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横須賀総合医療センター心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

高齢者の誤嚥・起きて当たり前

2019-03-28 22:47:07 | 心臓病の治療
 高齢者が誤嚥、窒息して亡くなるという事故のニュースは後をたちません。毎年正月には餅を喉に詰まらせて亡くなるお年寄りがたくさんいらっしゃるようで、ニュースでも報道されます。最近は高齢者施設でドーナツを誤嚥して窒息して亡くなった事例に対して、介護職員の業務上過失致死の有罪判決から罰金二十万円というニュースを聞き、衝撃を受けました。もちろん、誤嚥するかもしれない食物を与えたことがきっかけかもしれませんが、他の食物ならいいのか、許可された食物なら誤嚥してもいいのか、など数多くの疑問が残る判決となりました。そもそも、裁判所とは医療における事例においては公正さというよりも、弱者目線での救済的な感情で判決することが多いようで、必ずしも正義・正しい判決がされないことがしばしばあります。

 さて、、この誤嚥ですが、高齢者なら非常におこりやすい。心臓血管外科で手術を受ける患者さんも、ご高齢の方が非常に多いので、誤嚥や痰詰まりなどは日常的に起こりうる、周術期の最も恐ろしい事故といえます。手術のせいで誤嚥や痰詰まりを起こす・・・この因果関係が証明されることはありませんが、一度発生してしまうと、周術期管理がゼロになってしまいます。

 このことを踏まえて、発生しないような細心の注意と、安全と判断するまでICU管理を継続することにしています。手術後に人工呼吸器から離脱した後には、飲水のテストを行ってから水分、食事の摂取を開始しますが、危険のある患者さんには耳鼻科医、言語療法士に診察してもらい、食事の選択の指示などをうけながら経口摂取をゆっくり進めていくこととしています。過剰な周術期管理、ICU滞在期間の長期化と言われても、患者さんの安全を最優先にすることが重要と考えています。

腹部大動脈瘤術後の腸管虚血

2019-03-28 22:11:27 | 心臓病の治療
 心臓血管外科手術後に発生する腸管虚血、多くはNOMIと言われる非閉塞性の腸管の血流障害で、血管のスパスム(血管攣縮)が原因と考えられています。高齢者、腎機能障害、人工心肺の手術後に発生しやすく、必ずしも心臓手術後でなくとも、自然に発生する場合もあります。

 腹部大動脈瘤術後に発生する頻度は0.3%ほどと考えられますが、過去に発生した症例を検討した結果、特に優位さをもって発症頻度が高いのが、80歳以上の高齢者と緊急手術症例でした。

 腹部大動脈瘤術後(もしくは術中)に腸管虚血が発症するメカニズムとしては、

①最も多いのは、主にS状結腸領域の、術中の低還流による腸管粘膜の虚血による下血です。S状結腸壊死に陥れば腸管切除術の追加、人工肛門増設がひつようになります。S状結腸は腸管の中でも最も虚血頻度の高い部位であり、術中、術後の血流低下、積極的な試験開腹などで対処可能なことが多いです。

②NOMI 非閉塞性腸管虚血(Non-Obstructive Mesenteric Intestinitis)で、動脈硬化の強い、高齢者に対して発症を監視します。

③遮断部位からの血栓塞栓(逆行性)
 などが考えらえます。