横須賀うわまち病院心臓血管外科

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手術を希望しない大動脈瘤患者さんの動脈瘤が破裂したら?

2019-03-01 15:12:56 | 心臓病の治療
 大動脈瘤はいつ破裂するかわからない時限爆弾のような存在です。生きている間に破裂しない場合も少なからずありますが、残念ながら破裂してしまうこともあります。
 大動脈瘤は破裂しなければ何の症状も呈さないことがほとんどであるため、Silent Killerとも呼ばれます。多くの患者さんはCTや超音波検査などの際に偶然発見されるものです。破裂のリスクは瘤径が大きいほど高いため、手術適応はサイズと破裂の危険性、手術のリスクを考慮して決定しますが、あくまで予防手術です。

 症状はないので手術はしたくない、また、予防治療であることが理解されていない患者さんも中にはいます。瘤が大きい場合は出来るだけ手術を受けるように勧めますが、特に高齢の患者さんの場合は、破裂しても手術は希望しない、と希望する患者さんも少なからずいます。

 そうした患者さんが破裂で搬送されてきた場合は、もともと治療希望がないという意思表示ははっきりしていて、カルテにもその旨、記載されている場合は治療に進むことなく、当然、看取りの方向となります。この場合も患者さんの意思を再確認した上での再度治療を希望しないかどうか確認します。しかし患者さん本人の意識がなかった場合など、意思表示が出来ない状況では、ご親族の判断が優先される場合があります。多くの場合、もともと破裂しても治療しないでほしいと意思表示されていることが多いため、家族の意見も一致していることが多く、その場合は患者さんの希望どおり、看取りの方向ですが、家族が治療を希望している場合は、本人の意思と反して手術に進まざるを得ない場合もあります。患者さんの意識がはっきりしていて、ご家族と意見が合わない場合は、患者さんの希望が最優先となります。特に手術リスクが高い症例では、外科医も無理に手術を進めることはないと思いますが、救命できる可能性が高い状況では、一度は進めること、または患者の意思に反してでもなんとか救おうというベクトルに動くのは自然なことと思います。
普段からご家族と話し合って、こうした場合の対処方針を決定しておくことは大事なことと思います。
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