竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

記事紹介:再処理用認可法人設立法案国会に──見当外れのお題とシュールな答え

2016年02月11日 | 原発
本日は、ちょっと原発のお話。
先日(2月5日)、再処理用認可法人(使用済核燃料再処理機構)設立法案が閣議決定され国会上程されました。

再処理・・について知らない人のために解説すると、これは原子力発電所の使用済みの燃料(その中には核分裂生プルトニウムと、燃え残りのウラン235と、中性子が当たるとプルトニウムになるウラン238と核のゴミ=核分裂生成物が詰まっているものです。抱きついたら確実に死にます。)から、プルトニウムと燃え残りのウラン235とウラン238を取り出す作業のこと。リサイクル・・などという口当たりの良い表現をされたりしますが、紛れもなく核兵器材料を取り出す技術です。我が国は、この技術を温存したい・・どんなにお金がかかろうと。というわけです。でも、核兵器を作るためなんて言えませんから(いうと北朝鮮のように経済制裁されたりします。)、もんじゅ=高速増殖炉で使うためと言ったり、もんじゅがナトリウム火災事故で事実上再起不能になると、大間=新型転換炉やプルサーマル=普通の原子炉でプルトニウムとウランの混合燃料を使用・・でなどと言って取りつくろうわけです。
(トップの写真は福井県敦賀半島先端にある「もんじゅ」)

もんじゅはすでに死んでいますし、大間やプルサーマルで使用するプルトニウムの量はたかが知れています。使い切れない!でもそんなことを認めると、核兵器・・という事実が見えてしまいますから、口が裂けても使い切れないなどとは言いません。
で、ほんとは使いきれないプルトニウムを取り出すための法律が、この「再処理用認可法人設立法」。

でもなんで今ごろ。
じつは、今私が格闘をしている「電力自由化」と深い関係があります。
これまで電力会社(専門用語では「一般電気事業者」と言います。東電とか関電などの10電力のこと。10電力に沖縄電力も含まれますが、ここだけは懸命に?原発を持っていませんから、以下の話はここを除く9電力のことになります。ただし、再処理の責任はなんと沖縄電力にも押し付けられ、なんとなんと、これから新規参入する新電力にも押し付けられようとしてるのです!)は、総括原価方式で守られてきました。

総括原価方式を知らない人のために解説すると、売上から事業を行うための経費を引いいたものが利益になるという普通の経理ではなく、事業にかかった経費に3%をかけたものが利益になるという方法。
賢明なあなたは、気がついたと思いますが、「そんなら経費をいっぱい使えばいいじゃん!」ということ。経費=総括原価が大きければ大きいほど利益は大きくなる。利益を乗せた売上とは何?みんなの電気料金!こうして電気代は高くなり、電力会社の収入は大きくなりました。
ついでに言うと、経費が大きい方が良いので、コスト意識を働かせて、発注工事費を渋ったり値切ったりすると、自分の利益が小さくなります。ということは、気前よく、「いくらでも請求しなさーい!」と言った方が儲かる。発注を受けるのは誰?日本の産業界の各社です。こうして経団連も日経連も、電力会社にたてつかず、一緒にベッタリしてれば良い仕事が回ってくるという「日本の悪しき慣行」が出来上がってしまったのです。
だから、「コストが大きくて儲かる」原発反対!なんて言えるわけが有りません。ほんとは危ないんだよなー、と思いながらみんなが口をつぐんでいたら福島原発の大事故になったというわけです。で、ちょっとは、もうやめようか・・と言う動きが出てきましたが、景気も悪くなったし、政権も変わったし、もう一度黙るか・・というのが今の状態。

でも「総括原価方式」はなくなるのです。電力自由化の中で、東京電力のような一般電気事業者も他の新電力も同じ「発電事業者」や「電力小売事業者」になります。
正確には、「送配電事業者」にもなり、会社が三つに分割されます。
電気を運ぶ公共交通機関のような送配電には総括原価方式がまだ残りますが、後の二つ「発電」と「小売」は、2020年には総括原価方式が廃止されます。
「再処理」は「発電事業」の領域です。電気を製造したあとの副産物ですから、本来は製造者責任があります。
これまでは、総括原価方式なので、費用がいくらかかろうが平気だったのですが、これがなくなると大変。
一般電気事業者各社が、これまで再処理につぎ込んできたお金は2兆円を超えます。
毎年数千億円を積立てたり、再処理費用として支払ってきましたが、これからは「競争」の中に投げ込まれますから、そんな無駄なお金払っていたら競争に負けます。
だから、やめちゃいたいですよね。

でも政府は、やめられたら困るんですよ。
そこで再処理を電力会社から切り離し、まさに国家的事業とすることで、やめられないようにするのです。
一般電気事業者は「原子力事業者」という名前をつけられ、「再処理用認可法人(使用済核燃料再処理機構)」に、毎年拠出金を納めることになります。
でも、このままだと、早晩「原子力事業者」である「発電事業者」は負担に耐えかねて潰れるでしょう。

ここまでのシナリオが、下記の「核情報」というサイトにうまくまとめてあります。
http://kakujoho.net/npp/pu_howl.html

さて、問題は、ここでめでたしめでたしとはならないところ。
政府は原子力事業者に潰れてもらっては困りますし、それは原子力事業者にお金を貸しまくっているメガバンクもそう。
彼らの負担を減らすために何をするか・・。
原発の電気を使ったのは、全部の電力消費者だろ、ということ。
沖縄だって、新参者の新電力だって、消費者から「再処理負担金」を取りなさい・・と言うことになるだろうなあと思うわけです。

そして良い手があります。
ずべての電力小売会社が負担しなければならない費用である「託送料金」=送電門の使用料です。
すでに、今でも、過去の再処理費用の負担金が「託送料金」に乗せられているのは有名な話です。
もう必要のない「再処理」ですから、さっさとやめなさい!ということを黙っていると、次には全消費者負担!が必ずやってきます。
だから、こんな法律を作るのではなく、「国民負担を最小限にする」という原則をきちんと貫かせることだと思います。







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1 コメント

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ラッシュでの講座 (鳥井本 恵梨子)
2016-02-16 00:51:41
竹村先生
本日は電力自由化について分かりやすい講義をありがとうございました。
クエスチョンタイムでも話しましたが、結局自由化と言っても、消費者が選択するための材料を不透明にされたまま、価格競争に振り回されている、または東電という名を販売会社を立てる事で隠しているだけのように感じていましたが、まさにその通りU+203CU+FE0Eしかも、再生可能エネルギーについては全く無知でしたので、非常に勉強になりました。そして、更には興味が湧いてきました。これを機に、私自身や家族とこの事に向き合い、自分達が正しいと思う将来的選択をしていきます。
ぜひ先生の活動に共感を感じます。
今日は本当にありがとうございました!
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