「小説家になろう」が出始める前、私はBlogでオンライン小説を書いて人に見てもらっていた。
当時はまだオンライン小説が少なく、それから程なくして携帯小説なる会話だけの奴が流行って書くことに冷めてしまった。
その頃は、ノートパソコンやpersonaなどの所謂Windowsでテキストをパチパチ打ち込んでいた。
が、昔のパソコンは起動も処理も遅く、パッと書けなくてイライラしていた。
しかもノートパソコンなどめちゃくちゃ高かった。
そんな時に出会ったのが「ポメラ」だ。
ただテキストを打ち込むだけ、他には何もできない。
折りたたみキーボードと小さな画面があるだけの、文章を書くものしか使えない使う必要がない専用機。
それがポメラだ。
開いて電源ボタンを押すと瞬時に起動、文字を打ったら勝手に記憶。
申し分ない。
また打ち心地が堪らなくいい。
財布とタバコとライター以外何も持ち歩かなかった私が、ポメラをバックに入れてどこに行くにも持ち歩き、時間を見つけてはパチパチと文章を打ち込んでいた。
そんな大事なポメラだったが、いつしか本体がベタベタするようになる。
最初はちょっとベタベタする程度だったのだが、最終的きにはテッシュで拭こうと思ったらベッタリ貼り付いて取れないと言う悲惨な状況に。
洗剤等で何度も拭いたが全然効果なし。
やがて、持ち歩くのにバックにも入れられないほどになりたくての引き出しの奥に仕舞い込まれてしまった。
そのプラスチックやゴムがベタベタになる状態を「加水分解」と言うのだそうだ。
そして、あるYouTubeの動画で見てしまった。加水分解を除去する方法を!
そして、その方法は「あるもの」水に解いてそれを布につけて拭くだけ。
そんなばかな、そんなことは幾度となくやったんだ、と半信半疑。
しかし、その「あるもの」は何と私が持っている。
オキシクリーンだ。
確かにスニーカーやブーツを着けおき洗いするときや頑固な油汚れの道具や調理器具など、本当に驚くほど綺麗になる。
机の奥にしまってあったベタベタのポメラを引っ張り出して、オキシクリーンをお湯にぶち込み硬く絞った布巾で拭いてみた。
驚くほど綺麗になる。
私は夢中になって拭いた。
ベタベタがどんどん取れていく。
ベタベタでゴミだらけだったポメラがピカピカでツルツルの状態になった。
たった10分ほどで、あんなに苦しんだ加水分解が、呆気なく綺麗に除去された。
表面が白く変色したのさえ、綺麗になった。
私の相棒が復活した。
病気の後、ブラインドタッチもできなくなり、文章を打つことからすっかり遠ざかっていた。
古いノートパソコンを引っ張り出して、特打をインストールして練習しよう。
どうせだから、かな打ちからローマ字打ちに変えてみよう。
そして私は何を書くのだろう?
昔とはまるで違う私が、どんなものを書くのだろう。
今は小さな期待で一杯だ。