竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

使用済み核燃料再処理の真実

2013年05月06日 | 原発
核燃料サイクル阻止1万人訴訟原告団から「核燃料サイクル施設と原発」という資料が送られてきた。ウラン濃縮、低レベル放射性廃棄物埋設、高レベル放射性廃棄物貯蔵、そして核燃料再処理など青森県六ケ所村にある核燃料サイクル関連施設の建設に反対して続けられている裁判である。もう再処理工場への提訴から20年目になるという。

最初の提訴は1989年のウラン濃縮工場の差し止め裁判で、1審2審を経て2007年に最高裁でも敗訴している。低レベル放射性廃棄物の埋設に対する差し止めも1991年に提訴、2009年に最高裁で敗訴。いまは1993年に提訴した高レベル放射性廃棄物貯蔵と核燃料再処理工場の差し止め裁判が続いている。

高レベル放射性廃棄物貯蔵施設は「稼働」しているが、再処理工場はいまだ「試運転中」である。着工から20年を経てまだ稼働できていない。運転開始の延期は、これまで19回。今年2013年の10月に運転開始予定と公表されているが、20回目の延期になることは確定的である。

「動かない」要素は大きく二つある。その一は施設そのものの欠陥で、再処理の最終工程のガラス固化が詰まっているということ。細かな技術的な話は省くが、ガラスを溶かして流し込む工程を止めて冷えればガラスは固まる。その場所は高レベル放射性廃液が流し込まれている場所で、人間が近づくことなどできない。どうやって補修するのか、私には想定できない。
もう一つは活断層である。原子力規制委員会の調査で直下に活断層があり、再処理工場直下での地震の可能性も想定されることになった。再処理工場は配管のお化けといわれる。その中を流れる物質は、放射能のレベルが一般の原発とは比べ物にならないくらい高い。

1万人訴訟原告団の資料には、「再処理工場の平常時における被爆」についての問題が書かれている。設置許可申請書には、周辺住民への被爆影響は「年間22マイクロシーベルト」と書かれており、周辺住民には「年間50マイクロシーベルトを超えることはない」と説明していたという。
ところが最近出された川田龍平参議院議員からの「東海再処理工場、六ヶ所再処理工場の安全規制等に関する質問主意書」に対する安倍総理からの答弁書では、「年間1000マイクロシーベルトを上回ることはない」というもので、いきなり被爆影響の量を引き上げているという。

福島県ではいまも20ミリシーベルト=20000マイクロシーベルトという、高い放射線レベルまでは許容することを強要されており、そのことを全国化、とりわけ再処理工場のような、もともと放出放射能の量が多い地域では、知らん顔して被爆限度を引き上げるようということだろうか。

いまは亡き高木仁三郎氏が『下北半島六ケ所村核燃料サイクル施設批判』(七つ森書館)で行った事故評価では、高レベル放射性廃液100立方メートルの入った貯蔵タンクが一つ破壊され、その1%が外部放出されたという想定で、年間被曝量10ミリシーベルトを超える地域は北海道の札幌や宮城県の仙台を越えて広がるとしている。一般人の年間被爆限度とされる1ミリシーベルトを超える範囲は、東京をはるかに越えて名古屋にまで達する。東日本だけではなく中部地方まで放射能汚染地域が広がる。

なぜこれほど危険なものが作られているのか。
使用済み核燃料の再処理は先行していた米英仏でも中止され、今でも行っている国は日本だけだ。
何のための作業かというと、使用済み核燃料の中からプルトニウムを取り出すという作業だ。
何のためのプルトニウムかというと、これを燃料に使うという理屈だ。
しかし、燃料として使う高速増殖炉は世界中で失敗し、日本の「もんじゅ」も1995年にナトリウム火災事故を起こして以後運転はできていない。もんじゅで使えないので新型転換炉「大間」や一般の原発でプルトニウムを燃料にするプルサーマルで、つじつまを合わせようとしている。使う量は圧倒的に少ないので、実際に使えたとしても、すでに日本が保有しているプルトニウム45トンはほとんど減らない。
使い道のないプルトニウムを持っていることは「核不拡散条約」に抵触し、IAEA(国際原子力機関)の核査察でも問題視されることになる。つまり、もうプルトニウムを取り出すことはしてはならないのだ。

それなのに六ケ所村の再処理工場はまだ動かそうとされている。
いったい誰によって?再処理工場は電力会社にとって完全なお荷物なのであるが、再処理をやらないということになるといろいろなことが起こる。まず日本原燃に投じた2兆円以上の資金は回収不能ということが明らかになる。いままでは貸付金だったり資産だったりしたものが「損失」に変わる。
使用済み核燃料は「財産」だったのに「不良資産」に変わる。電力各社が金融機関に行っていた債務保証により、融資の返済の肩代わりを求められることになる。その負債の総額は数兆円程度ではすまないかも知れない。
電力会社にとっては終わらせたいが、終わらせるわけにも行かないというジレンマの中にある。

この核燃料再処理をやれといったのは政府である。電力会社としては、再処理を終わらせることによって電力会社が終わりにならないように処置をしてから終われるようにしてくれということであろう。

それは、どのようなことであろう。
使用済み核燃料の国による買い取り。金融機関への債務保証の免除(金融機関には別途公的資金による保証)。
日本原燃の事業そのものの国への移管。などなどなど・・。
そうすれば投じた資金の損失くらいは、積み立てた再処理引当金でどうにかなるかも知れない・・。

うーむ、なんと虫のよい話か。強引な再処理工場、核燃料サイクル施設の建設によって、ずたずたに引き裂かれた地域がある、家族がある、地域産業がある。六ケ所村は、これさえなければ、今ごろ豊かな酪農地帯として桃源郷となっていたかも知れない。
電力会社や金融機関の救済をしないと日本経済が破綻するという現実があるのはわかるとして、その無意味な破壊行為によって人生や故郷を奪われた人への謝罪や弁済や救済はどうするのか。

福島原発事故後に顕在化してきた、このすさまじいほどの国民へのつけ回し。
いったいどうしたら、これを公平に裁き解決することができるのだろう。
原因を作った多くの者たちは、すでに幸福や栄華を享受してあの世にいっているのである。
どうやっても、割り切れない。

おーそうだ。最後にこのブログを書こうとさせたものを紹介しなければ。
1万人訴訟原告団の資料には、再処理工場の費用負担が皆さん国民一人一人に背負わされていることを数字で示している。
各電力会社に確認した、電気1kWhあたりの再処理工場の負担金である。以下にそれを紹介して終わりたい。

北海道(0.19円)、東北(0.18円)、東京(0.30円)、中部(0.21円)、北陸電力(0.14円)、関西(0.42円)、中国(0.17円)、四国(0.46円)、九州(0.35円)

あなたが東京電力管内で年間4000kWhの電気を使っているなら、年間1200円の負担。
なんだそれだけ?と思うか。実はFIT(固定価格買い取り制度)による賦課金もだいたい同額だ。そちらは大きく「国民負担増」とかくマスコミが、再処理工場の「国民負担」を数字にして書いたことはほとんどないだろう。
日本原燃破綻となれば、国民負担の額は税金分も含めて、とてもこんなものではすまない。
そしてその日は、多分、確実にやってくるだろう。









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