横須賀うわまち病院心臓血管外科

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腹部大動脈瘤手術における腎動脈再建

2019-03-27 23:13:33 | 大動脈疾患
腹部大動脈瘤手術においては腎動脈との位置関係が重要で、腎動脈にかかる腹部大動脈瘤の場合は難易度もあがり、またその手術戦略の検討は重要になります。

まずは腎動脈の上で遮断するかどうか、腎動脈の血流を一時的に遮断するかどうか、という問題があります。

一時的に遮断を腎動脈上でおいて、腎動脈下で人工血管と吻合する場合は、遮断中の時間が腎虚血の時間であり、可能であれば冷却した生理食塩水か乳酸加リンゲルなどを還流することで腎保護をはかるというのが一般的です。

しかしながら、腎動脈を再建する場合は、人工血管の中枢側吻合をおき、そのあと、腎動脈の血流再建を行う必要があり、単なる冷却水の還流だけでは不十分です。その間の約1時間前後の間、腎臓の保護を目的とした腎還流が必要になります。

腎血流の維持目的の還流の方法は
①腋窩動脈に人工血管を縫着し、その血流を導いて腎動脈に直接還流する方法。自己の血流を使うため、ポンプなどの装置不要という意味で低コスト。人工血管を縫着せずとも、送血管などのカニュレーションを行い、そこから脱血するという方法もあります。

②PCPSまたは人工心肺 : 代替静脈経由右房脱血 ⇒ FA送血しながら分岐させたルートで腎動脈の還流を行う。

こうした方法をあらかじめ検討しておく必要があります。
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