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タタタッ

はじめての哲学

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抜粋 ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット『ブロックチェーン・レボリューション』 高橋璃子訳 ダイヤモンド社 2016

2019年03月11日 | ビジネス
 
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  目 次

Part1 革命が始まる
第1章 信頼のプロトコル
第2章 未来への果敢な挑戦
Part2 ブロックチェーンは世界をどう変えるのか
第3章 金融を再起動する
第4章 企業を再設計する
第5章 ビジネスモデルをハックする
第6章 モノの世界が動き出す
第7章 豊かさのバラドックス
第8章 民主主義はまだ死んでいない
第9章 僕らの音楽を取り戻せ
part3 ブロックチェーンの光と闇
第10章 革命に立ちはだかる高い壁
第11章 未来を創造するリーダーシップ


インターネットに足りなかったのは「信頼のプロトコル」 

 ブロックチェーンの主な特徴は
   分散されていること。
   パブリックであること。
   高度なセキュリティが備わっていること。


 「電球でも心臓モニターでも、そのモノがきちんと機能しなかったり対価を払わなかったりした場合、他のモノたちから自動的に拒絶されるようになるんです。」


 本書ではブロックチェーンが可能にする新たな動きをさまざまな分野から紹介し、それがどのように世界を豊かにするかを見ていきたいと思う。


 モバイル送金サービスのアブラ社は、ブロックチェーンを使った国際送金ネットワークを開発した。


 だかその形態は二十世紀的なヒエラルキー組織ではなく、フラットなネットワークに近い形になるはずだ。


 ドイツは、第二次世界大戦中、「エニグマ」と呼ばれる暗号機械を使って作戦指示を出していた。皮肉と言うべきか、それとも必然と言うべきか、ブロックチェーン時代の最先端のプライバシー技術にもこれと同じ名前がついている。
 MITメディアラボ(所長伊藤穣一)は現在、プライバシーを完全に保証する分散型コンピューティング・プラットフォーム「エニグマ」の開発に取り組んでいる。準同型暗号とセキュアマルチパーティ計算という技術を使い、さらにブロックチェーンを利用して「誠実な行動に対して強いインセンティブを与える」ことで情報の秘匿を実現するプラットフォームだ。


 ブロックチェーンの決定権やインセンティブ構造の中に、不誠実な行動を排除する仕組みが備わっているのだ。


 ブリテンによれば、この「分散されている」という状態こそがブロックチェーンの肝である。発言権が広く分散されているおかげで、悪意ある個人やグループによる乗っ取りが不可能になるからだ。


 ビットコインではプルーフ・オブ・ワークというしくみを取り入れている。時間とコストのかかる作業をした人に発言権を与えるというシステムだ。


  プルーフ・オブ・ワークというしくみ
 ビットコインのネットワークにつながっている各コンピューターは、専門用語でノードと呼ばれる。通常のノードはデータ転送の役目を負っていて、送られてきてデータに異常がないことをチェックすると、そのまま次のノードに受け渡す。
 一方、ノードの中でも、未処理のデータをブロックに記録する役目を負ったコンピューター(およびその所有者)はマイナー(採掘者)と呼ばれる。マイナーはプルーフ・オブ・ワークの仕事をして、ビットコインのブロックチェーンに新たなブロック(情報のかたまり)をせっせと追加していく。
 マイナーたちは、ネットワークに流れて来た未処理データを集めて、新しいブロックの形に加工する。ただし、ブロックを新しくつくるためには、まず難しいパズルを解かなくてはならない。解くのは難しく、答えが合っているかを確かめるのは簡単なパズルだ。パズルが解けた人は答えをネットワークに送信し、参加者たちが答え合わせをして、答があっていれば正しいブロックとして承認される。


 ビットコインではインフレ防止のために、通貨供給量の上限が2100万BTCに設定されている。


 サトシ・ナカモトは、利己的な行動がネットワーク全体の利益になるようにビットコインを設計した。


 所得の分散のためのプラットフォーム


 現代の会計学は、16世紀イタリアの数学者ルカ・パチョーリの発明に端を発している。彼は複式簿記と呼ばれる、とてもシンプルで便利なしくみを考案した。


 複式簿記から三式簿記へ(会計へのブロックチェーン採用)


四半期決算などとぬるいことを言っている会社は、そのうち投資家から見捨てられるかもしれない。


 (二〇一五年) オーガー(Augur)というスタートアップが史上最大規模のクラウドファンディングを立ちあげ、最初の一週間だけで、四〇〇万ドルが集まった。オーガーは誰の手も借りず、中間業者なしで、ブロックチェーンIPOで行った。


 オーバーストック社は、……ブロックチェーン上で株式を発行し、売買できるプラットフォームを作った。


 オーガーは、「集団の知恵」を利用したシステムだ。


 ブロックチェーンを使えば、正確でエラーがなく、違法行為や不正に強く、流動性の高い予測市場が実現できる。


 「われわれの予測市場では、取引先リスクを排除し、集中管理型のサーバーをなくし、ビットコインやイーサーなどの安定した暗号通貨を利用してグローバルなマーケツトを実現しました。すべての資金はスマートコントラクトに保存されるため、誰にも盗まれる心配がありません。」(オーガー)


これまでの金融業界はヒエラルキー的で行動や変化が遅く、巨大な権力にコントロールされた閉鎖的な世界であった。でもブロックチェーンなら、P2Pに支えられたフラットなソリューションが可能で、透明でありながらプライバシーが守られ、すべての人に開かれたイノベーティプな金融が実現できる。


 イーサリアムは二〇一三年、当時十九歳だったロシア系カナダ人のブィタリック・ブテリンによって考案された。


 コンセンシスは最先端のマネジメント科学にもとづく「ホラクラシー」というスタイルを取り入れている。上下関係がなく、コラボレーションに近いやり方で自主的に仕事を決定・実行する組織形態のことだ。


 ホラクシーの基本方針には、「役職ではなく役割」「権限の移譲ではなく分散」「社内政治ではなく明確なルール」「大きな改編ではなく小さな改善の繰り返し」などがある。


 彼等(コンセンシス)が将来的に目指しているのは、人間によるマネジメントを完全に廃し、スマートコントラクトが全体を制御する自律分散型の組織だ。


 これまでインターネットの検索結果は、ある時点でのスナップショットにすぎなかった。ほんの数週間でインデックスが書き換えられ、検索結果が上書きされる。アントノブロスはこれを「二次元検索」と呼んでいる。二次元検索で使えるのは、ウェブ全体を横断する「横」の軸と、特定のウェブサイトを掘り下げる「縦」の軸の2種類だ。
 ブロックチェーンはここに「時系列」の軸を追加する。いつ何が起こって今の状態になったのか、その経緯をすべて把握できるという意味だ。


