髭を剃るとT字カミソリに詰まる 「髭人ブログ」

「口の周りに毛が生える」という呪いを受けたオッサンがファミコンレビューやら小説やら好きな事をほざくしょ―――もないブログ

「巨人伝承譚 ソラザル」プロローグ

2014-05-05 21:00:39 | 巨人伝承譚 ソラザル(長編小説)
ブロード少尉は狭いコクピットの中で計器類のチェックを行いながらパネル類を操作し、記録をとっていった。
「速度170km、姿勢維持。現在、高度4650mを推移。エンジン、スラスター各部、機器全てにおいて異常見受けられず…。コクピット内の気圧正常…」
周囲は真っ青で頭上に太陽が浮かんでいた。下部に雲海が広がっている。定期的に機器のチェックを行い周囲に変化がないかと注視する。一人であるがやや大きめの声で確認する。
「飛行感覚はどうだ?」
前方から声がする。
「シミュレーションとまるで同じ。ヴェノゴ社の技術は素晴らしいに尽きますよ」
「そう腐った言い方をするな。空を飛ぶ大機人で世界初のパイロットだろうが。世間で自慢できるぞ」
「任務を全うしているだけです。勿論、内心は喜んでいますよ。光栄だと」
「分かった。分かった。これからがお前の本題だからな。よろしく頼む」
『全く。こんな人型を空に飛ばしたら戦闘機の格好の的だ。戦場で幼児が歩いているようなものだぞ』
愚痴の一つも漏らしたいところだが、コクピット内は録画、録音されているので余計な事は言わずに淡々と任務をこなすだけである。
ブロード少尉は新型の大機人とそれに装着された専用飛行ユニットのテストを任されていた。大機人とは彼が乗る大型機動人型兵器の呼称である。センスの欠片もない名称であるが企画者が物々しさとシンプルさで考え出された名称である。本来、大機人は陸専用として用いられているものだが、今回は巨大なスラスターがいくつも付いた飛行ユニットをつけている。いずれ空戦も行えるようにというテストの為である。前方から話かけてくるのがパラッズ曹長。大気人は基本的に複座式であり、後ろにメインで機体を操縦する物が乗り、前方に座る者が索敵、機器等のチェックや調整、攻撃を行う。
この機体の最高速度は330km/h。やはり人型という事もあって速度はさほど速くない。マッハ1である約時速1200km/hを数倍も超える戦闘機から考えればF1マシンと自転車の差ですらない。だからいざ戦闘になろうものなら勝ち目がない事は誰の目にも明らかである。にもかかわらず、このようなものを作り、空を飛ばすのか。ブロード少尉には理解できなかった。
『データを取ることが以後の技術進歩に役立つというのが名目だが、そもそも間違った方向に進んでいるものが何の役に立つというのか…金と時間の無駄だろう』
だから、このユニットのテストにしても乗り気ではなかったし、そもそもこの大機人に搭乗することも不本意だった。
『金持ちの道楽に利用されるなど…』
軍の大機人の実験訓練隊に配属された時、辞退しようかと思ったが先輩に諌められた。
「お前はまだ若い。ここで波を荒立てるよりも敢えて気乗りしない回り道であってもまだ時間はある。お前の燻った怒りは後の糧となるだろう。今は耐えろ。いや、この程度、耐えてみせろ」
先輩の言葉は理解できたが、本当にこれが糧となるのか半信半疑であった。
「予定ポイント到達。高度を下げます」
「了解。お前さんの腕の見せ所だ」
オートパイロットを解除し、マニュアル制御で高度を落とす。ペダルの踏み方を徐々に緩めスラスターの噴出量を減らす。体感で高度が下がっているのがわかる。真下にあった雲が近付き、潜っていく。時折突風が吹き機体を揺らすがレバーをゆったりとした操作をして振動を防ぐ。非常にデリケートな作業だ。
雲をくぐると赤茶けた荒野が広がる。岩が露出し、所々に木々が生えている。
『しかし、機体のテストついでに何故にこんな任務を…』
ブロード少尉は書状を預かっていった。それをある人物に渡しに行けという任務だった。
視界左に一面の黄金色が見えた。拡大してみた。
『小麦?原始人共が小麦だと?お前らなんざ、猪でも追っかけていればいいんだよ』
眼下の人々を見下して思った。
『そうか…小麦は過去のアディリア人が奴らに伝えたんだったな…』
遠い昔の歴史の本で自国の歴史を見て思い出していた。
「ふーん。小麦畑か…現代でも槍でも狩りをしているものだと思っていたな。うおお!と雄叫びを上げながら獲物を追う姿を想像していたんだが…」
