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餃子倶楽部

あぁ、今日もビールがおいしい。

「ソメイヨシノ―すべては1本の木から始まった」(1)

2013-03-30 23:46:22 | 餃子ライブラリ
 以下の記事は、NHK-BSで2010年4月21日に放送された「いのちドラマチック『ソメイヨシノ すべては1本の木から始まった』」の内容を再構成したものである。


 ソメイヨシノ―美しいピンク色の花が一斉に咲き、一斉に散っていく。その美しさとはかなさは私たち日本人の心を魅了してきました。
 実はこのソメイヨシノは江戸時代末期に新たに作り出された桜だと言われています。最初に生まれたたった1本の木が人の手で増やされ続け、今では日本の桜の8割を占めるまでになりました。
 しかし、今、このソメイヨシノに危機が迫っています。全国で多くの木が枯れ始めているのです。
 どうしてソメイヨシノは日本中を埋め尽くすまで増え広がることができたのでしょうか。そして今なぜ危機にさらされているのでしょうか。


■ソメイヨシノはクローン植物

 日本全国に増え広がったソメイヨシノ。これらはすべて同じ遺伝情報を持つクローンで、たった1本の木から増やされたコピーだと言います。
 しかし、ソメイヨシノの見た目は1本1本違っています。一体どこがコピーだというのでしょうか。
 南は福岡、北は青森、そして東京と、3箇所のソメイヨシノを比べてみました。まず、それぞれの若葉の先たんから細胞組織を取り出します。そしてその中からある物質を抽出し、分析器にかけました。調べたのは異なる3箇所のソメイヨシノが持っているDNAで、これらを重ねて見ると、それぞれのDNA情報は完全に一致しました。これはつまり、日本各地のソメイヨシノは同じDNA、すなわち遺伝情報を持つクローン桜であり、ある1本の木から増やされたコピーであるということを物語っています。


■ソメイヨシノの誕生

 では、それらの元となった1本のソメイヨシノはどうやって生まれたのでしょうか。
 東京都豊島区駒込―ソメイヨシノ発祥の地と言われるこの場所に答えの手がかりはありました。江戸時代末期、ここは染井と呼ばれ、植木職人が多くすむ村でした。この村の1人の植木職人によってソメイヨシノは作り出されたと言われています。
 当時、江戸では、新しい園芸品種を作って楽しむ風潮が広がっていました。そんな中、職人は新しい桜を作ろうと、さまざまな桜の掛け合わせを繰り返していました。彼が注目したのは大きな花が咲くオオシマザクラと、葉っぱが出る前に花が満開になるエドヒガンでした。職人はこの2種類の桜を受粉させて種を作り、それを播いて、花が咲くのを待ちました。10年後、たくさん咲いた桜の中にたった1本だけ、今まで見たことがない見事な桜、大きな花をつけ、咲き方も散り際も美しい桜があったのです。ソメイヨシノの誕生でした。


■そして日本全土へ

 この1本の桜を何とか増やしたい。しかしこの木と同じものを2度と作り出せるかわからない。
 そこで彼が用いたのが、古来から伝わる「接ぎ木」という技術でした。
 この方法は今も受け継がれています。まずソメイヨシノの枝を用意し、芽が2つから3つ付くように切り分けます。そしてその枝を土台となる木に接ぎ合わせます。土台になる木として最適なのがソメイヨシノの親にあたるオオシマザクラです。オオシマザクラを根元の少し上のところで切ります。切り分けたソメイヨシノの枝先を削り、オオシマザクラの切り口とぴったり付くようにして固定します。枝と根になる土台の部分は1年後には完全にくっついて苗木となり、その2年後にはソメイヨシノの花をつけます。1本の木からできる接ぎ木は1000本にものぼり、接ぎ木によってソメイヨシノは速く大量に増やすことができたのです。
 こうしてソメイヨシノは最初に生まれた1本から次々とコピーされ、全国に広がっていきました。


―なぜ根はオオシマザクラなのに、幹から上はソメイヨシノになるのか。
「動物だったら自分の個体は自分ということで、他者の個体を拒絶する免疫システムが厳重に成りたっているわけですね。だから臓器移植などもすごく難しいのですが、植物には他者を拒絶する免疫系がありません。それがこの接ぎ木を可能にしている大きな理由だと思います」(分子生物学者・福岡伸一。以下福岡)

―なぜ他の桜と同じように種から育てずにわざわざ接ぎ木をするのか。
「普通なら、花が咲いて、雌しべと雄しべが受粉して種ができるのですが、ソメイヨシノは種ができない性質になっているんです。というのも、生物として同じ遺伝子が繰り返さないよう、違う遺伝子が混合したときにだけ、初めて(種が生まれ)次の世代ができるという仕組みになっているからです。生物は同じものがずっと続くことを防ごうとして、絶えまなく自分の可能性を試して変わっているわけで、世代毎に遺伝子の混ざり合い、シャフリングが起こるということが次の世代を豊かにしていく原動力になっているのです」(福岡)


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