竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

ベースロード電源市場とかおかしい!という意見を送りました。

2018年01月31日 | 電力自由化
電力自由化という大きな流れの中、電気の仕組みは大きく変わろうとしているが、なぜかそれに逆行することをやって「これが自由化だ!」というものがいる。まあ、初めての体験なので、右往左往することがあるのはやむを得ないとしても、それが政府であるとするならば困ったものである。逆行の最たるものが、これから作られようとしている新市場で、政府の「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会」というところで「中間論点整理(第2次)」というものが出され、実は1月26日まで「意見募集」をやっていた。そこに意見を送ったのだが、せっかくなので、ここに図入りで解説することにする。
(タイトル写真は、方向定まらぬ足跡。)

新市場等制度設計への意見

1、 ベースロード電源市場

現状では、新電力が安価なベースロード電源にアクセスできないために、そのアクセスを可能にするためにベースロード電源市場を創設するとされる。しかし、ベースロード電源とされる電源は、原発と石炭火力、大型水力発電の三種であり、大型水力を除き、そもそも市場投入されるべき電源ではないと考える。



原発の短期限界費用は低いが、その中に含まれていない放射性廃棄物の処理処分費用、福島原発の事故で顕在化した事故対策費用など、この電気を使うことによる「その後の費用」(長期的追加費用)が莫大なものにとなる。「いま」の安さのために、その後の世代、未来の人類に大きな負債を負わせる電源は選択するべきではない。

石炭火力の短期限界費用は、原発についで低いが、これは最も多くのCO2を排出する発電方法である。COP21(パリ協定)における国際約束では、今世紀後半には人為的なCO2排出はゼロするということになっている。今世紀後半が2099年なのか2051年なのか議論はあろうが、現在計画中の石炭火力40数基、約2000万kWが2030年ごろに運転開始したとしても、2050年までの運転なら滑り込みで許されるというという判断は、しっかりと排出量削減努力を検証するという国際枠組みが作られる中で、甘いと言わざるを得ない。

一方で、最も短期限界費用が低い再生可能エネルギーを新市場の中で、どのように扱うのかはほとんど議論がされていない。
ベースロード電源市場と、もう一つの容量市場の創設は、変動する電力需要に対して、原発と石炭、そして天然ガスでまかなってしまおうという仕組みであり、再生可能エネルギーの普及を重視する、COP21をはじめとする国際的な議論とは相反する道を指し示すものである。

ベースロード電源市場は、本来あるべきメリットオーダー制度もゆがめるものである。欧米各国で導入されているメリットオーダーは、最も短期限界費用の低い再生可能エネルギーを最優先で市場に入れるという制度であり、それによって市場価格全体を引き下げる効果を持つが、ベースロード電源市場は、再生可能エネルギーを市場から締め出し、市場価格を高止まりさせる制度に他ならない。
また、電力自由化という大きな流れは、電力消費者に対し、電気事業者だけでなく電源の選択も可能にするものでなければならない。ベースロード電源市場と容量市場は、市場の電気の大部分を原発と石炭と天然ガスにしてしまうもので、消費者から選択権を奪うものと言わざるを得ない。



2、 容量市場

容量市場は、簡潔に言えば天然ガス火力への優遇制度である。天然ガス火力は燃料コストが高く、従って短期的限界費用が高い。自然な流れからすれば市場から締め出されるものである。
その自然の流れに逆らって、既存の天然ガス火力を存続させ、それが古くなって休止するときには新規の天然ガス火力まで建設をさせることが、この市場新設の目的である。

天然ガス火力の保有者の大部分は旧一般電気事業者で、再生可能エネルギー電気が普及して市場の多くを賄うようになれば、これら発電所を休廃止し、新規の天然ガス火力を作る意欲も失う。だが、新規の天然ガス火力ができなければ、「中長期的に供給力不足の問題が顕在化し、さらに電源開発に一定のリードタイムを要する」から、「①需給が逼迫する期間にわたり、電気料金が高止まりする。」「②再エネを更に導入した際の需給調整手段として、必要な調整電源を確保できない。」などと、かなり断定的に書かれている。

再生可能エネルギーには太陽光発電だけでなく、風力発電もあれば、バイオマス、小水力発電、地熱発電もある。発電する時間帯もバラエティーに富んでおり、それらが偏りなく開発されることによって「大きな需給調整手段」など必要なくなる。そもそも再生可能エネルギーによって需給が逼迫するという根拠は何も示されていない。

このような推測による断定のみで、再生可能エネルギー全体を市場から排除しかねない市場創設が議論されるのは、いささか乱暴と言わざるを得ない。
天然ガス火力をゼロにせよとは言わないが、少なくとも2030年に再エネ24%という目標を見据えた上で天然ガスの新設が必要となるか、さらに再生可能エネルギーのポテンシャルを踏まえた上で、系統制約や需給調整方法の転換など、より多くの再生可能エネルギーの導入が可能では無いのかという検討が、容量市場の前に行われるべきである。



