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お楽しみください。
内容紹介
ふっと、少年は屹立して天空を見つめ、佇む。
そこから、生を席巻する問いの始りと絡みが生じる。
たまさか、天空に重厚濃密な生の構図が閃き震撼するを得る。
作者が生涯のおちこちで体験した天空に舞う幻視を描き出した知られざる傑作。
目 次
一 白いワイシャツ
二 太平洋に雪崩込む丘陵
三 掩体壕
四 黄金の稲穂の波打ち
五 大山
六 志学元年の経験
七 ロッキーズ物語
八 ブレイクスルーな事態
九 童女のようにはしゃいだギリシャ旅行記
十 ソクラテス来迎
Book Review
著者略歴
書誌等
登録情報
フォーマット: Kindle版
ファイルサイズ: 1181 KB
紙の本の長さ: 88 ページ
出版社: 高野 義博; 7版 (2013/11/24)
販売: Amazon Services International, Inc.
言語: 日本語
ASIN: B00G8ULV90
一 白いワイシャツ
或る事件が十三才の時、校庭で起きた。
秋始めのある晴れた日、私は昼食後の満腹感で校庭を歩きはじめた。他の中学生達は既に校庭で遊んでいた。すると急に、風の音と彼らの遊び声が、ボリュームを落とし、あたりが静まり、私は白いワイシャツが風に揺れているさまを見続けていた。それは風の強い日の旗のように、バタバタと音をたてていた。その衣服の白さとバタバタという音だけに、私の意識は集中した。その時、ひどい孤独と共に私は叫んだ。―ああ! 彼らも人間だ、と。
その白さ、バタバタという音は、私の意識に、他人としてそこに「ある……」という感じを、叩きつけた。
その色と音とは今も私の中にある。しかし、他人はそこに「ある」のであるが、それがどのように私に関係しているのか、どういう具合にしてそれはあるのか……等という疑問符をつけられたままの形で、存在している。
その時から、私にとって他人は一つの謎のままである。
私に立ち向かってくるもの、対象、私以外のもの、客観存在、それらが問題として誕生したのである。
しかし、この謎の発生する因となった「白いワイシャツ」の経験は二十二歳頃まで、忘れられていた。偶然目に触れた次の文章が、私に先の経験を想起させたのである。
「彼はあたりを見まわした。すると自分自身の他に何ひとつ見えなかった。そこで彼は始めて叫んだ。―私がいる! と。……それから彼は不安になった。ひとりきりでいると不安になるからだ。」
ブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッド
出所―昭和四十二年 学部卒業論文「ヤスパースの暗号について」四百字詰め原稿用紙一〇〇枚
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