今からほとんど19年前、大阪から東京の日野市というところに嫁いだ。
色々と問題のある結婚だったし、
私は逃げるようにして大阪を出てきた。
本当に身の回りのものを少しだけ持って・・という感じだ。
当時ちゃだには借財があり、私は東京に着いて運良く3日目に仕事を見つけた。
私はそれほど早く、働かなくてはいけなかった。
日本一のシェアを誇る臨床検査会社のスタッフだったし、
920円の時給はよすぎるほどだったと思う。
それでも返済は重くて、私は今、自分が病気で働けなくなったら・・・
そう思うと怖くて風邪気味でもすぐに養生していたように思う。
その頃、私はアジア雑貨の店で一着のワンピースを見た。
それは3500円くらいだったのに「欲しい」と言えなかった。
そんなお金があれば3日くらいは充分に食べられたからだ。
でも、どうしてもどうしても諦められなくて、
帰り道、ちゃだに乗せてもらっていたバイクのタンデムシートで泣いた。
そしたらちゃだはそのワンピースを買ってくれた。
それは、本当に嬉しくて・・・すり切れるまで、
いや・・本当にそのワンピースはすり切れたのだけど、そこまで着古した。
あれから19年・・・・
私は今、物欲のかたまりとなっている。
あの19年前のワンピースのありがたみをどうして忘れてしまったのか、
それほどまでに「私は我慢している!」という思いに支配される。
先日はこの生活にとても考えられないような60万円を越える額の指輪。
そう、それはただの装飾品だったもの・・・
食べられもせず、着ることも出来ない・・・
そんなものをちゃだはカードローンにしてまで買ってくれようとして、
私はそれを心のどこかで怖いと思いながらも、
あの指輪を手にできるんだ、自分のこの指にはめてキラキラと耀くのを眺められる、
・・・・と喜ぶ自分の物欲に負けていた。
本当にこれは諦められない!と思い込んでいたからだ。
でもその指輪の話をすると二人はいつも喧嘩になる。
これはもうダメということだ・・と思い直して、
私はこの1月から心を残していたその分不相応な指輪を、
最後にもう一度見たいと言わないでおこうと思い、
キッパリと「買えません」と仲の良いスタッフさんに電話をした。
今まで3回くらい断っては、まだ取り置いてもらっていた指輪だったけど、
今回はもうこれが最後と思って話すことができた。
まだ「あの指輪を誰かが買って指にはめるのだろうな」と思うと、
本当に動揺して気持ちが塞ぐけれど、それはもう仕方がない。
今日、また6000円くらいする、これもブローチ・・・
食べられもせず、着ることも出来ず、ちゃだと一緒に楽しむこともできない。
そんなものを買おうとした自分が怖くなって、
思い切ってその相手様に断りのメッセージを送った。
最近そんなことが続いて、私は自分で自分に呆れている。
それでも気持ちは痛くて物欲が無くなることはなく、
諦めたものに未練がいっぱい残っている。
買おうかどうしようか・・・
迷っているうちに完売してしまったリボンの付いたガラスパールのネックレス。
運悪くこの時期に重なって、2500円・・買っておけばよかったとか・・・
何故、この強い物欲が私を支配するのか情けない。
東京に行ったとき、二人にお金が無いことは承知だった。
すぐに働かなければいけないことも、自分が身体を壊せないことも理解していた。
だから原宿とか青山とかでは遊べないけど、
私は「すぐ裏の多摩川の土手を散歩するだけでいい」とちゃだに言えた。
今はどうしてしまったんだろう・・同じ自分なのに。
こんな気持ちにさいなまれる時間がとてもツラい。
自分の気持ちがツラいのだ。
あの頃の自分に戻りたい。
ファンデーションを実家から持っていったその一つだけで、
2年も化粧をしていたけど・・貧しいとも何とも思わなかったあの頃。
もう一度、謙虚な自分に戻りたいと思うのに、この私の肉は物欲に負ける。
負けるな、私!!
温かい部屋で、優しいちゃだと3匹の猫と、綺麗な音のピアノと、快適な車。
多くの服や今までに買ったリングやネックレス。
もうこれ以上、何がいるんだ!!
・・・・と、そう自分に言ってやりたい。
変われ!
私・・・・!!
くぅ