二人のピアニストに思う

gooニュース、注目のトピックスで「フジ子ヘミングがNHK斬り」を見て自分でもブログを作り、発言したくなった。

昔のダンスホール(3)

2006-09-03 18:35:59 | ダンス
昔のダンスホール(1)}、
昔のダンスホール(2)}、   に引き続いて、
昔の、ダンスホールの「不良」の話を二つほど紹介しよう。

「新橋フロリダ」は名門ダンスホールであったから、それなりの従業員も揃っていて、最後まで順調に営業を続けていた。
  その最終日の物語である。

毎日、夕刻の開店時間が近づくと、ダンサー、ボーイ、などの従業員が規定時間に遅れないように店に入り、 略同時刻に、早目に来店した客達も入店する。

その毎日のパターンで、最終日の翌日も、皆が、夕刻のその時間に合わせて現れた。
ところが、入り口の扉は閉まったままで、開かなかった。
その前夜、閉店して帰る時には従業員達は、その日限りで、ホールが営業を止めることを、知らされて居なかった。

出勤する心算で店の前に現れた、ダンサー・ボーイ達や、今宵も夢を抱いて次々と詰め掛ける客とで、
『閉店』の札の貼られている店の入り口、の前は溢れ返った。


ダンスホールの数ある「不良たち」の中でも、
この経営者ほどの「不良」は少なかった、と今でも私は思っている。


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★ R君は約40年間のダンスホール通いを、
  細君に内証で済ませた「不良」である。


今日は仕事が忙しかった、とか、今日は接待で遅くなった、とか、
帰宅時間が遅くなる事の言い訳は、如何様にも出来るので、ボロを出さずに上手にやっていた。

それだけでなく、帰宅する時に、細君に車で出迎えに来させる事も屡々であった。
ダンスホールの閉店時間、つまり銀座界隈の飲食街の閉店時間帯には、タクシーを拾うのが競争で、中々困難である。
そこで、R君は自宅に電話して、「接待で遅くなったので、銀座8丁目まで車を持って来い」、をやっていた。

ところが、上手の手から水が漏れる日が遂にやって来た。
40数年間うまく隠してきた彼が、出迎えの待ち合わせ場所の指定に下手をやった為に、細君にダンスホール通いがばれてしまった


★「貴方がそういうことをするのならば、私もダンスをやります」、と細君が踊りを始めた。  今から10年ほど前である。

折から世間一般でもダンスが盛んに成り、夫婦で始める人達も多く居た。
ところが、ダンスというものは、ペアーで始めると、80~90%くらいは男性が沈没する
男性と女性とでは上達の速度が異なる事に依る、と私は思う。

よく言われるところでは、男性は女性の5倍の時間を掛けなければ、同じレベルで上達をしない、という。 逆に言うと、同じ時間だけの練習では、女性の上達が早いので、男性は置いていかれる。
いろいろと面白くない思いをする内に、男性は「ヤーメタ」となるのと、 女性が踊りの面白さに目覚めるのが、大体同時期に来るので、男性が沈没する。
従って、男性でダンスを継続しているのは、少し、頭が鈍感な人物が多い、との説まである。

最近は少し事情が変わったようであるが、数年前まではサークル等では女性が多くて、男性の不足が目立った。
ところが、R君は40年選手であるから、奥方が多少努力しても、技量的に追いつくのが中々至難である。
周辺のカップルでは次第に男性が沈没して、女性が困っている中で、R夫人は非常に恵まれた状況で、踊りを楽しんでいる。
そして、R君は、「俺が先行して、やっておいたお陰だと、感謝しろ!」、という現在である。


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昔のダンスホール(2)、 のなかで、
 『私は、“あの人は良い人だ”、と言われる人は、概ね信用しない。』  と書いた。
この文章は、それに続く、一節

{ある有名女優さんの母親が、ダンスホールの常連として現れていた。
 彼女は、身分を隠していた。私はそれを知ったが、誰にも話していない。}
という文章の前置きである。