前の座席に座る大気人のメインメカニックのパラッズ曹長がそのように言う。通常ならばパイロット2名が同乗するが、今回は新パーツのテストという事もあってメカニックが乗っていた。勿論、彼一人でも機体の操縦が出来るだけの訓練は受けている。
ブロード少尉は考える事は同じだなと思った。
「私語厳禁。任務に集中しなさい。パラッズ曹長」
こちらの音声だけではなく映像も基地の方に同時送信されていて確認されている。だから迂闊な事も言えないわけだ。無線から女性の声が聞こえた。
「はいはーい。スタジオにお返ししまーす!」
まるでテレビ中継のレポーターのような口ぶりをするバラッズ曹長。それに対して、何の返事もなかった。
何人かがこちらに気付いたらしく口をポカンと開けてこちら見上げているのが見えた。過去の映画で見かけた古い民族衣装とほぼ同じものに思えた。長い服を紐で縛るようにしてまとめ動きやすくしていた。
「へぇ…人か…ちゃんとした服を着ているのか。俺はてっきり毛皮を着ているもんだと思ったがな。女なんかも片乳房むき出しで。ハッハッハ」
バラッズ曹長が下卑た笑いをしていた。歴史の授業を思い出した。当時は殆ど聞いておらず遠い記憶として頭の片隅に残っていた。眼下のポカンといかにも馬鹿そうにこちらを見る人に向けて呟いた。
「あれが先住民」
「アホ面しているのは奴らにとって俺達は遥か先を生きる未来人に見えてしまっているからなんだろうな」
更に飛行を続けると正面に集落のような家が密集している所が見えた。
「あれか…」
更に高度を下げて着地の態勢に入る。
「着地は腕の見せ所だぞ。少尉」
「了解。見事な着地をご覧に入れましょう」
「言うねぇ~」
スラスターを弱める高度、機体に極力、ショックを与えない速度。それらを実際にやってみる。シミュレーションでは失敗する事なくいった作業である。迫る地面。パラグライダーの経験を思い出す。
ガチッガチィ!
地面に足が設置する。やや機体は膝を曲げたが手を付くほどではなかった。
「ほう。言うだけの事はあるな。少尉」
「チッ。失敗だな」
シミュレーションでは何でもなかったが、最後に少し自身のスラスターと風に煽られたと感じた。だから、思い通りに着地できなかったと思った。
「何、謙遜してんだ。立派だよ。大機人の高高度からの着地は初めてなのだぞ。誇っていいぞ」
「この程度で満足してどうするんですか」
「ご自分に厳しい事ったな。俺からすれば万歳して喜ぶところなのによ」
テストパイロットに任命され、それをこなしているだけで誇るべき事など何も無い。ブロードでなければならない要素などないからだ。仮に腹痛で休むのなら誰かが代われるただの任務である。
完璧な動作で見ている側の鼻を明かしてやろうと思ったが今のでダメになってペースを崩そうかというところだが、ブロード少尉は気持ちを切り替えていた。
次に歩き出す。飛行スラスターユニットのせいで全体的に機体が重く非常に歩きにくかった。スラスターユニットは腰部全体に覆う形をしているものでその装着している容姿から『スカート付き』だとか『歩行器付き』だとか言われていた。
「聞こえるか?カルメウの民よ!この辺り一帯を統括する責任者に会いたい!私はアディリアの北方軍大気人試験隊所属、ブロード・リーデック少尉である!聞こえるか?」
自動翻訳機を通じた言葉が機体に取り付けられたスピーカーから発されていた。

丁度同じ頃、その場所から10kmほど離れた森に5人の少年達が集まっていった。
「ようし!ぶっ壊してみようじゃねぇの?」
「やってみるかぁ?」
「誰から入る?」
彼らはその森にある館の中にある厳重に鍵が付けられた扉の前にいた。その館は無人であり、かなり埃が溜まっていて相当前から誰も来てない事が伺わせた。
「入るなって書いてあるけど本当にいいの?」
1人が扉に何枚も『決して入るな』と書かれた紙を見て止めようとするが、そんな静止など聞こうとする者は他にはいなかった。年頃の少年では良くある事だ。無茶な勇気に憧れてしまう時期というものが。
「オメー、怖気づいたのかよ。だったらここで鼻でもほじって飛ばしてりゃいいんじゃねぇの?」
事ある毎にすぐに一言を言う「イセグア・コムッザ」5人のうちのツッコミ要員だ。比較的多く『じゃねぇの?』という口癖がある。
「そういう訳じゃないけどさ。もしバレたら何を言われるか分からないでしょ?」
鼻ほじりといわれた少年はおどおどしていた。
「どうバレるんだよ?誰かがチクらなきゃバレようがねぇし、そもそも誰にチクるんだよ。この館が誰のものかもわかんねぇのに、チクりようがねぇだろ?お前がバラさなきゃな」