 「必要であれば何百年でも、何千年でも、完全な情報を保存しておけるのです。」とアントノブロスは言う。


 スマートコントラクトはブロックチェーン上の「契約」である。ただし、紙の契約書と違って、それ自体に強制力のある契約だ。あらかじめ日時や執行条件を設定しておけば、プログラムが勝手にそれを実行してくれる。


 ブロックチェーン技術のすごいところは、ヒエラルキーに頼ることなく、多数の人びと
が安定して仕事をやり通せるしくみを実現できることです。(ヨハイ・ベンクラー)


 自律エージェントという言葉には、いくつもの定義がある。この本では、自分で周囲の
環境を読みとり、状況判断しながら仕事をするデバイスやソフトウェアを自律エ―ジェントと呼びたい。


 これが自律分散型企業(DAE)の世界だ。ブロックチェーン技術と暗号通貨を基盤として多数の自律エージェントが手を結び、まったく新たな企業体を形成していく。


 これは「二重使用の防止」に目を付けた画期的な解決策だ。知的財産のコピーは大きな問題となっていたけれど、ブロックチェーンがその問題をエレガントに解決するのだ。


 とくに、コンピューターやデバイスが無線で直接接続され、おたがいに通信し合って自
律的なネットワークを形成する技術をメッシュネットワークという。網の目のようなネッ
トワークが全体をカバーしているので、どこかが壊れても別のノードがカバーして柔軟に
運用を続けられる。インターネットのインフラを整備することが難しい避地などでの活用が期待される技術だ。メッシュネットワークは中心を持たないため、アクセスポイントなどに依存するネットワークよりも障害に強く、規制や検閲の影響を受けにくいという特徴がある。


 大規模な集中型システムのイメージが強いIBMも、いまやブロックチェーンを無視できなくなったようだ。「デバイス・デモクラシー」と題された報告書の中で、IBMはブロックチェーンの重要性を強調している。

   分散されたIoTというわれわれのビジョンにおいて、ブロックチェーンはトラン
ザクション処理およびデバイス間インタラクション調整のフレームワークとなる。


 インターネットは人と人とをつなげたが、ブロックチェーンはさらにモノとモノをつなげてくれるのだ。


 インテルのミシェル・ティンズリーは、ブロックチェーンに大きく投資する理由を次のように説明する。
「パソコンが広く普及し、生産性は桁違いに上昇しました。パソコンをサーバーやデータセンター、あるいはクラウドにつなげることで、お金をかけなくても手軽にコンピューターパワーを活用できるようになりました。そして今、もうひとつの急速な変化がやってこようとしています。新たなビジネスモデルの登場です。


  創造的破壊の十二のエリア

1 交通
2 インフラ管理
3 エネルギー・水・廃棄物
4 農業
5 環境モニタリングと災害予測
6 医療・ヘルスケア
7 金融・保険
8 書類や記録の管理
9 ビル管理・不動産管理
10 製造・メンテナンス
11 スマートホーム
12 小売業


  創造的破壊の5つのベクトル(IBM)

 ❶リアルタイム検索と支払いによるモノの流動化
 ❷需要と供給の自動マッチング
 ❸リスク評価と信用のネットワーク化
 ❹システム利用の自動化
 ❺クラウドソーシングやオープンコラボレーションを活用したリアルタイムでパワフル
  な価値統合プロセス


 ところが、貯蓄について尋ねると、ニカラグア人はこう言うのだった。
「ああ、貯蓄は別にいいんですよ。みんな豚を持ってるから」


  解決すべきは、貧しい人が金融や経済から排除されている状況だ。


*金融サービスから取り残された人たちを銀行は受け入れるためのインセンティブがない。


 「アフリカの多くの国では固定電話が整備されていませんでしたが、携帯電話がこれを解決しました。一足飛びに携帯の時代になったのです。ブロックチェーンはこれと同じ効果を金融の世界にもたらすでしょう。」(タイラー・ウィンクルボス)


*スマートフォンをATMにかえる技術をアブラ社が開発した。


 アブラはブロックチェーンの分散ネットワークとスマートフォン技術、そして人のつながりという3つの一見ばらばらな要素をひとつに結びつけ、単なる送金アプリではないグローバルな価値交換プラットフォームを実現しようとしている。


 現在、エストニアは世界でも最先端のIT国家として名を馳せている。……。
 エストニアの電子政府は、分散および相互接続性、オープン性、サイバーセキュリティを軸に設計されている。


 エストニアは強固なセキュリティを実現するため、キーレス書名基盤(KSI)というしくみを導入した。これはブロックチェーン上で数学的にデータの真正性を保証する仕組みで、管理者を必要としない署名システムとして注目を集めている。


 とくに若い人は選挙に希望を見出せず、別のやり方でシステムを変えたいと望んでいる。
 彼等の車には「投票するな! やつらに力を与えるだけだ」というステッカーが貼られている。


 典型的なのが銃規制問題だ。アメリカ人の92%は銃の購入者の身元調査を望んでいるのに、潤沢な資金を持つ全米ライフル協会がそうした規制法案をすべて握りつぶしている。「人民の、人民による、人民のための政治」はどこに消えてしまったのだろう。


 スマートコントラクトは自動的に実行される契約だ。人間が恣意的に変えられる部分がないので、結果に対する不安がない。


 ウェブサイト上の情報公開は増えてきたが、ブロックチェーンならリアルタイムの情報を自動的に、正確さが保証された状態で確認できるというメリットがある。


 「メディアラボ以前から、電子通貨にはずっと関心があったんです」と伊藤穣一は言う。「90年代にはすでに、デジキャッシュという初期の電子決済システムのテストサーバーを動かしていました。」


 2つの世界大戦を経て、政治や経済の合意だけでは長期的な平和が保たれないという事実を人類は思い知った。各国の関係は頻繁に、ときには劇的に変化する。持続的な平和を望むなら、もっと深く普遍的なもの、人々の倫理観や物の見方に働きかけていく必要がある。


  革命にたちはだかる高い壁
課題1 未成熟な技術
課題2 エネルギーの過剰な消費
課題3 政府による規制や妨害
課題4 既存の業界からの圧力
課題5 持続的なインセンティブの必要性
課題6 ブロックチェーンが人間の雇用を奪う
課題7 自由な分散型プロトコルをどう制御するか
課題8 自律エージョントが人類を征服する
課題9 監視社会の可能性
課題10犯罪や反社会的行為への利用


