感染症内科への道標

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カテーテル尿路感染予防のためのCDCガイドライン2009

2010-02-26 | 感染制御
満田年宏先生 翻訳 2300円 
2010年2月10日出版 

Q1尿路カテーテル処置はだれが受けるべきか
1. 手術患者における尿路カテーテルシステムの使用は、ルーチンではなく必要時に限る。I-B
2. 患者およびナーシングホーム入居者に対して、尿路カテーテルを失禁管理のために使用しない。I-B
失禁患者やナーシングホーム入居者における体外式カテーテル(コンドームカテーテルなど)の定期的な(夜間など)使用と、カテーテルの使用による皮膚損傷の予防については、さらなる研究が必要である。(未解決)
3. 特定の下部尿路閉塞患者において、尿道ステントをカテーテル留置の代用と有益性については、さらなる研究が必要である。未解決 
4. 脊髄損傷患者では、慢性的なカテーテル留置の代わりに、間欠的導尿などを検討する。II
5. 脊髄髄膜瘤や神経因性膀胱を有する小児では、尿路障害のリスクを低減するため、間欠的導尿を検討する。II
6. 尿路カテーテルの無菌的挿入後には、導尿システムの閉鎖式ドレナージ回路を維持する。 
I-B
7. 適切な適応に対してのみカテーテルを挿入し、必要な期間に限り留置する。I-B
8. 尿路カテーテルの使用および使用期間は、すべての患者で最小限に留める。特に女性、高齢者、免疫不全患者など、CAUTIリスクが高い患者では留意する。I-B
9. カテーテルの無菌的挿入及びメンテナンスは、適切な訓練を受けて正確な方法を知る人(病院職員、家族、患者自身など)のみが行うようにする。I-B
10. 尿流が妨げられないようにしておく。 I-B
11. 尿路カテーテルの使用および使用期間は、すべての患者で最小限に留める。特に高齢者や重度の疾患の患者など、カテーテル留置による死亡リスクが高いと考えられる患者では留意する。I-B