常に、5人の中で別の視点から物を見ている「クゼアル・ラメクット」グループのアイデアマンでいつも突拍子もない思い付きをする。大抵、何か行動を起こすのは特に気が合うコムッザとラメクットの二人だ。
「僕だってそんな事しないって…でもさ、急にこの館の主が帰ってきたりとか…」
「あんまり言うなよ。ネムルッカはここで待たせて俺達だけで中に入ろうか」
普段は温厚でまとめ役でもある「シブネソ・キルタッタ」、身長の事を気にしており、チビと言われると本人も抑えられぬほどに激昂する。
「俺は行く。来たきゃ来ればいいし嫌ならここにいればいいし、俺達が帰らなかったら後はお前が教えればいい」
5人のリーダー。「ゴルミシス・アルクッパ」。村長の孫でいずれは村長になるといわれている少年だ。そのことについて本人は乗り気ではないようであるがやはり村長の血を引いているためか5人のうちで決断力が高く他の4人は誰が言うでもなくリーダーという位置につかせていた。
そして、頑なに館に入るのを拒否していたのは「アコロヘ・ネムルッカ」だった。
そのネムルッカが完全に、怯えているのを見て他の4人は無視するようにしていた。
「やるぞ」
「おう!」
アルクッパがハンマーで錠前を叩き壊した。扉が開けると中は真っ暗で何故か冷たい空気が吹いたような気がした。少年達は持っていたランプに火をつけ、中をかざした。
2人横並びで歩いたらいっぱいという狭い通路で奥はかなり深そうで先がかなり続いていた。
「こりゃ随分と深そうだな」
「この館の主の隠し財産があるんじゃねぇの?」
ラムクットとコメッザがニヤニヤしていた。山分けという話をしていた。
「でもさ。隠し財産があるのならも罠みたいのがあったりとか考えられない?矢が飛んできたり落とし穴があって底には槍がびっしりとかさ…こういう事はやっぱり村長に聞いてからさ」
ネムルッカはやはり不安になっていた。
「バカか?お前。一々萎える事言うんじゃねぇよ。こえぇ~なら外で待って鼻くそでも飛ばしてろよ。ホント、お前、姉ちゃんいねぇと何にもできねぇな」
ラムクットは憎まれ口を叩くとネムルッカはグッと口をつぐむ。
「さっき山分けって話だったがそれは不公平だ。誰も知らない所に足を踏み入れるのにみんなで山分けって先頭の奴が損だろう。先頭の者だけほかの者と比べて2倍で、他は山分けって案はどうだ?」
アルクッパの提案に全員納得した。
ネムルッカもバカにされた手前渋々了承し、皆と一緒に行動する。先頭はアルクッパである。奥に進むと蜘蛛の巣が張り巡られ、埃臭さがより強くなった。下りる階段を見つけるのだが、妙に長い。
「おい。何かおかしくねぇか?」
ラムクットが何か気付いた。
「だってよ。俺達館の2階から降りたはずなのに、この下り階段。もっと低く潜ってねぇか?もしかして地面って気がするが」
全員それに気付き足を一瞬止めた。
「だが、とりあえず今のところ異常はないんだ。先を進むぞ」
先頭のアルクッパがそう言って前に進むので追うように歩いていく。ネムルッカはやや震えていた。
今度はのぼりの階段があり階段途中から壁に赤く塗られた文字が書かれている。しかもそれはまるで血飛沫をあげたような飛び散った字の形であった。
「『この先には進まない方が身のためだ』『引き返せ!』『今ならまだ後悔しないで済むぞ』か…まだ先にも続いているようだな」
アルクッパは書かれている文字を読んでみる。
「確かに普通じゃねぇな」
「まだ行くのか?これってちっとヤバめじゃねぇの?」
ラムクットとコメッザはその異様な文字を見て
「『やめろ!』『どうなっても知らんぞ!』『お前は愚かだ』」
アクルッパが次々とでかい声で読み上げながら先を歩き出した。
「アルクッパ?」
「お前らまで臆病風に吹かれたのかよ。こんなもんは中に入るビビらせる為に書いたに決まっているだろ?だから今、お前らがビビった時点でこれを書いた奴の思う壺だよ。コレ書いた奴にニヤつかせてどうすんだよ。『本当に後悔するぞ!』『バカ野郎!』
それは自己を励ますかのようにも見えなくなかった。
「そ、そうだな」
「わりぃわりぃ」
それにラメクット、コメッザ。キルタッタが続く。
ゴリッ
ネムルッカが何か嫌な感触が足の裏でした。何か硬いものが砕けるような音だ。
「ん!?」
足の裏を見てみると白いものが割れていた。
「骨だぁぁぁぁぁ!」
「ここで誰かが死んだんじゃねぇかぁぁ!」
「ここは呪われているぅぅ!」