 やり直しがきかないという問題は、スマートコントラクトの窮屈さという問題にもつながつてくる。


 大手マイニング企業のビットフューリーは、ビットコインのマイニングに特化したASIC(特定用途向け集積回路)を開発し、エネルギー効率がよく処理能力の高いマイニングマシンを生み出した。


 人々のアイデンティティと社会のルールが厳密にコード化されたら、機械が人々を支配するディストピアが出現するのではないか。


 「金や権力でネットワークを支配しようとする者が現われたら、ビットコインから分岐(フォーク)して新たなネットワークに移行してしまえばいいんです」(キオ二・ロドリゲス)


 理論的には、全マイナーの計算能力の過半数を手にいれると、任意の取引を承認して
ブロックチェーンに登録することが可能になる(51%攻撃)。好きなだけ不正ができるということた゛。


 2015年7月には、(有名な)科学者や技術者が名を連ね、自律型兵器の禁止を呼びかける公開状を提出している。


 「大規模なネットワーク全体のデバイスを適切に管理するしくみを整えておく必要かあります」(ヴィント・サーフ)


シルクロードと言うサイト


「量子コンピューターは、きわめて大きな数字の素因数分解をきわめて高速に実行できると考えられています。そして公開鍵暗号の大半はそういった素因数分解で解ける性質のものです。量子コンピューターが実用化されれば、世界中の暗号インフラは根本的な変化を迫られることになります」(スティーブ・オモハンドロ)


 イーサリアムは正式には「任意の状態をとることのできる、チューリング完全なスクリブティング・プラットフォーム」と説明されている。チューリング完全であるとは、要するにどんな処理でも実行できるということだ。


 (ブロックチェーンのスタートアップを)年金基金の運用先としても注目を集め始めた。カナダ最大の公的年金基金を親会社に持つOMERSベンチャーズというベンチャーキャピタルも、2015年にブロックチェーン企業への投資を開始した。同社のジム・オーランドは「インターネットでいうウェブブラウザのようなキラーアプリ」の登場に期待していると話す。


 国の管理を超えた暗号通貨が流通する中で、中央銀行はどうやって仕事をすればいいのだろう。経済がうまくいかないとき、中央銀行は金融政策で通貨をコントロールしようとする。しかし暗号通過は国が発行したものではないし、世界中に分散して存在しているので、金融政策で動かすことは不可能だ。


 もつともシンプルな方法は、中央銀行がビットコインを保有することだ。


  ブロックチェーン時代のガバナンス・ネットワーク
1 ナレッジ・ネットワーク
2 オペレーション・ネットワーク
3 政策ネットワーク
4 アドボカシー・ネットワーク
5 監視ネットワーク
6 プラットホーム
7 標準化ネットワーク
8 ステークホルダー・ネットワーク
9 移住者ネットワーク
10ガバナンス・ネットワーク


 政策ネットワークがめざしているのは、政府の政策決定能力を奪うことではなく、トップダウンの意思決定システムを相談とコラボレーションのモデルに変えていくことだ。


 すべての試みが生き残るわけではない。でもサトシのビジョンに従っていれば、成功できる可能性はおそらく高まる。



解説
夢のつづき――ブロックチェーンをめぐる自作自演インタビュー
若林 恵(『WIRED』日本版編集長)


ブロックチェーンをちゃんと「理念」として捉えた本っていうことですかね。


 ……、「会社」というものがない世界を実現すべく、ブロックチェーン・テクノロジ―を使ったお仕事プラットフォームを作っている元クリエイタ―やら、……。


 でも、ブロックチェーンというコンセプトは、世界をまったく違った目で捉えることを可能にしてくれるし、現状のシステムやパラダイムのオルタナティブを提示し、そこに新しい「夢」を見ることを可能にもしてくれるわけです。


 これは彼(タプスコット)のTEDの講演の冒頭でも語られることで、この本の冒頭でも書かれていますけど、要は、今までのインターネットっていうのは、「情報のインターネット」でしかなかった、と。しかも、そこでやり取りできる情報は、基本的には「コピーされた情報」でしかなかった。


 インターネットが一般化した時に、多くの人がその実現を夢見た、P2Pで分散的にネットワーク化された個が、中央集権的に編成された世界にとって代わるという未来は、実は言うほど実現されていなくて、実際インターネットが捉えるものは、ごくごく限られたものでしかなかったんですね。逆に言うと、インターネットのポテンシャルは、むしろブロックチェーンという技術・コンセプトによって、むしろ飛躍的に拡大・拡張することができる、ということであって、タプスコットさんが、「ブロックチェーン・テクノロジーこそが次世代のインターネットの中心部分なのだ」と語ること、もしくは大物VCのマ―ク・アンドリーセンのような人が、これをして「インターネット以来の衝撃」と語ることの真意は、まさに、そこにあるんですよね。





*二〇一九年三月十一日抜粋終了。
*ソニー出井さんが(朝日新聞・2019.3.10 平成経済インタビュ―)で、「IT化遅れ 気づけば米中に敗北」の発言の通り、日本経済はどん詰まりにきている。



抜粋 野口悠紀雄『入門 ビットコインとブロックチェーン』 PHPビジネス新書 2018

2019年02月25日 | ビジネス

 

 ビットコインの残高は、2017年10月末で約1665万ビットコインですか、合計2100万ビットコインを上限とすることが最初から決まっています。2140年頃に
2100万ビットコインとなり、そこに達すれば新規発行は終了し、それ以上は増えません。


 いま世界で大きな変化が生じており、日本が乗り遅れています。日本でこうしたサービスが発展しない理由としては、様々なことが考えられますが、おおきな原因は規制です。


 規制が新しい事業を妨げる場合が見られます。技術的に可能であっても、規制のために実現できないというケースが少なくないのです。


 ところが、ビットコインにおいては、グループの考えの違いを強権的に解決するのではなく、民主主義的に決定するシステムになっています。このため、なかなか決まらないのです。
 このことは、ビットコインの仕組みに欠陥があることを意味するわけでありません。従来の組織とは違う原理によって運営される事業が、いま試練に直面しているということです。


 組織で働くことを前提にするかぎり、現状を大きく変えることは不可能です。フリーランシングこそが、究極の働き方改革です。


 「ナローバンク」という考え方があるのですが、これは銀行に信用創造を認めないという考え方です。


 アイスランドでも、リーマンショックの際に、金融危機によって国が破綻しかけました。その反省に基づき、銀行の信用創造によるバフルを防ごうとする考えです。これを「統治通貨」といいます。


 シカゴ・プランの100%準備制、ナローバンク、統治通貨


 フリードマン「K%ルール」


 ハイエク『貨幣の非国有化』


 あるデータの集まりをハッシュ関数に入れると、「ハッシュ」という数が出ます。


 素因数分解とは、6なら「2X3」、10なら「2X5」というように、ある数を素数の積に分解すること、つまり、「正の整数を素数の積の形で表わすこと」です。


 つまり、素因数分解は「ある方向に計算するのは簡単だが、逆方向に計算するのは著しく難しい関数」です。こうした性質を持つ関数を「一方向関数」と呼びます。


ビザンチン将軍問題
 信頼できない者同士が集まって共同作業を行い、それでも裏切者に陥れられないためには、どうしたらよいか?


