以前、あるエキストラに参加したときのこと
ワタシと隣の立ち位置になった人の間に
スタッフさんが立って
「本番、って声がかかったら
あなたはこう動いて、で、あなたはこんな風に」って感じに
簡単な動きの指示を受けた
カメラの調整かなにかに時間がかかっているのか
ワタシたちの場所での撮影までには少し時間があるようだった
その待ち時間に、彼女とワタシは
スタッフさんに指示された自分たちの動きの確認したり
小声でちょっとした雑談をしていた
ワタシたちが背を向けているわずか数メートルに
大好きな人がいることはもちろんわかっていた
でもワタシたちは敢えて振り返ったり視線を向けることはなかった
たまに発する声だけ聞いてたけどそれは許される範囲だと思う
スタッフさんや共演者さんと何か話し始めると
その生声にどきどきしたりしてた
振り返ってチラ見するくらいは可能だっただろうし
横を向いて視界に入れることも可能だったけど
ファンとして存在するより、その作品の景色として存在したかった
一緒にものづくりをしている、という(自己満足ではあるけど)ことが嬉しかった
後から隣にいた彼女と話したときに彼女も同じような気持ちだったことを聞いた
少しして先程のスタッフさんが話しかけてきた
注意されるようなことは何もしていないはずだけど、と焦ったら
何のことはない、立って待ってることの労いと、さらに細かい動きの指示
そして、まもなく本番という連絡だった
ワタシと隣の彼女は、お互いホッとしながら
言われたとおりの動きが出来るよう復習したりしながら本番を待っていた
と、その時、ワタシと、ワタシの右側に立っていた彼女の間に
すぅーーっと誰かの腕が入ってきた
その腕が肘に当たったけれど
さっきもスタッフさんが腕を伸ばしてきて動きの指示をしてくれてたので
あ、スタッフさんだな、って思った
その瞬間、斜め上から「これ、◯◯だよ」という聞いたことある声
もちろんワタシたちにかけられた声ではなく
共演者へ語っている声
ワタシと彼女はその場で固まった
その声の主は、すぐに元の場所に戻り共演者やスタッフさんと話を続けていた
もし、ワタシか隣の彼女が
好きな人をガン見、とまではいかなくても
その人をちらちら見たりしていたら、この出来事はなかっただろう
そこに大ファンが2人いることを認識していなかったからそんな行動をしたのだと思う
短いシーンだったので、撮影は間もなく終わり
その現場から出演者は次の現場に移動し、スタッフも手際よく片付けして
普通の街並みになった
半袖の季節での出来事
·····なんてね