横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

ルンバのトラッシュボックスの掃除

2019-03-29 16:42:41 | 心臓病の治療
 ロボット掃除機のルンバですが、最近はスマートフォンからの遠隔操作で留守中に掃除したり、出勤するときにスイッチを押して出ると、不在中に掃除が終わって非常に便利です。スマートフォンで実際に掃除をした床のマップを提示できるので、ほぼ床の全面をちゃんと掃除してくれる優秀なロボットと思います。この掃除ロボットの最大のメリットは不在中に掃除をしてくれることと思います。

 しかしながら、便利なロボットも掃除して回収したゴミがたまったトラッシュボックスは人間の手でごみを除去し掃除もしなければなりません。けっこう、細かい塵まで掃除するために簡単にゴミ箱に捨てられるわけではありません。このトラッシュボックス、フィルターなどをきれいにするのに、ダイソンの掃除機を使用しています。掃除機の掃除を掃除機で行う、なんか矛盾しているようにも見えますが、これがまた有効でもあり、おかしな行為でもあります。

 病院内の清掃もそのうちロボットで行うことが一般的になると思います。こうして人の仕事がどんどん少なくなってしまうのかもしれませんが、その掃除機のゴミ捨てや掃除、メンテナンスなどには人の手が必要であることは変わりません。人手が必要な仕事、内容はかわっていっても、今後も減らないと思います。
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第3回 心不全パンデミック講演会 小開胸大動脈弁置換術講演要旨

2019-03-29 05:48:25 | 心臓病の治療
第3回 心不全パンデミック講演会
 2019年3月6日 横須賀セントラルホテル

小開胸大動脈弁置換術の臨床経験

 高齢化社会が進む中、心不全患者数が激増することが予想されています。まるで爆発的に患者数が増加するような感染症の大流行の様相を呈することを表現して心不全パンデミックともいわれています。高齢化が進むことで増加する心不全の原因の中には大動脈弁狭窄症も大きなウェイトを占めると考えられます。特に65歳を越えると急速に大動脈弁の硬化が進み、患者数が増加すると言われており、心不全を繰り返して末期に至る病態や突然死など社会的影響の大きい疾患です。重症と診断された患者の予後は短く、5年生存率は約20%、2年生存率も約50%以下ともいわれ、肺癌やすい臓がん、食道がんのステージIIIb以上の進行した状態に匹敵する生命を脅かす状態ともいわれています。
 大動脈弁狭窄症がそうした末期癌と完全に違うのは、心臓の出口を阻む障壁さえ取り除いてしまえば、心機能が改善し、生命の危機を完全に回避できるという点です。手術する段階にもよりますが、完全に心機能が正常化し、何の内服薬も不要になることも不可能ではありません。しかしながら、病状が進行して左室機能が低下したり、高度の左室肥大を伴うまでに至った症例では、せっかく手術しても左室の機能障害が残存して心不全が遷延する、または手術自体のリスクが著しく増大する可能性もあります。よって、手術適応までに至った大動脈弁狭窄症はそうした末期状態に至る前に治療を受けるべきです。
 大動脈弁狭窄症の治療は根本的には人工弁と置換することです。従来の方法では胸部の正中に20cm前後の皮膚切開をおき、胸骨を離断して開胸操作を行うのが一般的です。最新の低侵襲な大動脈弁置換術の方法として、右小開胸でおこなう方法が試みられるようになってきました。胸骨を切らないことで、胸骨骨髄炎やそれに続発する縦隔炎が発生しない、胸骨を離断することで起こる術後の呼吸不全やリハビリテーションの遅延が起こらない、という点から低侵襲で早期回復を期待できる術式として学会でも注目を浴びています。2018年4月より小開胸による低侵襲の内視鏡補助下弁膜症手術に対して新たに保険診療上の加算が認められるようになり、今後、こうした小開胸手術が発展していくものと考えられます。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では、2009年の開設以来、小開胸の低侵襲心臓手術(MICS=Minimally Invasive Cardiac Surgery)を県内でもいち早く導入し、2018年の心臓胸部大血管手術110件中、41例(37%)において、MICSを実施し、県内で最も高い頻度で適用しています。特に大動脈弁置換術や冠動脈バイパス術に対するMICSは現時点ではおそらく県内で唯一の標準術式として採用する実施施設です。
 大動脈弁置換の適応は、通過速度4m/秒以上の有症状の大動脈弁狭窄症や、左室拡大を伴う大動脈弁閉鎖不全症ですが、特に80歳以上の患者さんに対しては、より加齢によってリスクの高くなる前に、重症化する前に、早期に手術を行うこともあります。高齢の患者さんが増加しているため、9割以上の患者さんに対して生体弁を移植していますが、日本のガイドラインでは65歳以上は生体弁が推奨されています。最新のアメリカのガイドラインでは70歳以上は生体弁、50~70歳は患者さんの希望も考慮して選択することを推奨しており、生体弁の選択の幅が今後ますます大きくなると考えられます。これは患者さんの高齢化ということに加えて、生体弁の耐久性が向上し、20年近く再移植が必要ない可能性が高くなっているからとも言われています。
 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科で採用するMICSによる大動脈弁置換術の方法はStonehenge法という慶応大学の山崎講師が考案した方法で、腋窩の小開胸から心膜を右胸腔に引き寄せることで、大動脈弁を心臓ごと胸壁に近寄せ、手の届く範囲で大動脈弁置換をおこなう方法です。この方法では、MICS専用の長いシャフトの鑷子や持針器などの手術器具が不要で、縫合糸の結紮もすべて術者の手だけで可能です。このため手術の導入にあたって特殊な器具をそろえる必要がありません。Stonehenge法を適応できる症例は、心機能良好、上行大動脈径45mm以下で性状が良好、肺の癒着がない症例で、また、適応から除外するのは、左室駆出率50%以下の低左心機能、高度の肺障害(分離肺換気不能)、肺の癒着が予想される症例、間質性肺炎、上行大動脈の拡大や性状不良、胸壁から大動脈弁が15cm以上ある症例です。うわまち病院で2018年に実施した大動脈弁置換術20例のうち、8例(40%)でこのStonehenge法を採用し、全例合併症なく経過良好で退院しました。特に80歳以上の高齢者においては、術後の回復が速いことが特に実感できます。また右小開胸の適応が困難な症例に対しては、胸骨部分切開により従来の手術層の半分以下のサイズで正中からアプローチする方法を採用しており、こちらもまた早期回復が見込める術式です。
 心不全パンデミックと言われ、心疾患の患者数が激増する時代、心臓血管外科領域においては、より低侵襲な手術方法が今後も進化し、合併症が少なく早期回復を可能とすることで、在院日数の縮小、適正な医療資源の配分がなされていくものと考えられます。


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