 ブロックチェーンは、……性善説ではなく、「悪いことをしたら損するから、やらない」という性悪説に立った仕組みです。


 ドン・タブスコットは、「従来のインターネットが情報のインターネットであるのにたいして、ブロックチェーンは価値のインターネット」といっていますが、その通りです。(『ブロックチェーン・レボリューション』


 ブロックチェーンのシステムでは、相手の組織を信頼する必要はありません。仕組み自体がデータの正しさを確立できるので、これまでのように信頼ある組織に頼らずに経済的な取引ができるようになったのです。これが重要なポイントです。


 社会革命と呼ぶべきパブリックブロックチェーン(P2P)て、ブライベートブロックチェーン(従来型インターネット)を「革命」と呼べるかどうかは、疑問です。


 スマートコントラクトとは、コンピューターが理解できる形の契約です。
 「あらかじめ決められている契約に従い、ブロックチェーンを用いて取引を自動的におこなう」


 ブロックチェーンの活用に当っての大きな課題は、現行の法規制が、ブロックチェーンによる新しい事業形態を想定していないことです。


 ブロックチェーンを活用した日本企業
  ソニー・グローバルエデュケーションの「世界算数」というテストを行っている。


 (現行規制は)消費者保護を名目としてうたいながら、実態的には既得権益保護になっている。


Iotのために開発されたIOTAと呼ばれる新しい仕組みのチェーンが2016年7月にスタートし、注目されています。(ブロックなし)


ブロックチェーンを活用する事業は、経営者がいない事業です。これが新しい組織の形である「DAO」です。これは「分散自立型組織」の略です。


 世界がフラット化しなかった最も本質的な理由は、これまでのインターネットに、何か重要なものが欠けていたことです。(真正性の証明が出来なかった)


 従来の社会の基本的な仕組みは、事業は人間が運営するという大前提にたっています。しかし、DAOはその前提を覆してしまうのです。





*二〇一九年二月二十五日抜粋終了。
*ナカモトサトシの論文
 http://www.kk-kernel.co.jp/qgis/HALTAK/FEBupload/nakamotosatoshi-paper.pdf
*「経営者のいない持続的事業」というコンセプトが成立する世界か出現したのだ。




抜粋 ジム・ロジャーズ『お金の流れで読む日本と世界の未来』世界的投資家は予見する 大野和基訳 PHP新書 2019

2019年02月05日 | ビジネス


 重要なのは、「歴史は韻を踏む」ということである。これは作家マーク・トウェインの言葉だ。


 本当に成功したければ、人とは異なる考え方をしなければならない。人と同じように考えている限り、大きな成功を収めることは恐らくないだろう。


 現在、世界の負債は西洋に、資産は東洋にある。


 日本・中国は外貨準備高で世界一位・二位


 こうした状況を鑑みるに、五年後のアジアで最も幸福な国になるのは、朝鮮半島の統一国家だろう。


 外国人を排除し、門戸を閉じた国が衰退の一途をたどるということを、歴史は何度でも教えてくれる。


 借金(約1100兆円)をこれだけ増やしても平気なのは、返済するのは自分の世代ではないと考えている(安倍政権)証拠だ。






 紙幣を刷りまくっても駄目なのだ。アベノミクスが成功することはない。安倍政権の政策は日本も日本の子供たちの将来も滅茶苦茶にするものだ。いつかきっと「安倍が日本をダメにした」と振り返る日がくるだろう。


 移民の受け入れ方をコントロールしなければいけない。短期間でたくさん移民を受け入れすぎないように調整しなければならない。


 日本の農業の問題は、政府によって保護されすぎているという点にある。


 日本ほどクオリティに対して「抑えがたい欲望」を持っている国はほかに思いつかないのだ。その姿勢こそが日本を偉大な国にしたと言える。


 あるいは、古民家のチェーン事業を始めるのもいい。


 日本にもほど近い朝鮮半島――。この地は、これから激動の時代を迎えるだろう。韓国と北朝鮮が統一されるからだ。





 ある意味、(中国の体制は)アメリカの大統領選よりも公平な制度だ。


 対して日本やアメリカ、その他幾つかの資本主義国は、銀行の国有化や企業救済など、まるで「社会主義化」したような政策を打ち出している。


 「破産なき資本主義は地獄なきキリスト教」


 歴史を振り返れば、貿易戦争がプラスに働くことなどないとわかる。


 米株式市場で上昇しているのはFAANGの株だけ。






 日本も、残念ながら同様だ。五〇年もすれば日本人はこの世からいなくなってしまうのではないかと私は危惧している。


 AIやブロックチェーン技術により、いま存在している銀行は消えるだろう。


 将来、金銭のやり取りはすべてコンピューターを介して行われるようになるため、通貨はいらなくなる。





 ブロックチェーンは仮想通貨とはまったく異なる新技術で、前途有望だ。社会に大だ変革をもたらすことになる。


 アフリカには、つい最近まで電話がなかった。欧米やアジアではかつて黒電話を使っていたが、そういう電話もアフリカには広まなかった。それが作近、アフリカでは一気にスマートフォンが普及している。電線を引くなどの途中経過を抜かして、一足飛びにスマホ社会になったのだ。


 間違いなく言えるのは、いまの時代、インターネットとAI、ブロックチェーンは信じられないほど重要な位置を占めているということである。


*ブロックチェーン(英語: Blockchain、ブロックチェインとも[1][2])とは、分散型台帳技術[3]、または、分散型ネットワークである[4]。ビットコインの中核技術(サトシ・ナカモトが開発)を原型とするデータベースである。ブロックと呼ばれる順序付けられたレコードの連続的に増加するリストを持つ。各ブロックには、タイムスタンプと前のブロックへのリンクが含まれている。理論上、一度記録すると、ブロック内のデータを遡及的に変更することはできない。ブロックチェーンデータベースは、Peer to Peerネットワークと分散型タイムスタンプサーバーの使用により、自律的に管理される。フィンテックに応用されるケースでは独占や資金洗浄の危険が指摘されることもある。(ウィキペディア)