3、 非化石価値取引市場

非化石価値取引市場は、FIT再エネの電気にはCO2削減の効果を持たせないという日本独特の考え方によって生まれている。再生可能エネルギーは、FITであろうとなかろうと、発電時点では、CO2を排出する何かの発電と置き換わっている。つまり、それはCO2を削減しているということである。
たとえば再生可能エネルギーの電気が100万kWh市場に流れるということは、CO2を最も排出する石炭の100万kWhを止めていると考えられる。したがって、FIT再エネであろうと、それが普及することで、日本全体のCO2排出は確実に減る。
ところが、政府は再生可能エネルギー賦課金(以下「賦課金」)によってFIT買取の原資を支払っているのは消費者であり、すでにCO2削減効果は一人一人の消費者側に移っているのだから、FIT再エネの電気を取り扱う小売電気事業者は、それによってCO2を削減していると言ってはならないとしている。
その考え方に立つならば、非化石価値取引証書も成り立たないはずである。消費者が払った賦課金は「費用負担調整機関」に集められる。しかし、消費者に渡された(と政府が主張する)CO2削減効果は、費用負担調整機関には手渡されていない。今回の制度は、CO2削減効果を持ってもいない費用負担調整機関が「非化石証書」を発行するという仕組みであり、無から有を生み出せない以上、成り立たない。
確かに、年々増加する賦課金を、証書発行による収入によって少しでも減殺し、消費者負担を軽くするという効果はあるだろう。しかし、そのためには、賦課金を払っている消費者からの、何らかの委嘱を受けるか、さもなければ政府のFIT再エネのCO2削減効果についての考え方を変える他ない。
まず、1)FIT再エネにCO2削減効果はある。2)消費者の賦課金は、このCO2削減効果を買い取っているわけではなく、FIT買取の原資をサポートしている。3)費用負担調整機関は、消費者からの原資サポートの資金を受け取り、送配電会社と一部小売電気事業者に対し、FIT買取価格と市場価格の差額分を支払う。FIT再エネのCO2削減効果は、このときに費用負担調整機関に差額分と引き換えに引き渡される。4)費用負担調整機関はCO2削減効果を非化石証書として発行するが、これは政府や地方自治体が設定する非化石価値目標を達成するためにのみ使用される。5)政府や地方自治体が求めるクレジットとしての非化石価値証書は有価であり、単に小売電気事業者からFIT再エネを購入しても、クレジットとしての効果は得られない。よって、CO2削減効果はダブルカウントとはならない。何故ならば、単にFIT再エネ電気を購入した消費者は、それだけではCO2削減の価値を使用しているとは言えないからである。
ただし、この考え方で再エネの非化石証書を発行できるようにするとしても、心配しなければならないことがある。非化石価値取引市場がCO2を最も排出する石炭火力を後押しする可能性があることである。2030年度に再エネ24%という目標が、すべてFIT再エネであれば、市場に最大24%の非化石価値証書が発行できる。これは、2030年度目標の石炭26%にほぼ匹敵する。石炭火力のほぼ全てが、非化石証書でCO2をオフセットできるというような、安易な運用は避けなければならない。例えば、石炭火力については、全排出量の10%程度しか非化石証書を利用することはできないというような制限をかけるべきであると思われる。



2月2日にGPP1周年

「非化石価値取引市場」は今回の論点整理にはなかったが、大きな問題点をはらんでいると考えて、あえて言及した。
この意見は、電力小売事業者(取次)であるグリーンピープルズパワーとして出させてもらった。
再生可能エネルギーの電気を供給しようという立場からは、自由化ではなく不自由かではないかと思えるからだ。
ベースロード電源という考え方そのものが、今や化石である。出力変動ができない、木偶の坊のような電源を後生大事に奉って、激しく変動する需要に対処しようという、実はとても合理的でない考え方だ。
原発と石炭を、最優先するという考え方を置いて「電力自由化」をやろうとするので、大きな歪みが発生している。
再エネ大量導入時代に全く新しい需給調整システムが求められているにもかかわらず、そして世界は、実例をたくさん見せてくれているにもかかわらず、目に蓋をしているらしい。
こんな不思議な「電力自由化の日本」に我が社「グリーンピープルズパワー」は船出した。この1年は取次としての営業で、」いわば外洋航海は控えた。これから外洋航海に出る財力、技術力、洞察力などを養いながら、2018年を乗り越えていこうとしている。
そんなGPP(グリーンピープルズパワー)1周年集会を、2月2日(金)に開催する。
興味のある方は、どうぞご参加を。
http://gpp-event.blogspot.jp/2018/01/22gppgeoc.html



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1 コメント

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勉強不測 (tarou)
2018-10-01 15:45:44
もっと電力について勉強しましょう。
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