  その文章に引き続いて、

{彼女も、『私が知っていること』を、知った。 でも、お互いに、それに就いて話したことは、一度も無かった。  彼女も私が口外しないことを、信じていたのだと思う。   それが「不良」である}、 と書いた。

ヤボを承知で、敢えて注釈を付け足すと、こうなる
喋られてはその人が困るであろう情報を、内緒にして置いてくれ、と言って、念を押しても、約束しても、 「駄目な人」は所詮駄目である。
それに較べて、「不良」は、敢えて口封じをしなくても、黙っていてくれる。

その有名女優さんの母親も、その辺を承知している「不良」だから、
  の態度・行動であった。

更にもう一件、この関連の話があった
{或る有名なダンスバンドの、バンドマスターと常連女性客の関係に付いても、これを知る不良どもは口が堅く、絶対に外部には口外しなかった}、話もあった。


★R君のダンスが細君にバレ、細君も踊るようになってから、夫妻は豪華客船のダンスクルーズに参加したことがある。
その船上に昔、ホールでR君がよく踊った「不良」女性が二人で乗っていた。
直ぐに気が付いた彼女らは、R夫妻の面前で、知らん振りをしたが、R君にだけは、合図を送った。
R君は、彼女らに「ばれた事情」を説明し、細君を紹介し、それからは、その船に乗船している間、4人で同じ食卓に着き、愉しく過ごした。

この様に書くと、「不良」とは何か、と思われるかもしれない。
世の中の平均値よりも、遥かに優れた人格者の振る舞いではないか、と。
それは、大分違うのである。


上述の前回の例のように、その人の人生に壊滅的打撃を与えるような場面では、行動を慎んだ不良共も、 そうでない場合、不良のすることは、不良行為であった。

それは、「昔の子供」は、喧嘩をしても、相手を殺したり、大怪我をさせなかったのが、 現在の「良い子」と違う、
  ようなものである。



例えば、 昔のダンスホール(1)、に書いた話で
『昔のホールでは、男女が組んで踊り始めると、30分間をそのまま踊り続け、バンド交代の時に分かれる、のが普通であった。 特別に相手に大きな不満を感じる場合は、バンド交代を待たずに、途中で踊りを止めるし・』、と書いた。
併し、時によると、一曲の途中で彼女が踊りを止めて、憤然と席に戻る、ということも有った。

何が有ったかは書かないが、大体はご推察できるであろう。
男性客同士で、このテクニックを競った、などのことまで、あった。
最近の健全な市民パーテイでは有り得ない、不良どもの所業であるが、「ツブの小さな不良」、の悪業である。
この様に、男女が集まる場所、それも天下承知の「不良」の溜まる場所だから、ダンスホールでこの手の事は、幾つか見たのは当然である。

併し、それらの常識的な話でなく、今回はちょっとスケールの大きな、二つの怪しからぬ「不良」共の所業を紹介した。

 * * * * *
追記: このエントリーへの、ラベンダーさんのコメントを見た佐久間氏から、ご意見を頂いた。
ダンスを愛した、「粋な遊び人」、例えば、遠藤周作氏のような人達の名前を出して、この記事を書いた方が良かった、というのである。

佐久間氏のブログの昨年4月の記事:「エプリルフール」、は、勿論私も読んでいるし、 また、
遠藤周作氏に付いては、私自身も、 :遠藤周作氏、を書いて、承知している。

実は、遠藤氏の他にも、私自身もお付き合いのあった、故・神田山陽氏の様に、『ダンスを愛した、粋な遊び人』の話は、また改めて、纏めて書こうか、とも思っていた。

が、どうなるか一寸不確実なので、ご意見の有ったことだけを、一応、此処にお断りしておく。

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ピアニスト様、こんにちは♪ (ラベンダー)
2006-09-05 12:43:07
今日の不良の話はとても興味を持って読みました。

当時の銀座に出没する不良と称する人たちの何と粋なことか!