 いま、私たちの世界は大変化のただ中にある。それを怖れるだけではなく、実際に訪れ、あなた自身の目で見てほしい。それはきっと楽しく心躍る経験となるであろう。





*平成三十一年二月五日抜粋終了。



抜粋 サイモン・シン『暗号解読』上下 青木薫訳 新潮文庫 平成二十七年

2019年01月09日 | ビジネス

 
 情報内容が敵に漏れるのを防ぐという点で、ステガノグラフィーよりもクリプトグラフィーの方が強力である。
 クリプトグラフィー、すなわち暗号自体にも転置式暗号と換字式暗号という二つの異なる方式がある。


 メッセージを暗号化する前に、わざと綴りを間違うという方法がある。


 シェルビウスの発明した機械は「エニグマ(謎)」と呼ばれ、史上最も恐るべき暗号システムになってゆく。


 しかしクルト・ゲーデルは、論理的証明の埒外にある問題、いわゆる決定不可能な問題が、少数とは言え存在することを示したのである。


 機械式暗号の真の強さと能力を示したのは、イギリスの陸軍および空軍が使用したタイペックス(またはタイプ・エックスとも呼ばれる)暗号機と、アメリカ軍が使用したシガバ(またはM-143-C)暗号機である。この二つはどちらもエニグマ機よりも複雑だったうえに、使い方も適正だったため、戦争中には解読されることが無かった。


 外部の人間にとってナヴァホ語がどれだけ難解かを熟知していたジョンストンは、ナヴァホ語が(他のどのアメリカ先住民の言葉でもよいが)解読不能の暗号になることに気が付いたのである。


 ナヴァホ暗号が難攻不落だったのは、ナヴァホ語がアジアやヨーロッパのどの言葉ともつながりをもたない、ナ・デネ系言語に属するからである。


 ハワード・コナー少将は、「ナヴァホ兵がいなかったら、海兵隊は硫黄島を占領できなかっただろう」と語った。


 ナヴァホ暗号の成功は、ある者にとっては母語であるものが、それを知らない者にとってはまったく意味をなさないという単純な事実によっている。日本軍の暗号解読者に降りかかった難題は、忘れられて久しい言語、もはや使う者のない文字で綴られた言語を解読しようという考古学者の仕事に多くの点でよく似ている。


 三つ目の障害は、キルヒャーの知的遺産だった。そのせいで考古学者たちは当時もなお、エジプトの文字は表音文字ではなく、表意文字だと思い込んでいた。ヒエログリフを表音文字として解読しようなどとは、考えてみることさえしなかったのである。


 事実、線文字Bの解読は、考古学上のあらゆる解読の中でも最も偉大な業績として広く認められている。


 ヴェントリスもまた、戸惑うほど多種多様な記号の中にパターンと規則性を認めることが出来た。この資質、表面的な混乱の中に秩序を見抜くこの力こそは、あらゆる偉大な人物の仕事を特徴づけるものなのである。


 コンピューターは暗号化のプロセスを様変わりさせたが、暗号分野における二十世紀最大の革命は、鍵配送問題を克服するテクニックが開発されたことだろう。実際、鍵配送問題の解決は、二千年以上前に単アルファベット暗号が発明されて以来最大の快挙とされているのである。


 「みんなと同じになんかなりたくないや」マーティン・ヘルマン


 しかしいずれにせよ、鍵を配送せずにはすみそうにない。二千年の長きにわたって、これは暗号作成法の(公理)――すなわち反駁の余地のない真理――だと考えられていた。ところが、この公理に疑問を投げかけるような思考実験があるのだ。


 別の例として、卵を割るという操作がある。卵を割るのは簡単だが、それをもとに戻すのは不可能である。このため一方向関数は、(ハンプティ・ダンプティ関数)と呼ばれることもある。


 根本的な問題は、政府は暗号を法律で禁止すべきか否か、という点である。暗号の自由があれば、犯罪も含めてすべての人が電子メールを安全に送れるだろう。一方、暗号の使用を制限すれば、たしかに警察は犯罪者の通信を盗聴できるかもしれないが、その代わりにわれわれ一般市民の通信まで、警察ばかりか誰にでも盗聴されてしまうだろう。


 会議の講演を聞いていたドイチェは、それまで見過ごされていたあることに気が付いた。すなわち、「すべてのコンピューターは、本質的に古典物理学の法則に従って作動する」という暗黙の仮定が置かれていることに気づいたのである。しかし、ドイチェは、コンピューターは古典物理学ではなく、量子物理学の法則にしたがうべきだと考えた。なぜなら、量子の世界の法則は古典の世界の法則よりもいっそう基本的だからである。


 つまり量子論は、現行のあらゆる暗号を解読してしまうコンピューターの母体である一方で、(量子暗号)という解読不能の暗号の心臓部にもなっているのである。





*二〇一九年一月九日抜粋終了。
*著者が『フェルマーの最終定理』と同一人とは知る由もなしに読み始めて、量子暗号の空間まで案内されたが、内容理解は歯がたたないままに終わった。
*こういう類いの頭脳明晰な人というのが世の中にはいるものなのだ。






抜粋 宮本光晴『変貌する日本資本主義』――市場原理を超えて ちくま新書 2000

2018年12月08日 | ビジネス
 
このように状況に適応することを課題とする、そのためにモデルを求めてそれに適応することを課題とするというのが日本型システムであれば、このようなシステムのあり方こそが「改革」を必要とするのではないか。なぜなら、現状適応能力だけに頼るなら、現状の変化のたびごとに右顧左眄を繰り返す以外にないからであり、これがまさしく九〇年代の「失われた一〇年」であった。

*理念の確立こそ求められる。


 おそらく正鵠を射ているのはケインズの言葉である。すなわち「血気」の衰退であり、それをケインズは、将来の期待に関わる心理の状態すなわち「確信」の問題として提示した。


 バブルの崩壊後、改革運動とは慣行の破壊のことであった。


 要するに、この間行ってきたことは、ますます増大する不確実性の下で、確かであったはずの基盤を次々と削ぎ落とすことであった。この結果、企業も家計もそして金融機関も将来を見通す手掛かりを失い、全くの頼りなさの中に投げこまれることになる。


 それは「無条件、無制限、遠慮会釈のなさ」をその行動の原理とする。このような資本主義を作り出したのが、まさしくヨーロッパ近代の「拘束」から抜け出したアメリカ人の精神生活であり、そこにあるのは子供の気分、植民者の気分、技術的人間の気分というものである。これがゾンバルトの見解であった。


