!
そうだよな、現役のころは
3時だ、お茶だ、などと
言ったことも、飲んだこともない
ただ、前を向いて歩いていただけだ
妻が、フッと笑った
――どうしたの
――ちっともお茶が減らないよ
老年になった今でも
汗して働いていたころの気概は
ずっと持ち続けているらしい
リタイヤするまで
燃やし続けたエネルギーは
少しずつ昇華し
気概だけが残ってきているのであろうか
もういいのだ
もういいのだ
妻とふたりして
ゆっくりと、ゆったりと
お茶を飲んで
一本道を歩いて行けば
それでいいのだ