騒ぎ出すラメクット、コメッザ、キルタッタが大いに叫ぶ。踏んづけたネムルッカは恐ろしさのあまりに声を出す事すら忘れてしまったようだ。
「うるせぇぇぇぇっ!帰りたいのなら帰りやがれボケがぁぁぁぁっ!!」
リーダーはもはや意固地になっていた。ただ、骨の量から言ってとても人がここで死んだというほどではないし、そもそも死因が分からなかった。罠にかかったというのなら槍や矢などが突き刺さっているものだろうが罠らしきものもなかった。
ただ、緊張が高ぶっていた彼らに冷静に物を考える事は出来なかった。
「ここまで来たら行くんだよ。腰抜け野郎共が」
かなり下に来ると辺りがヒンヤリとして涼しくなった。天井の木から雫が垂れる。
「一体どこまで続いているんだ?」
先頭のアルクッパもその異様さに恐ろしさを感じているようだ。そのように思っていると今度は上りの階段が出てきた。もはや彼らの方向感覚は狂っていて自分が今、どこを向いてどこまで行ったのか分からなくなっていた。ただ、1本道であったので往復に困る事はない。
更に上がると入り口と同じような鍵が付けられた扉があった。ただその錠前は頑丈なものでもなく持ってきたハンマーで破壊できそうである。周囲の壁やドアに赤い文字で『帰れ!』『荒らすものに災いを』『呪うぞ』などと拒むような文字が書かれていた。
「こ、こんなものはただのハッタリだ。今まで何もなかったんだからな。やるぞ?」
アルクッパは手にしたハンマーを振り下ろしぶち当てる。錠前がガツッと鈍い音をさせて壊れ、床に落ちた。
「開けるぞ?」
皆がゴクリと固唾を呑んで見守る。誰も頷く者はいなかったが、その先に全員が注目していた。
ギィィィィ…
扉が軋む音はするものの、重苦しいものではなかった。慎重に開ける。何か罠のスイッチであったりしては困る。しかし、何も引っかかる物はなく人が出入り出来るぐらい開けてランプで中を照らしてみた。
「な、なんだよ。これはぁぁ!」
壁や鎖につながれた鎖。その鎖に付けられた錠付きの輪。人型の形をした台。壁には針、刃物、鞭、鉄の棒。その夥しいほど器具の数に、皆、声も出なかった。
そこは金銀財宝などではなく拷問部屋があっただけだ。その先にドアなどなく道は途切れている。アルクッパが声を出した。
「帰るぞ」
皆、何も言わなかったがアルクッパの声に従い踵を返した。そんな沈黙は外に出るまで続いた。
「こんなものがあるから…帰れって警告していたのかよ…早く教えろっての」
コメッザが苦虫を噛み潰したような顔で言い
「もう何も言うな…」
アルクッパは小さく言う。5人は重苦しい雰囲気のまま館を出た。

時同じくしてブロード少尉達は住民との接触に成功し、そのまま周辺を統括している村長の家に向かう。先導してもらう事になったのだが、その住民は車を使っていた。足元を走っている。
「燃料車か…実際に生活で使用している奴など初めて見たな」
ブロードの国内では電気車が主流となっている。環境に配慮したエコカーという奴だ。
「私はてっきり馬にでも乗っているものかと思っていましたよ」
「同感だ。燃料車を走らせられるって事は100~200年差ぐらいの文明差って奴だろうかな?」
「まさに生きている歴史そのもの。そう考えると200年後にこいつらも大機人を製造しているのでしょうか?」
「その頃には、俺達はタイムマシンでも作って時間の旅行を満喫しているだろうさ」
他愛ない会話をしながら着いていく。
「村長の家はあっちだ!用が済んだらサッサと帰れよ!」
「勿論そのつもりだ!先導感謝する!」
何故、こんな原始人に配慮しなければならないのかと疑問を覚える。ただ今のところは対等な立場でなければならなかったのでグっと耐えた。住民達は車を降りて村長の家に歩いていく。ブロード少尉も続く事にする。
「さーてカルメウの存分に空気を吸う事にしましょうかね?」
「注意してください。コクピットを出た瞬間に狙ううちされる可能性もありますからね。奴らは狩人ですから」
「わーってる。わーってる。襲ってくるような奴がいたらパパパッと倒してやるさ。だが、この任務のメインはあくまでお前だ。気を引き締めていけよ」
「そんな人たちにやれるほど柔な訓練は受けていません。こっちは優秀な未来人なんですから返り討ちにしてやりますよ」
「その意気だ。サッとやる事をやって帰って来い」
「了解」