 これに対して、内部労働市場とは異なるもう一つの制度化された雇用システムがある。それが職業別労働市場であり、それは個々の企業の外部に組織化された職業訓練と技能資格の制度化から成り立っている。つまり、個人は当該の仕事に関して、それに必要な技能の保有者として雇われる。このような職業別労働市場を最も強く組織化したのが、ドイツの雇用システムであり、工場の技能者から銀行の出納係まで、職業ごとに公式の教育訓練機関が制度化される。その修了者には技能資格が認定され、その上で資格保有者として雇われる。


 要するに雇用保障の観念を、日本の内部労働市場は企業を単位として制度化し、ドイツの職業別労働市場は職業を単位として制度化する。


 これに対して、アメリカの専門職の雇用システムは、個人の業績に応じて雇用が決まり報酬が決まるという意味で、文字通り個人主義的なシステムと見なすことができる。個人主義を標榜することにより、雇用保障の観念は完全に否定されると言ってもよい。


 すなわち一方での大量の雇用破壊と、他方でのそれを上回る雇用創出であり、これによってアメリカ経済は超完全雇用の状態にある。


 いずれにせよ内部労働市場の領域は縮小され、一方での低賃金の外部労働市場と、他方での高賃金の専門職の雇用とに分極化する。これが現在のアメリカの雇用システムであれば、現象としては、外部労働市場の意味での雇用の流動化と専門職の意味での雇用の流動化の双方が進むことになる。ここから流動型の雇用がアメリカのシステムであるといった印象が広がることになる。しかしそれは、定着型の雇用システムの破壊の結果でもあるということを見逃すべきではない。ここからの帰結は、内部労働市場が生み出した中間層の没落となる。


 市場の競争と淘汰のメカニズムそのものがグローバル資本主義のガバナンスとなる。この意味で地球規模での市場のガバナンス、すなわち地球規模での「市場主義」の成立が、グローバル資本主義だということになる。


 すなわち、経営者企業の「見える手」をもって市場を組織化する、政府の「見える手」をもつて市場に介入する、これが経営者資本主義であれば、この二つの「見える手」を否定するのがグローバル市場に他ならない。
 このとき経営者企業を襲うのは、財とサービスのグローバル市場の「大競争」であり、それは競争と淘汰の「見えざる手」となって現われる。すなわち地球規模での技術と価格の競争が、経営者企業の「見える手」を無効とする。この意味で日本の経営者企業だけではなく、すべての国の経営者企業は、グローバル市場の「見えざる手」にどのように対応するのかが問われている。


 いずれにせよ政府の退場を迫るのがグローバル市場の声となる。


 情報技術革新の「大競争」の原動力となるのがアメリカのベンチャー企業であれば、その「大競争」に勝ち残るべく、既存の組織の再編あるいは再構築に先行しているのがアメリカの経営者企業でもある。あるいは価格の「大競争」に生き残るべく、コスト削減のための激しいリストラに邁進しているのがアメリカの経営者企業でもある。さらに私的個人の営利追及の自由と自己責任を、市場と言うより社会の原理として掲げるのがアメリカの資本主義であり、同じく資本利益の最大化が現在のアメリカ企業のコーポレイトガバナンスであることも間違いない。


 雇用した労働者の内部訓練と内部昇進を制度化する内部労働市場の形成において、日本とアメリカの経営者企業は類似する。と同時に、二つの間には決定的な違いがある。すなわちアメリカの経営者企業は、内部労働市場と切り離して専門職の雇用を組織化した。それは個人の業績に基づいて雇用が決まり報酬が決まるという意味で、言葉の本来の意味での業績主義と市場原理に基づく雇用と見なされる。


*社員→非正規社員の体系から非正規社員(専門職)→社員の体系への移行


 雇用と設備と債務の過剰が日本企業の低収益の原因であり、ゆえにそれぞれの徹底したリストラが不可欠である。それを実行できるのは外部から登場した経営者であるのに対して、日本企業は依然として経営者の内部昇進に汲々とし、そのため組織の再編や事業の再構築はいまだ不徹底のものでしかない。これが日本の経営者企業に向けられた批判の全てであるようだ。


*ROE意識の醸成が急務であろう。


 グローバル資本主義あるいは市場原理の資本主義を組み込めば組み込むほど、「セーフティネットの政府」の範囲は拡大する。グローバリズムを唱え、国境をなくせと叫ぶことの結果、皮肉なことに、政府の範囲の拡大を見ることになるのである。


 おそらくこの混乱は、市場の競争と淘汰を唱える一方でその救済を叫ぶことにある。あるいは市場原理を唱える一方でセーフティネットを持ち出すことにある。このような混乱から抜け出るためには、淘汰と救済の二分法から抜け出ることが必要であり、そのためには経済を構成するさまざまな制度や組織や慣行の中でセーフティが確保されるということの正確な認識が必要である。それは日本型システムだけではなく、すべての国のシステムはそのように自らを形づくっている。これが要するに資本主義システムをガバナンスすることにほかならない。


 あとがき


 それは市民によって政府と大企業がコントロールされてのことではない。市場が政府と大企業をコントロールする、市場が資本主義をガバナンスする、これが今日の「変貌する資本主義」の姿となる。かくして自由放任の「終焉の終焉」といった気分が全ての国の資本主義を覆うことになる。





*二〇一八年十二月八日抜粋終了。


抜粋 佐藤航陽『未来に先回りする思考法』 ディスカバートゥエンティワン 2015

2017年12月30日 | ビジネス


はじめに

 宇宙船? そんなものは夢のまた夢だ。


 「飛行機の実現までには百万年から一千万年はかかるだろう」
ニューヨーク・タイムズがこの記事を掲載してわずか数週間後、ライト兄弟は空を飛び、この予測を覆しました。


 なぜ、人々はこうも繰り返し未来を見誤るのでしょうか。
 その原因は人々の「思考法」にあります。人は、今目の前で起きていることからしか将来のことを考えることができません。……現在の景色という「点」を見て考える未来予測はだいたいにおいて外れます。


 彼らは現在という「点」を見て考えるのではなく、長い時間軸から社会の進化のバターンをとらえ、その流れを「線」としてつなげて、意思決定をしています。


 バターン認識能力 点ではなく線で考えろ



第1章 テクノロジーの進化には一本の「流れ」がある


 すべてのテクノロジーは、何らかの形で人間の持つ機能を拡張してきました。


 深層学習


アウターネットの動向
 たしかに、いつ終わるかわからない各国の通信キャリアによるネット回線の整備を待つよりも、宇宙空間から自分たちでネットを提供してしまうのは合理的な判断です。


