出羽三山を霊場とする山岳信仰の中心地、羽黒山
この地では、山中の堂に籠り、苦行と擬死再生を体験する十界修行が行われる
峯入りはこの十界修行を入峯者個々の心身 階梯(かいてい)としてとらえ修行を重ねてゆく。
十界修行という心身の階梯とは、地獄・餓鬼・畜生・修羅(しゅら)・人間
天・声聞(しょうもん)・縁覚(えんかく)・菩薩・如来(仏)をいう十界。
地獄の行は 道場内の清掃や雑務がはじまり
、飢餓の行は 断食に入る。
畜生の行は 修行は「苔の行」ともよばれ、手を洗うことも洗面も沐浴も許されない。
体に苔が着いたように垢(あか)がたまるという。
修羅の行は 人間の闘争心を現す山伏同士が相撲をとる。
人道の行は なんらかの罪を犯してしか生きることが出来ない、
人間にとって唯一の道であるという、懺悔をくり返す行。
厳しい修行の実態は、真夜中、早朝と睡眠時間に関係のない起床と勤行
さらに「南蛮いぶし」とよばれる試練、本尊の前で百回におよぶ「五体投地」の礼
「固打木(こうちぎ)の作法」とよばれる呪術的な所作がある。
魔除けの呪文
山中でのさまざまな障害や危難に際しては、道教に源流をもつ九字護身法が駆使される
ことも多い、山に入る時の魔除けの呪文で、修験道はこれを護身呪に発展させた、
「臨 ・兵 ・闘 ・者 ・皆 ・陣 ・列 ・在 ・前」
(りん・びょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん)
の九字を激しい気合いと、ともに唱える。
修験道ではこの呪文の後半を「陳・列・在・前」と唱え、行者は人差し指と中指を
立てる刀印(とういん)で真横・縦と交互に切りながら、気合いをかけるように
この呪文をとなえる。
とり憑かれたようにふらふら樹林の奥へ入って行く人や顔面蒼白のまま、全身を
硬直させる人、山中で遭難した、まだ成仏できない人の霊が手を引くのだとも言うが
なんでそうなるのか、誰にもわからない、こんな時にはベテランの山伏がその人の
前に立ち九字を切ります。
「ザンゲ、ザンゲ、六根清浄」の唱和をくり返す、
六根は「眼・耳・鼻・舌・身・意」をいう
(げん・に・び・ぜつ・しん)
これは視覚能力・聴覚・嗅覚・味覚・触角・知覚と置きかえることが出来る。