機体を屈ませコクピットハッチを開けた。まず、前席のパラッズ曹長が周囲を確認し、出て、開いたハッチに立つ、それから前方座席がスライドし、天井部に固定されたのを見て後部座席のブロード少尉が外に降り立つ。機体の手の平を自動で動かして手のひらに乗り地面に降り立つ。パラッズ曹長はすかさず機体に戻った。
周囲に住民が増えてこちらを見ている。興味本位で見てくる者、困惑した表情を浮かべる者、様々であったが圧倒的に多かったのは憎しみの目で見る者達であった。
『敗北者である先祖の恨みを受け継ぎ続けているという所か…』
彼は腰部に拳銃と手榴弾を装備しており、任務の前には構えて威嚇程度には使うかもしれないと思ったが実際に人に向けて発砲しなければならないという可能性を周囲の空気から感じ取っていた。動揺した素振りはみせない。飽くまで素知らぬ顔で歩く。
「村長。地強奪者が来た。アンタと話をしたいって言っているけどどうする?」
村長と呼ばれた初老の男は、パンクした車のタイヤの交換を行っていた。短髪で眼光鋭くまさに村長というに相応しい風貌の男だった。それを聞いた途端に、ビクリと震える。手をグッと握り力が入り顔面が硬直する。だが作業でかいた汗を拭きながらこう答えた。
「どんな奴だ?」
手を動かすのを止めずジャッキを動かしていた。
「20代の男だな。全身樹脂みたいな奇怪な服を着ている。まさに異世界人だな」
「20代…そうか。顔だけは出す。まず、茶でも出してもらってくれ」
「ああ?客扱いするのかよ!こっちからすりゃナイフでもぶん投げて追い払いたい気分なんだぞ!」
「それは俺も同じ気分だよ。こちらから力で排除するやり方をしては奴らに後で口実を作らせる結果を招くだけだ」
「ご先祖が昔、奴らをそうやって友好的に振舞って、それを逆手に取ったのが卑怯者の地強奪者なんだぞ」
「まずは待て。奴らもお前らのそういった反応を誘っているのかもしれん。少しは律せ。それこそ思う壺だぞ」
チッと舌打ちしているのを聞きながら歩いていくのを見て村長はこういう。
「そうだ。茶を入れるといっても毒は入れるなよ」
「!?分かったよ!」
男はその場から立ち去って行った。
「くっそ。あの頑固ジジイ」
「で、どうだったんだよ」
村長に聞きにいった者達にはもう1人の男が待っていった。
「話をしてやる。茶を出してやれとよ。全く、ビビっちまってよ」
「はぁ?何、バカな事を言っているんだよ?アイツらは俺達の…」
「それは俺も言ったよ。だが聞く耳なし!全くご先祖様が聞いたら泣くよ。誇り高く生きてきたご先祖がこんな腑抜けになっちまってよ」
「だったらさ。俺達だけでやっちまおうぜ!」
「いや、待て待て。村長がそういうのならあえて乗ってやろうじゃねぇか」
「おいおい。お前、村長に媚売るつもりかよ」
「逆だよ。逆。この件で村民からの信用を失墜させ、村長を失脚させる手立てとするのもアリなんじゃねぇか?ヘタレ村長などその座を降りてしまった方がみんなの為だろ」
「考えるねぇ…分かった」
「じゃぁ、茶にでも毒を仕込んでおくか?」
「村長が入れるなって言ってたぞ…いや、それとも村長の方にかい?」
冗談を言いながら二人は去っていった。

ブロード少尉は外で待たされていた。その間、通信しているので暇を持て余す事はなかった。
「こちらへ」
女性が出てきて家の中に招かれた。屋内に入るのはマズイと彼のセンサーが言わせたが村長と会うのが立ち話というわけにもいかないだろうからと言われるままに入っていくことにした。
「どうぞ。お茶です。村長は直に来ます。こちらで少々お待ちください」
テーブルの上に湯のみのように取っ手がないコップに薄く緑色をした液体が入っていた。
『毒入りとかな…』
毒かどうか確かめる術でもあればよかったが簡易的にでも検査するような道具を持っていなかったので直接口をつけないようにするしかない。というより毒が入っていようがいなかろうが小汚く見えて初めから飲むつもりなどなかった。
テーブルに近付かず立ったままでいると村長が現れた。
「お待たせした。私がこの村の村長であるシレムッタだ。何の連絡も為しに急に来られたものだから昼の作業をしていて体中、油や泥まみれなのだ。失礼だが承知していただこう」
「はい。それで我々の…」
「だが、用件を聞くつもりはない。今すぐお引き取り願おう」
「は?」
「君は見るところまだ若い。上に命令されてここに参っただけなのだろう。それについてはわざわざのご足労痛み入る。だから茶も入れさせた。しかし、我々の君への配慮はここまで。後はすぐに帰り上にこう伝えて欲しい。歴史を学べとな!」
村長は語気をかなり強くこめて言った。