 一般的に宇宙とは、地上から100キロを超えたあたりからを指すので700キロ以上はなれた衛星に対しては、国家も制空圏を主張できません。


 ラプラスの悪魔


 結局、アイデア自体は、将来における「点」なのです。そのときは突拍子もないように思えても、時間の経過とともに、技術面や価格面でのブレイクスルーによってピースが埋まっていき、いつかどこかで進化の「線」に取り込まれます。問題はそのタイミングがいつかということです。


タイミングが早すぎれば、コスト、技術、品質、倫理などの面で社会に受け入れられることはなく、逆に遅すぎれば成果はすべて他人に持っていかれてしまいます。


 一般的には、電気を発明したのはエジソンとされていますが、現在主流になっている交流電流を発明したのがニコラ・テスラです(エジソンが発明したのは直流電流です)。


ニコラ・テスラは、19世紀中期から20世紀中期の電気技師、発明家である。交流電気方式、無線操縦、蛍光灯、空中放電実験で有名なテスラコイルなど多数の発明や、「世界システム」なる全地球的送電システムなど壮大な提唱もあり、磁束密度の単位「テスラ」にその名を残している。 ウィキペディア


 (テスラの)無線送電の技術は、2015年3月に日本の三菱重工が実験を成功させています。


 テスラ1904年の発言
「ポケットに入れて持ち運べる安価で操作の簡単な装置」



第2章 すべてを原理から考えよ


 イスラエルのイノベーション能力
 「必要性Necessity」


 イスラエルでは危機が日常です。(ハングリー)


・要は、今の日本社会には、イノベーションが起きるだけの「必要性」がないのです。
 ・イノベーションをする「差し迫った必要性」が日本社会には存在していないのです。
 ・本当に「イノベーション」が必要なのは、国家や国民単位でしか物事を捉えられない価値観
だと、私は考えています。


 情報も人も自由に行き来が可能な現代において、実質的に国境はすでに消えつつあります。


 今の時代に当然とされているものを疑うことができるという能力は、未来を見通す上で重要な資質です。


 これまでつながっていなかったノード同士が相互に結びつくことで、情報のハブであった代理人の力が徐々に失われていくというのが、これからの社会システムの変化を見通すうえでの重要な原理原則です。


 テクノロジーが境界線を「溶かす」


 たとえば、ビットコインは数世紀触れられることのなかった国家の通貨発行権にメスを入れるものです。


テクノロジーが溶かし始めている境界線
・Google 検索システム
・Facebook 信頼性担保


 この資本主義の原理に則れば、巨大化したグローバル企業は、いつしかこれまで各国家が満たしてきた需要まで、自らの成長のために侵食していかざるをえなくなります。


 「社員」というものもまた、テクノロジーにより解体されうる、過渡期のシステムにすぎません。


 インターネットや金融といった地理的な要素に縛られない産業が経済の中心になるほど、領土という要素の重要性は下がっていきます。


 2014年に香港で起こったデモをきっかけに有名になった、Firechatというアプリをご存知でしょうか。このアプリの特徴は、メッシュネットワークという携帯端末そのものを経由したネットワークを通じて、通信会社の回戦を使わずにコミュニケーションを交わせる点にあります。これにより、政府はついにインターネットを遮断してもコミュニケーションを封じることも、検閲することもできなくなりました。


FireChatはインターネット接続がない場所や、携帯電話の受信圏外にいても使用することができます。飛行機、公共交通機関、クルージング船、キャンパス、混雑したイベント会場など、どこでも使用できます。必要なのはFireChatを使用している数人のユーザーだけです。

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 結論から言えば、各国政府が警戒しているのは、GoogleやAmazonという単体の企業ではありません。背後に存在するアメリカです。


 今、上位の先進国が警戒するのは、となりの小国ではありません。場所を選ばずビジネスができるグローバルIT企業なのです。


 NSA=人員10万人、5兆円という予算規模をもつアメリカの諜報機関


 政府が得意な分野は政府がやり、企業が得意な分野は企業に任せる。国家と企業は競合になる一方で、互いの境界線はいまや融解し、共生関係を構築するようになりつつあります。「国家の企業化」と「企業の国家化」の両方が、現在進行形で進んでいるのです。


 ビットコインの登場は、中央銀行というシステム(通貨発行権)そのものを否定するものであったため、世界に大きな衝撃をもたらしました。


 つまり、通貨発行権を失うことは徴税権を失うことに近いのです。結果として、国家はそのあらゆる権力の源泉をうしなってしまうことになります。だからこそ国家は、これだけビットコインを怖れているのです。


 これから企業や組織が電子マネーやポイントを発行して独自の経済システムを構築していくと、国家はますます国民の資産状況や収入状況を正確に把握することがむずかしくなってきます。


 エストニア=選挙をスマホで実施
 シンガポール=政府自ら投資事業


 中抜きされる選挙と議会=面倒な調整や決議や予算獲得などのプロセス⇨議員や官僚不要


 実際はビジネスも政治も、目的はまったく一緒で、そのアブローチが異なるだけです。何かに困っている人たちの二―ズを汲み取り、その解決策を提示するというプロセスは共通しています。


 「社会起業家」とい言葉が普及してきたのもこの流れのひとつです。これまでは政治の領域で解決されていた問題を、起業家がビジネスの領域で解決しようとする試みが、最近増えてきています。


 本当に考えなければいけないのは、どのようなシステムであれば民意をスムーズに汲み取れるか、社会の問題を効率的に解決できるかです。惰性だけで従来のやり方を踏襲し続けることに意味はありません。今考えるべきは投票率を上げる方法ではなく、時代に合致しなくなったシステムに変わる新しい仕組みの方でしょう。


 たとえば、SNSは今まで定量化できなかった「他者からの注目」という価値を数字に換算することを可能にしました。
 月間の利用者が1000万人以上いるけれども、売り上げは0円というアプリがあったとします。このアプリを開発する企業は、たとえ売り上げが0でも数百億円の企業価値がつく可能性があります。


 インターネットが誕生する前は、こういった信用や注目度を正確に数値化することが困難でした。しかしネットの普及で様々な価値がデータとして認識されることで、それらのデータ自体が、まるで通貨のような働きをし始めています。


 しかし、現在の会計基準では情報(サ―バー上のログ)を資産として計上することは出来ません。Googleの本当の意味での資産は財務諸表には載せられないのです。


 財務諸表という、すべてがデータ化される時代の前に作られた指標だけでは、すでに正確な企業の価値を測れなくなりつつあります。データを扱う企業にとっては、情報=価値なのです。