名門だった銀座フロリダがいつ消えてしまったのか謎でしたが、その翌日の常連客の慌てぶりとか、がっかりした心情が手に取るように解りました。その人だかりの中にピアニスト様はいたのかしら?と思ったり懐かしき銀座の模様が素敵に想像できました。



と同時に、近頃は粋な遊び人なんて見かけないですね。いやいや、年配者にしてもダンスホールといわれる遊び場でも、不良っぽくて、素敵な大人という雰囲気の人が・・・。

私の周りにいないだけなのでしょうけど、ピアニスト様の情報から想像すると相当なものだなぁ~と頷いている私です♪

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粋な遊び人 (佐久間象川)
2006-09-06 03:34:18
ラベンダーさんのコメントを読んで、気が付いた。

私のブログの昨年4月の記事「エプリエウフール」に書いたことだが、遠藤周作氏はダンスを愛した、「粋な遊び人」であった。 この種の、実名を挙げても差障りのない人の名前を出して、ピアニスト君は、この記事を書いた方が良かった、と思う。
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お尋ねいたします (ラベンダー)
2006-09-08 17:28:07
いつも私のブログにもお出で頂きありがとうございます。

この頃、キャズ様がお見えになりません。過日「三人様はただ者ではない。何者です?」とコメントしてから姿を消しました。とても気にしております・(-_-;)

また、ピアニスト先生が云われたお近くにお住まいらしいとの予感って本当でしょうか?謎は深まるばかりです???
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コメント有難う御座いました (二人のピアニスト)
2006-09-10 05:53:38
ラベンダーさま:

フロリダ最後の日の話は、其処に居た者でなければ、書けない事はお分かりだと思います。

一つお断りして置きます。我々の仲間は皆、「先生」と呼ばれるのが大嫌いです。 「それほどのバカではない」心算で居ます。医者、政治家、学校教師、等と一緒にしないで下さい。 Y君でさえ、そう言っています。

住所に付いては、お墓参りの記事、その他、から見当を付けたのです。 ダンス会場で、長身で、禿げて、80歳代なのに、腰は曲がっていなくて、横目で女性を偵察している、一見、不良に見えない男、が居たら私ですから、要注意です。
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こんばんは♪ (ラベンダー)
2006-09-10 23:27:02
お返事をありがとうございました。

お断りの件、承知致しました。推察するところキャズ様もお元気のようで安心致しました。もうひとつのお話には思わず笑ってしまいました。今度ダンス会場へ行った時(長身で、禿げて、80歳代)の男性がいたら「ピアニスト様ですか?」って聞いてしまいそうです。もし当たっていたら「ラベンダーさんですか?」と応えて下さいね。だって来週行くんですもの・・・。
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興味深く読ませて頂きました (モナミ)
2006-09-13 08:04:29
「昔のダンスホール」2と3大変興味深く読ませて頂きました。(1は既読でした)

ラベンダー様のコメントも楽しく拝見致しました。

あの時代のダンスホールは私に取りましては禁断の世界でした。

「不良」懐かしい言葉ですね。こう呼ばれる人達には些か憬れましたが、近づいてはいけない存在でした。

当時のフランス映画にダニエルダリュウ主演の「不良青年」と題された映画が有りなしたね。原題は何だったのかは知りませんが、「不良青年」と呼ばれる人達の魅力を描いた映画だった様に思うのですが、、、



ピアニスト様初めお仲間の皆様は勉強の合間に戦前の束の間の青春を謳歌されていた様ですね。



戦争が終わり、一般にソシアルダンスのイメージが変わって来た頃私もダンス教室に通いやっと「ダンスパーティーに参加できる身に成りました。
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追記、読みました・・・ (ラベンダー)
2006-09-17 07:30:23
ピアニスト様が浮き名を流したその頃の話を、懺悔の気持ちとして全て告白して下さいまし・・。

これからも『ダンスを愛した、粋な遊び人』の執筆を楽しみにしております。



モナミ 様。はじめまして♪

声をかけて下さり有難うございます。こちらから初めてモナミ様のブログを拝見させて頂きました。私の知らない話も懐かしい気持ちで、まるで童話の中の物語のように、美しく語られておりました♪



素晴らしいお方ですのに驚嘆するばかり・・・。

これからもよろしくお願い致します。

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