「相互不可侵条約は私だけではなく上も把握しております。ですからそれを曲げてお願いに参ったのです。この書状を書いたバジアス少佐もその事は理解したうえで…」
「それが条約を理解していない何よりの証拠!」
「まず、これを見てからでも」
「本来ならば君はこの地に踏み入れた時点で襲われていても文句は言えん立場なのだぞ。これ以上、我々の怒りを買って危害を受けたくなければ即刻、帰りたまえ。これは村長の立場、この地の掟というだけではなく、君自身の身の安全を考えての事だ。ここの者達は今は冷静を装っているが心底、君を殺したいと思っているのも中にいるだろう。私自身、君をぶん殴ってやりたい心境でいる。ではな…こちらは忙しいので早々に立ち去られよ。でなければ君がどうなろうと知った事ではない。キチンと伝えたぞ」
ブロード少尉が書状を取り出したが、シレムッタは聞く耳を持たずそのまま奥へと消えていき、再び女性が戻ってきた。
「村長がおっしゃられたとおりです。お引取り下さいませ」
女性は冷たく言い放ちペコリとお辞儀をした後に立ち去り、ブロード少尉は取り残された。
「分かりました。書状はここにおいておきます。後日、再度返事を聞きに参ります。良きご返答がいただけるものと願っております。決してあなたがたにも損はさせるものではありません」
ブロード少尉は大きめの声を出し、書状を置いておく。女性は、出口に方に立っており、誰もそのような書状を見ていなかった。スピーカーの方からパラッズ曹長の声がする。
「立場をまるで考えてない口ぶりだったな。俺達が本気になればこんなちっぽけで枯れた地は一瞬で火の海にさせることだってのによ。何が歴史を学べだ。お前達の方こそ少ない俺らの軍に何も出来ずただ侵略された猿の分際でな。大人しく言われるままにしてりゃいいものを愚かなる先住民め。更に、土地を減らされてもいいのかねぇ…」
似たような事を考えたが口には出さなかった。外に出て、自分が乗ってきた機体に向かう。2度とこんな任務はゴメンだと思う。再度来ると言った物の次も行くように命ぜられたら流石に辞退しようと考える。将来的なマイナスに働こうとも、次にこのような屈辱に耐えられる自信がなかった。
「ぺッ!低脳猿の分際で…」
唾を吐きそのような言葉を吐いた。それが彼とそれに取り巻く双方の運命が急転するなどこの時、誰も予想しえなかったことだろう。次の瞬間であった。一瞬、周囲を気にして振り返った時だった。光る物を感じて身を引いた。
「グッ!」
鋭い痛みが右腕に走った。
「どうした?少尉」
耳元から聞こえる通信が少し鬱陶しくも感じられた。
「矢です!右腕をやられました!」
「何だと!?」
パイロットスーツに矢が突き刺さっていた。幸い、腕の端の部分のようで傷は浅そうであるが矢に血が伝って落ちるのを見た。
「やったな!野人がぁ!」
ホルスターに収められた拳銃を抜き、矢が飛んできた方向に牽制程度で銃を撃つと、影は物陰に隠れた。
「少尉!機体に戻れそうか?コイツを動かすぞ」
「いえ、あまり村に近づけると奴らを刺激します。私が出来るだけ向かいます。そのときに収容してください」
「頑張るねぇ。分かった。だが、危険だと判断したら動かすぞ」
状況判断、危機的状況をどう打開するかも、評価に関わる。これはテストみたいなものだ。
『コクピットまで200mほどか…走っているうちに次が飛んでくるか…』
それにコクピット内に乗り込むまでの間に射られる可能性がある。しかし、ゆっくりもしていられない。物陰といっても彼らが使っていた物置のような場所である。囲まれたらひとたまりもない。
「さて…」
パラッズ曹長が周囲を見るとワラワラと機体に近付いてくる者達が見えた。
「村に行く事はせんでも、まとわりつく虫は払わなければならんわな」
パラッズ曹長は機体を操作した。
ゴゴゴ…
機体が立ち上がり、こちらに向かってくる。それを見て咄嗟に物陰から顔を出した男が矢を放つがカンと甲高い音を1つ立てただけで機体に傷一つ負わせることなどできなかった。それでもめげずに矢を撃っていた。
「巨人が動いた!」
「奴らを生かして帰すな!」
「おお~。こえ~。こえ~。無知とは狂気だ」
騒いでいる者達がいる。
ブロード少尉はそれを見て冷静に立ち回る。
「バカが…そんな物がなんの役に立つか」
それに、矢が飛ぶ事により、どこにいるかも分かった。手榴弾を取り出してピンを抜いた。
「くたばれ!」
一呼吸置き、タイミングを計り、矢が飛んで来た方向を予測しそのポイントに放り投げブロード少尉は走った
ズンッ!