 今、私たちの社会は情報技術の普及とともに「貨幣」を中心とした資本主義から貨幣換算が難しい「価値」を中心とした社会に移行しつつあります。


 ここでは、資本主義の次にやって来る社会を、ひとまず便宜的に「価値主義」とでも呼んでおくことにしましょう。


 ユヌスは、マイクロファイナンスという手段でそれを収益の出る、持続性のあるビジネスに置き換えました。


 経済的な活動には「公益性」求められるようになり、政治的な活動にはビジネスとしての「持続可能性」が求められる。


 あるシステムは、社会に浸透してしばらく時間が経つと「どんな必要性を満たすために生まれたのか」という目的の部分がかすんでしまい、そのシステム自体を維持することに目的がすり変わってしまうというのも、繰り返し見られるバターンです。


 目的が形骸化したシステム(政治)に対しては、目的をより効率よく満たす手段(ソーシャルビジネスなど)への迂回が一層進んでいくでしょう。



第3章 テクノロジーは人類の敵なのか


 今後はテクノロジーが、労働など今まで人間にとっての存在理由だったものを奪っていき、止まらないイノベーションにより自分の存在価値が否定されていくような不安を抱く人が増えてくることでしょう。


 であれば、労働することにこだわらず、労働所得への依存度を下げていく方向性も考えられるのでは、というのがそのご指摘への答となります。


 テクノロジーによる効率化は労働者にとっての収入を減らす可能性があるのと同時に、消費者に対してのコスト削減というメリットももたらします。


 理論上はネット上に限らず、あらゆるサービスは価格競争の末、無料に近づいていきます。


 現在の労働環境を無条件に「当たり前」と受け入れる議論に、意味はありません。それらは、次の「当たり前」が作り出されるまでの過渡期の話なのです。


 Facebook側にとっては、自社サービスの利用者が増えるのであれば、長期的には収益がコストを上回るという算段があるからです。


 このように政府を通さない形でベーシック・インカムを実現するためには、次の五つが欠かせません。

❶資本主義の持つ欲望のエネルギー
➋行政の持つ公益性
❸市場競争による形骸化抑止
❹営業利益による持続可能性
❺ITの持つコストメリットとスケーラビリティ


 シンギュラリティ=人工知能が人類の知性を超えるポイント


 テクノロジーとは、単独で存在するものではなく、最終的には人間そのものと融合することが運命づけられたものです。


 しかし、進化の歴史を見ていけば、テクノロジーによって、私たち人間自身もまた次の進化のプロセスに向かって動かされていると考えられるのです。


 カーブのいう「かっての直線的思考プロセス」である。冷静で、集中しており、気をそらされたりしない直線的精神は、脇へ押しやられてしまった。代わりに中心へ躍り出たのは、断片化された短い情報を、順にではなくしばしば重なり合うようなかたちで、突発的爆発のようにして受け止め、分配しようとする新たな種類の精神である。


 ハッカー集団は、ハッキングという脅威を活用して世界の抑止力になろうと考えているのでしょう。ちょうど国家が警察権や軍事力によって犯罪の抑止力になっているように。


 進化は「必要性」によって生み出されるとすれば、最も強い「必要性」は生存欲求です。生死がかかっている戦争では、最も強い「必要性」が発生し、結果的に技術は飛躍的に進歩します。


 推奨→アルバート=ラズロ・バラバシ『新ネットワーク思考』


 人々の持つ価値観が切り替わるタイミング、それは技術の実現する利便性が、人々の抱く不安を上回った瞬間です。



第4章 未来に先回りする意思決定法


 時代の急速な変化によって、かつて自分が選んだ道が最適解ではなくなっているということはたびたび起こります。


 世の中の流れを読み、今どの場所にいるのが最も有利なのかを適切に察知する能力


 より大きな規模で何かを成し遂げる場合には、世の中の構造を理解し、風向きを読む力の方がより重要になってきます。


 未来に先回りする重要なこと
❶常に原理から考える
➋テクノロジーの現在地を知る
➌タイミングを見極める


 物事がうまくいかない場合、バターンを認識するために必要な試行回数が足りていない場合がほとんどです。


 一回一回の成否に一喜一憂せずに、パターンと確率が認識できるまで「実験」だと割り切って量をこなすことが重要です。

ロジカルシンキング
 構築できる「ロジック」は、その人がかき集められる情報の範囲に依存するという危うさをはらんでいます。


 2010年→インターネットの中心がPCからスマホへ、Webからアプリへ移動


 「後付けの合理性」


 ひとたび動き出せば、新しい情報が手に入り、「認識」は随時アップデートされていきます。


 将来的に新しい情報が得られるであろうことを考慮に入れた上で、一定の論理的な矛盾や不確実性をあえて許容しながら意思決定を行うことが、未来へ先回りするための近道です。


 ただ、取り組んでいるうちにその人の知識だったり能力だったり、さまざまなパラメータ(変数)はアップデートされていきます。やる前にはわからなかったことがわかり、新しい知識を学び、頭をひねって工夫しているうちにあたらしい能力が身についたりします。結果として、自分が当初考えていたことよりも多くのことがよくきるようになっていた、というのはよくあることです。


*アップデートされるもの


 時間の経過とともに自分の認識がアップデートされる


 ルールのあるとこでは戦わない


 シリコンバレーの死屍累々


 Appleの垂直統合型ビジネスモデル
 Microsoftの水平分業型ビジネスモデル
 AndroidのOS無償配布


 私たちはただ、波がくる少し前に未来に先回りして待ち受けていただけです。


 周りの人たちが一度話しただけで、理解できるようだったら、考え直してください。逆に、首をかしげられたり、うまくいかなさそうだと否定的なリアクションをしてきたようなら、そこにこそチャンスはあります。


 政治(封建制→民主主義)においても、経済(物々交換→貨幣)においても、テクノロジー(石器→コンビューター)においても、効率の低いところから高いところへ、ひとつの流れに沿って進んでいるにすぎません。


 私たちにできることは、顕在化している課題をできるだけ早く解決する方法を見つけ、ひとつでも多くの不幸をなくすことぐらいでしょう。



おわりに――評論家になるな、実践者たれ


 すべての仮説と考察は実際に毎日の生活の中で活用し、本当かどうかを検証してみる必要があると、私は思っています。そして、もつともシビアにフィードバックを返してくれるのが、ビジネスというフィールドでした。


 変化を察知し、誰よりも早く新しい世の中のパターンを認識して、現実への最適化を繰り返しましょう。





*佐藤航陽=株式会社メタッブス代表取締役社長(早稲田・法科中退)
*平成二十九年十二月二十九日抜粋終了。