

タイコ隊のリーダーをやっているタヌキのポコがぶつぶつ言いながら歩いていた。それを見たブタのプウが声をかけた。
プウ「おや、いつも元気者のポコちゃん、どうしたい。なにをぶつぶつ言っているのさ」
ポコ「なあんだ、プウさんかい。いやね、いま叱られてきたとこなのよ。え、なぜってか。ほら知っているだろう、音楽の先生をやっているキツネのノッポ先生さ。あのノッポ先生に頭から怒鳴られたのさ」
プウ「へえ、ポコちゃんでも怒られるのか。で、なんで怒られたの」
ポコ「それがさ、うちのタイコ隊はまだ始めて数年だろう。おれたち、腹つづみの叩き方も知らなかったから、始めるに当たってノッポ先生にご指導を受けたというわけ」
プウ「ふ~ん、タヌキさんがキツネさんに腹つづみの打ち方を教わるとはねえ。時代が変わったのかなあ。まあ、いいや、それで――」
ポコ「おれたち、まだ腹つづみの演奏を人前でやったことがないけれど、練習はずっとやっているわけ。数えてみたら練習が30回にもなったので、隊員のみんなに『ご苦労さん、ありがとう』と礼を言ったのさ。それをどこかで聞きつけたノッポ先生が『わが輩がみんなに教えたのに、わが輩に礼を言わないとはおかしい』と怒り出したというわけ」
プウ「先生は、ず~っと毎回来て教えてくれていたの?」
ポコ「いや、最初のころに何回か教えてもらっただけで、あとは自分たちで自分のお腹で練習していたのさ」
プウ「なら、なんで怒るのさ」
ポコ「うん、たしかに世話になった先生のところへ行って礼を言えばよかったのかもしれないが、ずいぶんご無沙汰していたので、ついつい~~ね。それでさっき先生のところへお詫びに行ってきたのさ」
プウ「タイコの世界もなかなか厳しいのだなあ」
ポコ「先生はまだ怒っていたけれど――。まあ、仕方がないね。これからもおれたちだけで楽しみながら練習していくよ。早く村の人たちに、われわれの腹つづみ演奏を聴いてもらいたいと思っているのよ」
プウ「そうだ、一人前になることが、先生への恩返しかもしれないな」
ポコ「おや、プウさん、しゃれたことを言うじゃないか。たしかにそうだよね。みんなでこれからもがんばるよ」
プウ「そう、そう元気出しな。おいらはなんの手伝いもできないけれど、演奏会の司会ぐらいはできるかもよ。ブー、ブーってね。な、やらせてよ」
ポコ「はい、はい、プウさん、ありがとう。話したら元気が出てきたよ。じゃ、また~ね」