「会わずの火」という妖怪がいるらしい。
真夜中に人どうりの無い道を歩いていると、ボゥッと鈍い光が前方に現れる。
その光は直径30Cm~50Cmくらいで、人魂のようにぼやけた明かりらしい。
逃げようとすると必ず前方に現れ、行く手をふさぐ。
しかし、その明かりに近づくと、明かりは距離を保ったまま、スゥッ・・と遠のいてしまう。
直接危害を加えるわけでもなく、人恋しそうに、あるいは恨めしそうに通行人に纏い付く妖怪のようだ。
絶対に会うことのない火、なので「会わずの火」と呼ばれているそうだ。
子供の頃私は、この妖怪の話が恐くてしょうがなかった。
危害を加えない物の怪でも、子供を恐がらせるには十二分の存在感がある。
ましてや、霊魂のように恨めしいオーラを発散しながら向かってくる化け物など、御免こうむりたい。
我が家から母方の実家へ行く途中の道に、この「会わずの火」が出る場所があった。
当時はバイパスなども無く、自動車すらほとんど通らない細い田んぼ道が現場である。
深夜など周りは真っ暗で、いかにも化け物が出そうな感じの道だった。
ある日、父の運転する車で、この「会わずの火」の出る場所あたりを通り抜けなければいけない状況になった。
実家にいる母を迎えに行くためだ。
その真っ暗な道で、父がいきなり尿意をもよおし、車を止めたのだ。
父は車のドアを開け、田んぼに向かって放尿している。
辺りは真っ暗で、カエルの声が陰気に聞こえてくる。
すると、私は、車の前方に光るものを発見した。
そして、遠くの方の明かりが、だんだんこちらに近づいてくるではないか。
子供の私は、顔面蒼白になり、全身が恐怖で満ち溢れた!
私はその光が「会わずの火」であると思った。
父はまだ気がつきもしないで放尿している。
そして躊躇無く、その光は私に向かって前進してくる。
その光が私の乗っている車に接近したとき、その光から音がした。
リンリン!
自転車のベルの音。
いま、この道にはバイパスが通り、回りはコンビニやファミレスで不夜城と化している。
真夜中に人どうりの無い道を歩いていると、ボゥッと鈍い光が前方に現れる。
その光は直径30Cm~50Cmくらいで、人魂のようにぼやけた明かりらしい。
逃げようとすると必ず前方に現れ、行く手をふさぐ。
しかし、その明かりに近づくと、明かりは距離を保ったまま、スゥッ・・と遠のいてしまう。
直接危害を加えるわけでもなく、人恋しそうに、あるいは恨めしそうに通行人に纏い付く妖怪のようだ。
絶対に会うことのない火、なので「会わずの火」と呼ばれているそうだ。
子供の頃私は、この妖怪の話が恐くてしょうがなかった。
危害を加えない物の怪でも、子供を恐がらせるには十二分の存在感がある。
ましてや、霊魂のように恨めしいオーラを発散しながら向かってくる化け物など、御免こうむりたい。
我が家から母方の実家へ行く途中の道に、この「会わずの火」が出る場所があった。
当時はバイパスなども無く、自動車すらほとんど通らない細い田んぼ道が現場である。
深夜など周りは真っ暗で、いかにも化け物が出そうな感じの道だった。
ある日、父の運転する車で、この「会わずの火」の出る場所あたりを通り抜けなければいけない状況になった。
実家にいる母を迎えに行くためだ。
その真っ暗な道で、父がいきなり尿意をもよおし、車を止めたのだ。
父は車のドアを開け、田んぼに向かって放尿している。
辺りは真っ暗で、カエルの声が陰気に聞こえてくる。
すると、私は、車の前方に光るものを発見した。
そして、遠くの方の明かりが、だんだんこちらに近づいてくるではないか。
子供の私は、顔面蒼白になり、全身が恐怖で満ち溢れた!
私はその光が「会わずの火」であると思った。
父はまだ気がつきもしないで放尿している。
そして躊躇無く、その光は私に向かって前進してくる。
その光が私の乗っている車に接近したとき、その光から音がした。
リンリン!
自転車のベルの音。
いま、この道にはバイパスが通り、回りはコンビニやファミレスで不夜城と化している。