Q-2 尿路カテーテルを要する患者にとって、最良の実践とはどのようなものか? 
1. 尿閉または下部尿路閉塞のない協力的な男性患者では、尿路カテーテル留置の代用として、体外式カテーテルの利用を検討する。II
2. 排尿障害のある患者では、尿路カテーテル留置や恥骨上カテーテルよりも間歇的導尿が望ましい. II
3. 簡潔的導尿を行う場合には、膀胱過進展を予防するため、一定の間隔で行う。I-B
4. カテーテル留置の適応のある手術患者では、使用を継続するような適応がない限り、術後できる限り速やかに、できれば24時間以内にカテーテルを抜去する。I-B
5. 短期または長期のカテーテル留置を要する特定の患者において、恥骨上カテーテルを尿路カテーテル留置の代用とするリスクと利益については、特にカテーテル挿入及び留置部位に関連する合併症に関してさらない研究が必要である。未解決 
6. 非急性期ケア環境において、長期的な簡潔的導尿を要する患者の場合、清潔(非滅菌)操作による簡潔的導尿は、滅菌操作よりも実用的で容認可能な代替法である。I-A
7. カテーテル関連尿路感染(CAUTI)率低減のための包括的な戦略を実施してもCAUTI率が低下しない場合、抗菌薬/消毒薬含浸カテーテルの使用を検討する。包括的な戦略には、尿路カテーテルの使用、無菌的挿入、およびメンテナンスに関する優先度の高い勧告が最低限含まれる。I-B
a. 抗菌薬/消毒薬含浸カテーテルによる症候性尿路感染症(SUTI)のリスク低減効果と、一次介入にそれらを含めるか、またこうしたカテーテルが最も有用と考えられる患者集団については、さらなる研究が必要である。未解決 
8. 間歇的導尿を要する患者には、標準的カテーテルよりも親和水性カテーテルが望ましい。II
9. 尿路カテーテルの無菌的挿入後は、採尿システムの閉鎖性を維持する。I-B
10. 複合的な採尿システム(尿排出口の消毒薬放出カートリッジのような細菌侵入を抑制するメカニズムを利用)は、ルーチンに使用する必要はない。II
11. カテーテルと導尿チューブの連結部が予め接続・密閉された採尿カテーテルシステムの使用を検討する。II
12. カテーテル弁によるCAUTIをはじめとする泌尿器合併症のリスク低減効果を明らかにするには、さらなる研究が必要である。未解決
13. (泌尿器手術後のカテーテル抜去時に細菌尿症がある患者など)臨床的適応がある場合を除き、短期または長期のカテーテル留置を要する患者におけるカテーテル関連尿路感染(CAUTI)予防のために、全身性抗菌薬をルーチンで使用しない。I-B
14. 短期間のカテーテル留置を要する患者における、尿路感染(UTI)予防のための(メテナミンなどの)尿路消毒剤の使用については、さらなる研究が必要である。未解決
閉塞のリスクが高い、長期的なカテーテル留置を要する患者におけるメテナミンに関する痂皮形成予防については、さらなる研究が必要である。未解決 
15. 閉塞が予想される場合(例:前立腺または膀胱手術後の出血とともに生じうる)を除き、膀胱洗浄は推奨されない。II
抗菌薬によるルーチンの膀胱洗浄は推奨されない。II
16. 採尿バックに消毒液または抗菌薬をルーチンで点滴注入することは推奨されない。II 
17. カテーテル留置中のカテーテル関連尿路感染(CAUTI)予防を目的として、尿路周囲を消毒薬で消毒しないこと。ルーチンの衛生(毎日の入浴やシャワー時の尿道表面の洗浄など)が適切である。I-B
カテーテル挿入前の尿道周囲の洗浄に、消毒液か滅菌水または生理食塩水のどちらを使用するかは、さらなる研究が必要である。未解決
18. 留置カテーテルや採尿バックをルーチンで定期的に交換することは推奨されない。それよりも、感染、閉塞、あるいはシステムの閉鎖性が損なわれた場合など、臨床的適応にもとづいて交換することが推奨される。II
19. カテーテルの挿入辞には、滅菌済みの使い捨ての潤滑ゼリーを使用する。I-B
消毒潤滑剤のルーチン使用は不要である。II
20. 長期的な尿路カテーテル留置を要する患者における、尿路感染予防のための細菌の干渉の利用(膀胱に非病原性の菌株を接種する)については、さらなる研究が必要である。未解決 
21. 抜去前の留置カテーテルのクランピングは不要である。 II
適切な適応に対してのみカテーテルを挿入し、必要な期間に限り留置する。I-B
留置カテーテルの適応のある手術患者では、使用を継続するような適応がない限り、術後できる限り速やかに、できれば24時間以内にカテーテルを抜去する。I-B
22. 間歇的導尿を実施中の患者では、尿量を評価し、不必要なカテーテル挿入を抑制するため、携帯型超音波装置による尿量評価を検討する。II
23. 尿量が少ない留置カテーテル患者における、携帯型超音波装置による閉塞の評価については、さらなる研究が必要である。未解決 
24. 医療従事者をはじめとするカテーテルケアの担当者が、尿路カテーテルの挿入、メンテナンス、および抜去の正しい方法や手順に重点を置いた、定期的な職場研修を受けられるようにする。I-B
留置カテーテルの適切な使用を促し、カテーテル関連尿路感染(CAUTI)リスクを低減するため、施設内のリスクアセスメントにもとづいて質改善(QI)プログラムまたは対策を実施する。 
有効性が実証されているプログラムとしては、以下のようなものが挙げられる。 
1. 尿路カテーテル留置患者を全員特定し、留置継続の必要性を評価するための警告または注意喚起システム
2. 不要な尿路カテーテルを看護師主導で抜去するためのガイドラインおよびプロトコール 
3. 適切な使用、手指衛生、およびカテーテルケアに関する教育と成績フィードバック
4. 以下のような周術期の適切なカテーテル管理のためのガイドラインおよびアルゴリズム
カテーテル留置と術後のカテーテル抜去に関する処置別のガイドライン
看護師主導の間歇的導尿や膀胱超音波スキャナーの利用など、術後尿閉の管理用プロトコール 
25. カテーテル留置患者に対するルーチンの無照応性細菌尿(ASB)のスクリーニングは推奨されない。II
26. 挿入やカテーテル留置部位およびデバイスに対する処置の直前・直後には手指衛生を行う。I-B
27. 尿流が妨げられないようにしておく。 
28. 尿路カテーテル留置患者の空間的隔離による、導尿システムに定着する病原体の伝播予防についてはさらなる研究が必要である。未解決 
29. カテーテル関連尿路感染(CAUTI)に関するサーベイランス実施時は、看護スタッフをはじめとする適切な臨床ケア担当者に対して、病棟別のカテーテル関連尿路感染(CAUTI)率を適切に(3か月ごとなど)フィードバックすることを検討する。II

Q-3 尿路カテーテル閉塞に関連するカテーテル関連尿路感染(CAUTI)予防のための最良の実践とはどのようなものか? 
1. カテーテルの閉塞頻度が高い長期カテーテル留置患者における、酸性化溶液によるカテーテル洗浄および経口ウレアーゼ阻害剤使用の有益性については、さらなる研究が必要である。未解決 
2. 閉塞の頻度が高い長期カテーテル留置患者において、痂皮形成リスクを低減するには、他の材質よりもシリコンが望ましい。II



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