グローバル・タックス研究会 ~Study Group On Global Tax~

貧困のない、公正かつ持続可能なグローバリゼーションのための「グローバル・タックス」を提言する、市民研究グループです。

G20サミットに向けた欧州での通貨取引税(トービン税)/金融取引税に関する発言、議論

2009-09-23 | 国連、G20、G8サミットなど
              トービン税議論の口火を切ったターナー英FSA会長

ピッツバーグでのG20金融サミットが24日、25日に開催されます。8月末にイギリスの金融監督(FSA)当局トップが口火を切って以来、ヨーロッパでは国際通貨取引(トービン税)/金融取引への課税について、各国首脳、高官の発言が相次ぎ、議論が盛り上がっています。ご承知のように、G20でも議論が行われ、最終的な声明に盛り込まれる見通しにもなっています。

しかし、ヨーロッパで議論が盛り上がる一方で、日本国内での報道は非常に少ないため、情報が十分に整理されていない面があろうかと思います。そこで、ヨーロッパ各国首脳、高官の発言をヨーロッパの報道から(うち一部はNGOの活動報告から)拾って一覧にしてみました。ぜひご参考にしてください。


G20サミットに向けた欧州での通貨/金融取引税に関する発言、議論


■8月29日 イギリス・金融サービス機構(FSA)ターナー会長


・Prospect誌とのインタビューで、銀行家らが過度のリスクを取り続けるならば、過度の暴利行為を防止するためのシティに対する課税という新たな動きを支持すると表明。

・シティにおける活動の多くを「社会的に無益」と評し、金融業界が大きくなりすぎたのではないかと疑問を呈す。

・「地球公共財に対する理にかなったよい資金供給源」となる税を適用することに賛成だと述べる。

・「膨れ上がった金融セクターにおける過大な報酬の支払いを止めさせたいのであれば、同セクターの規模を縮小するか報酬を支払う前の収益に特別税を課税する必要がある。取引活動に対する自己資本比率の引き上げは、過剰活動と不当利益を排除するために我々が持つ最も強力な手段だ」

・「もし最低所要自己資本比率の引き上げで不十分であれば、私は金融取引に対する課税―トービン税―を喜んで考慮する」

■9月3日 欧州議会開発委員会


・途上国における気候変動への適応の資金として、通貨取引税の導入を提案する決議を採択。

■9月10日 ドイツ シュタインマイヤー外相(連邦議会選挙での社民党の首相候補)/シュタインブリュック財務相


・南ドイツ新聞とのインタビューで、金融危機対策費用の財源確保と投機の抑制を目的として国際金融取引への課税(税率0.05%)を提案。

・「(金融)危機のコストは中小の納税者によってのみ負担させられるべきではない。責任の公平な分担がなければならない」

・「金融市場での『どんちゃん騒ぎ』はもうやめにされなければならない」

・課税の対象は通貨取引のみならず、株式やデリバティブなどを含む全ての金融取引とする。

・この提案をピッツバーグでのG20サミットの議題にすると表明。

・国際金融取引税の導入はG20の全ての国が行うべきだとし、他の国が導入しない場合は国内の金融取引への課税を行うと述べる。

■9月11日 ドイツ・メルケル首相


・オーストリアのラジオ局とのインタビューで国際金融取引税の構想への賛同の意を表す。

・首相のスポークスマンは、G20の非公式なパートで国際金融取引税に対する(国際社会の)支持の具合を探る見込みであることを明らかにする(前日に社民党の提案があった際には、「サミット2週間前にあのような提案はできない」と発言したと報道されている)。

■9月16日 フランス・サルコジ大統領/クシュネル外相


・G20に向けて開発援助に関する提言を受けるためのNGOとの会合の中で大統領が「もちろん私はトービン税を支持する」と発言。

・NGO関係者は発言を非常に公式的なものと受け止めたが、大統領は時期や税率については言及せず。

・外相が「それ(外相の提案している途上国の開発資金確保を主目的とした税率0.005%の通貨取引開発税のことか?)はトービン税ではない」と述べたのに対し、大統領は「それはトービン税であり、言葉遣いを恐れるべきではない。我々はオープンであり続けるべきだ。それはトービン税である」と発言。

■同  日 フランス・クシュネル外相


・Les Echos紙とのインタビューの中で、長年の持論である開発資金のための通貨取引税の導入を訴え。0.005%の税率で200-300億ユーロの税収を見込む。

・英ミリバンド外相から、10月にパリで開かれる革新的資金メカニズムに関するリーディング・グループの通貨取引税ワーキング・グループ会合での議論の前進に向けた支援の申し出があったと述べる。英外務省はこの発言についての取材に対してノーコメント。

・5月にクシュネル外相が通貨取引税の導入を提案した際に否定的な反応を示した仏ラガルド財務相とその後話し合い、原則としては課税への賛意を得たが、財務相はタックスヘイブンなどの問題を話し合わなければならない中でG20に新たな提案をすることで混乱が生じることを懸念していると明かす。

・サルコジ大統領も通貨取引税を支持しており、フランスの意見に耳が傾けられ、国連がこの構想に着手するべきだと考えているが、ラガルド財務相と同様にタイムテーブルについては慎重であると説明。次週の国連総会の場で提案を行うのは時期尚早だと述べる。

■9月17日 EU首脳会議


メルケル首相 が国際金融取引税をG20で取り上げることを提起したものの、確実な合意は得られず。税の実現性などをめぐり、各国首脳の間で意見が相違(フランス、ドイツ、オーストリアは積極的、イギリス、スウェーデンが消極的と伝えられる)。

・しかし、ルクセンブルグ首相 (ユーロ圏財務相グループの長)は「国際金融取引税に関して合意に至らなかったが、別の会議でこの議題を再度話し合う」と述べる。

スウェーデン首相 (現EU議長)「私はそれ(通貨/金融取引税)が答えだとは思わない。ボーナスの問題、(金融機関への)監督、透明性に関する協調行動を取る方が良い」

英ブラウン首相 「問題は実現性である。もし1つや2つでも共通の課税の導入を拒否する国があれば、税の実施は難しい。トービン自身も提案後に自らの構想が機能しうるか疑問を持ち始めた」

サルコジ大統領、メルケル首相、EUバローゾ委員長 は税の導入には積極的だが、グローバルに課税が行われることが条件。

・一方、オーストリア首相 はヨーロッパは「非常に強く」、他の地域が実施しなくても、「ヨーロッパレベルで税を実現すべきだ」と述べる。

■9月18日 G20関係筋


・G20関係筋がロイター通信に対し、ピッツバーグでのG20サミットで「トービン税」が協議される見通しで、最終的な声明に盛り込まれる公算が大きいことを明かす。

・「国際的な金融機関がこれを分析し、結果をG20の財務相に報告することになる可能性が一番高い」

・BBCの取材では、「トービン税」に関する検討はG20から金融安定化フォーラムに委託される見込み。

■9月21日 イギリス・ブラウン首相


・国連総会とG20への出発前の記者会見で金融取引税は「検討の価値がある」と発言。

・しかし、その実現へのいかなるステップも踏む前に、確固たるグローバルな協力とタックスヘイブンに対抗する措置が求められるとした。

■同  日 ドイツ・メルケル首相


・「トービン税」について合意に達することはないとの見通しを示す。

・NDRラジオで放送予定のインタビューで「(トービン税は)G20の案件としてなくなったわけではない。ピッツバーグで協議を進める課題だ」と指摘。「今回の会合で100%の合意に達するとは思わないが、ドイツはこの問題を取り上げる」と語る。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。