手榴弾が地面に付くギリギリの所で炸裂した。
「ギャッ!」
声がする。
「ラトッタぁぁぁぁ!!」
「野郎!絶対に殺せ!」
騒ぎ始めた頃には、機体が手を出していたのでそれに乗りコクピットまで運んでもらう。コクピットが開いていてブロード少尉がそれに乗り込もうとした時にダッと飛び出してくるのが見えた。
「逃がすか!卑怯者ッ!」
「バカが…」
身を晒した若者に対してブロード少尉は冷静に銃を打ち込んだ。その銃弾は左足に当たり、バランスを取れなくなり倒れた。
ブロード少尉はコクピットに入りハッチを閉めた。矢の音がカンカン鳴った。奥の席にパラッズが座っていて、ブロードは前方に座る。それだけでヘルメットのバイザーに機体周囲のカメラが状況を上下左右映し出す。
「お帰り」
「ただいまですよ」
「右腕をやられたというが程度は?こいつを動かせるか?」
代わってやる事は当然可能だが、機体の操縦担当はブロードにある。
「軽傷です。かすめただけですから問題ありません」
「了解。メインでの機体操縦権は前方に移行。無理はするな。いきなり声をかけたら無反応になっていたなんて展開、嫌だぞ」
「分かっていますよ。くぅ…毒なんか塗ってないだろうなぁ…ぐぬっ!」
刺さった矢がレバーに当てたと左腕に痛みが走る。そのままでは操作しにくいと矢を引き抜く。激痛で顔を歪ませた。
消毒スプレーを拭きかけパットを貼った。
「ここらの家でも吹き飛ばしてやりたいところだがな」
機体の腰部に装着されているガンには6発装填されている。
「村を殲滅しても何の得にもならんでしょ。取り敢えず3人ほど怪我以上させたのは確実です。それで十分なので戻ります」
その瞬間に、ブロロロと2台のジープが走ってきた。1台は2人でもう1台は1人が乗っている。
「オゼッタ!足元をすり抜けろ!だが、足にぶつける気持ちで走れ!!倒れたんならこっちのもんだ!アガッタ。ワイヤーの準備出来てっか?」
「おうよ!」
ブロード少尉はこちらに向かってスピードを上げるジープを見た。
「こいつら正気じゃない…マンモスを襲う気分になっているのか?原始人がッ!」
「だったら奴らの肉体に存分に味わわせてやれ!コイツが古代動物とは一味や二味も違うって所をな」
分かっていると答えながらパネルの操作をする。スピーカーを入れた。
「下がれ。出なければ殺すぞ!」
「何だとこの野郎!やれるものならやってみやがれぇぇぇ!」
ジープで足に目掛けて走り出す若者は更に加速し、15m手前までやってきて、後部座席の一人がワイヤーを入ろうとしていた。
「愚かな…流石、猿」
飛行ユニットの角度を動かし、噴射し10m程後方にジャンプした。
ゴバオゥゥ!
「ギャッ!」
飛行ユニットから吐き出された炎は地面を焼き、いとも簡単にジープを吹き飛ばした。乗っていた二人の若者を焼き、転がした。火に包まれた人形のように見えるそれはまるで玉のように飛んでいった。
「オゼッタぁぁぁぁぁ!ラガファット!チックショォォォ!」
「このまま帰還します。これ以上留まれば連中は機体を破壊し自分を引きずり出すまで一人残らず襲い掛かってくるでしょうから」
「そうだな。蟻の巣1つ潰したところでデータにもならん」
方向を変えて上昇していった。

スピードは上空の風が強まっているので速度はあまりあげず機体姿勢安定を重視しながら帰還のルートを辿っていた。
「少尉、腕の状…?」
基地からの通信を数回行っていたが途切れ途切れになった。
「?中尉、何を言っているのか分かりません」
それから応答は一切無くなった。
「何だ?突然、声が聞こえんぞ」
パラッズが機体について調べ始めた。無線は聞こえなくなり、レーダーも使用不能になっており、GPSも起動できず自機の位置も表示できなくなっていた。
「故障か?そんなバカな。そのような事が起きるような損傷も衝撃も受けてはないはず。同時にレーダー各機が使えなくなるなどあり得ん!だが有害電波なども確認できない。ウイルスとかか?」
パラッズは様々な機器を用いて異常を確かめてみるも、無線とレーダーのみが使えなくなっているだけでそれ以外の異変は認められなかった。
「バカな…特定のものだけ使用不能に陥らせるなど信じられん。モニターは正常。機体の動きも問題ない。スラスターも至って良好。にも関わらず…。熱、磁力、電波、電磁波、エネルギー、紫外線、可視光線、赤外線、何一つ異変を検出、出来んだとぉ?」
「一体、何が起こっているのか…」
パラッズ曹長もブロード少尉も理解を超えた現象に、彼は何としてもそれを解き明かしたいという衝動に駆られた。彼は細かくセンサー類を注視しながら復活していないか操作を何度も繰り返す。
するとモニターに動きを見た。ブロード少尉は小さな点が動いているように見えた。
「何だ…鳥か?まぁ、良い。これ以上、何も分からないようならば帰還を…」
瞬間に、厚い雲が舞い込み、視界は遮られ、拡大して確認する事が出来なかった。それから帰還するように進路をとったときだった。
ブワァ!
「なんだぁ!?」
「今のは!?」
二人は雲の切れ間から何かが急上昇していったように見た。
「あの巨大さは鳥などではない!?翼竜かぁ!?」
パラッズ曹長は寸頓狂な声をあげていた。

話を少し戻す。ブロード少尉がカルメウの民に対して手榴弾を投げた後である。肝試しを終えた若者達は自分達の村でとんでもない騒動になっているとは知る由もなく、サッカーのような遊びを興じていた。玉を蹴る遊びで2人ずつ分かれ奥にある小さな棒にボールを当てるというものだ。
ブロロロと、激しい音を聞いて彼らはそちらの方向を見た。
「何だ?バイク!?」
キルタッタがまず気がついた。
「村長だ!やっべ!俺達がサボッているのがバレたんじゃねぇの?」
「与えられた仕事はやったんだ。後で遊ぼうと俺達の勝手だろ?」
コムザが不安になるがアルクッパが冷静に言う。
だが、そのバイクは彼らの方には来ず、屋敷の方に向かっていった。
「どこに行くつもりだ?しかもあんなに急いで…」
「行ってみるか?」
「やめとこうよ。それでバレたら何を言われるか…」
「だったらここで待ってろ。ヘタレ野郎」
「うう」
5人は村長を追うと、村長はスタンドで立てることすらせず乗り捨てるかのようにバイクを置き去りにして屋敷内に入っていくのを見た。
「拷問用具でも取りに来たんじゃねぇの?」
「それじゃあれを作ったのは村長か?」
「村長あんな趣味を持っていたのか。幻滅したな」
「爺さん。何をしに?」
「もしかして僕らにその拷問用具を…」
ギギギギガガガガガ!バギバキキ!
