横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

横須賀市立うわまち病院のMICS比率

2023-03-12 03:43:34 | 心臓病の治療
 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科の心臓胸部大血管手術症例562例(2018-2022念)のうち、いわゆる小切開アプローチによる低侵襲心臓手術(MICS =Minimally Invasive Cardiac Surgery)は149例に実施され、全体の約1/3の症例に適応されました。胸部大血管手術にはまだ適応としていないので、それを除く心臓手術に限定すると366例中149例=40%の適応率となります。
 難しい症例にチャレンジすることもありますが、必ずセーフティネットを設けること、安全最優先で行うことを条件に実施しているので、積極的に行っているといってもこのくらいの適応率になるのだと思います。
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differencial hypoxia

2023-03-11 07:11:20 | 心臓病の治療
differencial hypoxiaとは、periferal ECMOにおいて、肺水腫や肺塞栓を合併しているなど、自己肺の酸素化が不十分なときに、自己心から拍出される血液が冠動脈や脳を灌流して、心筋虚血や脳虚血を起こしてしまう病態をいいます。心源性ショックの場合には大腿動静脈からカニュレーションしてECMOが開始されることが多く、このあと自己心の機能が回復してくるタイミングで発生します。このため、酸素化の移行ポイントがどこにあるのか、常に監視が必要になり、右上肢の酸素化が悪化してきたら対処が必要です。筆者も過去に肺塞栓の患者さんで、大腿動脈送血によるECMO管理中に突然自己心が動かなくなり、瞳孔も散大して失った経験があり、それ以来、これに対する対応のタイミングを注意深く観察してきました。
このdifferential hypoxiaに対する対応としては主に三つあります。
①肺の酸素化能改善=肺血栓除去、肺浮腫改善、気道の異物除去など
②送血路変更=central ECMO=上行大動脈から冠動脈や脳に直接人工肺で酸素化した血液を送血
③V-AV ECMO=VA ECMOの送血路を二股にして一部を静脈に返血することで、肺動脈の血液の酸素化を改善する。

①は常に同時並行で治療が進むので多くの場合は、こなdifferential hypoxia はそれほど影響しないことが多いのですが、重症ほど関係してくるので注意が必要です。
この辺の知見を日本で最も詳しいのはおそらく九州大学の塩瀬教授です。以前、横須賀市立うわまち病院に手術指導に来ていただいた時にも、このECMOに関することや、これにインペラを組み合わさたヴァヴェクペラ=V-AV ECMO+インペラのことについて詳しく教えていただきました。先週京都で開催された第50回日本集中治療医学会のランチョンセミナーでも、塩瀬教授がこのdifferential hypoxiaについて詳しく講演されて、たいへん勉強になりました。短い時間でしたが、講演終了後にいろいろ質問させていただき、さらに深く教えていただき感謝しています。心臓外科医向けにもこうした講演などを通して勉強の機会が増えることを期待します。

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集中治療医学会@京都

2023-03-02 22:08:08 | 心臓病の治療
 今年の集中治療医学会は京都でオンサイト開催です。横須賀市立うわまち病院からは4演題の発表を予定していますが、心臓血管外科からは90歳以上の心臓胸部大血管手術の手術成績について発表します。何故か演題は、終末医療、医療倫理のセッションに振り分けられてしまいました。集中治療医学会では応募した演題に対して査読委員が点数をつけ、点数の上位20%をA判定、以下20%ごとにE判定まであるそうです。どうもポスター発表に回されたものはE判定だったようです。筆者の90歳以上の…演題はA判定でした。
 横須賀市立うわまち病院で過去6年間で実施した心臓胸部大血管手術683例のうち、80代の患者さんは187例、90歳以上は18例でした。」1例をのぞいて17例は緊急入院した患者さんで、生存退院するためには手術が必要と判断された患者さんが多かったです。うち死亡症例は2例で、1例は他疾患発症のため、1例は手術のタイミングを逸してしまった症例でしたが、いずれも手術の時期は乗り超えており、手術以外の因子が死因となっていました。そもそも90歳以上で心臓の手術を必要と判断されるほど、しっかりADLが保存されている人が紹介されてくる、という印象があります。

Heart surgery for elderly patients aged 90 years old and over

 Last week, I attended the annual meeting of the society for Japanese association of intensivists. I was surprised at the sheer number of attendees compared to the cardiac surgeon’s conferences I usually attend. 
  I made a presentation at the end-of-life care session. The title was the clinical results of heart surgery for elderly patients aged 90 years old and over. Among 687 patients who received heart surgeries in five years, one third were aged 80 and over, and there were 18 patients aged 90 and over. 17 of them were admitted emergent and could not be discharged without surgery. In one case of 94 years old, the patient wished to live to be 100 and underwent scheduled surgery to prevent rupture of a growing 7 cm aortic arch aneurysm. He did not make it to 100, but lived to 97 without aortic aneurysmal rupture. Despite the severity of most cases, 16 out of 18 cases were discharged alive. The cause of death in one case was a cerebral hemorrhage during rehabilitation, which was unrelated to the surgery, and the other was sepsis due to pneumonia.
  It was questionable whether my presentation was appropriate for a session of end-of life care.
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