小説感想 小川国夫 求道者 2022-05-26 12:57:25 | 本 感想 小川国夫自選短篇集あじさしの洲 骨王短篇集に含まれる「求道者」作者の夢をみた体験から書いたとあとがきにある。文章や言葉つかいに、難しさはない。が、たびたびその言葉と言葉の間に立つ「言葉」に、はたと、読み進めるのをとめてしまう。情景描写や心象描写は、写生的でセンテンスも短く、簡潔であり難解な表現はないのだ。にも関わらず、わからないではなく読み手が、とどまってしまう。すると、小説内の文字が立体的に「立ってくる」(あぁ…そうやったんか…)と。読み飛ばそうと思えばスラスラ読めると思う。読書にやっつけ読書はないと思うが読み飛ばすには、もったいないと思う。故郷の静岡藤枝、大井川、安倍川河口作者が、自分の経験したことを自分の言葉として、右から左に流し読者を立ち止まらせる作品だと思う。出だし、中盤、山場、オチ或いは、起承転結それらがなくとも心にくっきりと輪郭が浮かびあがる小説だ。そして、何度読んでも読み飽きることのない作品(集)とも思う。