突如、屋敷の中から音がした。屋敷の壁や屋根が揺れその直後、屋敷の屋根が崩れ落ちた。一同はそれを見上げたまま固まってしまった。割れた屋根から巨大な頭が現れた。
「あれは…頭?」
続けて肩、胴体と姿を現していったのだ。
「あ、あれも、ご、拷問用具の1つか?」
「さ、さぁ?」
「きょ、巨人だ…」
屋敷の天井を両手で引き裂くように壊しながら現れたのは今まで誰一人として見たことも聞いた事もない機械の巨人であった。巨人はそのまま立ち上がりジャンプした。それから地面に着地すると四つん這いになると獣のように四足歩行でかけだした。その動きは巨人という人ではなく獣だった。
「な、何があるんだ?」
「行ってみようぜ!俺達を狙っているわけじゃなかったようだしな」
彼らは自身が乗ってきたジープで追いかけた。何か面白い事がありそうだという少年特有の冒険心や好奇心が追いかけさせた。が、それを巨獣はあまりにも速くジープの速さなど比ではなくまさに桁違いの速さだった。
「あんなにでっかいのがもう見えなくなっちまいそうだぞ!もっとスピードは出ないのかよ!!」
「5人も乗っているんだぜ!これで限界だよ!」
舗装された道ではない。ガタガタは酷く少しは丈夫に作られているとはいえあまりにも速度を上げると車自体がバラバラになるのではないかというほどの揺れだった。
「なら、お前降りろ。鼻くそ飛ばし。そうすりゃ少しは速くなるんじゃねーの!」
「はっ!?バカいわないでよ!」
コムッザがネムルッカにとんでもない事をいう。そこへ更なる驚きの声をラメクットが発した。
「きょ、巨人が…と、跳んだぁぁぁ」
「なにぃ!?」
遠くでその巨人は飛び上がったのだ。しかし鳥が飛ぶというのとは趣が違った。翼が生えたわけではないし、ジェットのような物を噴射をしているわけではない。ピョンピョンとバッタのような感じだ。例えるならば階段を2~3段ぐらい飛ばしてジャンプして駆け上がっているのを連続しているという感じだろうか。まさに跳び上がるといったところだろうか?
そのまま彼らは追い続けていると、巨人は点となり、雲の中へと消えていった。
「今の一体なんだったんだろうな?」
「村長が屋敷に入って行ったから今のを動かしているのは村長じゃねーの?」
「まさか…そんな話、孫である俺でさえ聞いたことはねぇんだぞ」
ラメクットとコムッザとアルクッパが話していた。アルクッパは祖父との交流を思い出した。昔話の事は聞いた覚えがあるが巨人は自分が動かすという事はおろか今の巨人の事ですら聞いた事すらなかった。
「ああ!何だありゃぁぁぁ!」
それから暫くすると雲の切れ間から別の巨人が空中から降下してきた。こちらはスカートのようなものをつけていたがさきほどの巨人とは異なっていた。離れていると思ったがその巨人と巨人の二つはこちらに向かってきた。降下してきたスカートの方はライフルを持っておりそれを発射した!が、屋敷から出た巨人は軽々とそれを避けた。
ドゴッ!スカートの巨人が発射した弾は離れた地面に炸裂する。それはかなり遠くに落ちたが地響きとなってジープを振るわせた。
「おいおいおい。あの2つのデカブツ、戦っているぞ!これはやばくないか?」
「逃げるぞ!こんな丸見えのところじゃあぶねぇ!!あの岩の陰でいい。そこに移動だ!」
「うお!エンジンがかからねぇ!」
ジープを無理させすぎてしまったようだ。完全にオーバーヒートしてしまった。
ガコン!
何やら金属音が上空でするとスカートありの巨人がきりもみ回転で迫り来る。その動きは不規則であったが嫌な予感をした。
「こっちに落ちてくるぅ!!」
「うわ!終わりだぁ!」
ネムルッカ以外の4人はジープを飛び出し、身を屈めた。1人だけはボケッと様子を見上げたままであった。
「バカ!逃げろ!」
ガッチィィィン!
何と巨獣は空中で二足で立ち上がり、両腕で一方の巨人を両手で抱えあげていた。彼は見た。空中に留まり、足の裏を見せる巨人を見て息を呑んだ。
「すご…い…」
それは彼の運命を変える出会いであった。



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