弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

Law&Orderからみるアメリカ、検事は社会正義のため

2012年03月05日 | Law&Order

21回目も良かったですね。

検事は犯罪を訴追するのが仕事ですが、でもただ処罰だけを
目的としているわけではない、ということは、日本でも一般論として
教えられています。

21回目のカッターの審問をみていると、どちら側の尋問をしているのか
と思うことがありました。

カッターとしては、いかに同情すべき理由があろうとも人を殺した以上、処罰せざるを得ない、
かといって、弱みに付け込んで、そこまで追い込んでいき、巨額の利益を
得ている者をゆるしておくわけにはいかない、
本当の被害者のためになんとかしたいというわけです。

そこで、取引をするわけですが、今回は、ラボから示談金を出させることで
被告人に有罪を認めさせるという、なかなか難しい役回りです。
(陪審裁判というのは、実際に殺人があっても、陪審員が同情すると無罪にしてしまい
ます。これは法律論を越えていますが、よくも悪くもそれが陪審制です。
カッターもみとめていたように、陪審員でなくとも同情してしまうような事件です。
ですから、全体としての正義を実現しようとすると、取引による解決しかないのです。)
マッコイも出てきて、勝手に採血するのはbatteryに当たる、犯行の場(採血した
介護施設)が自分の管轄だ、つまりいつでも立件できるよと、まー脅しみたいな
ものですね、といって、検事3人が、かわるがわる説得するわけで、1000万ドル
一時金での示談もやむを得ないと観念するしかないですね。
被告人もこれで50年の一族の無念を晴らし、墓をつくり、みんながそれなりの生活
ができるとなれば、取引も悪くはないわけです。

今回は、犯罪の背景、本来ならば弁護側がすべきことかもしれませんが、
検事には真実発見の義務があるわけで、被告人に有利な事情についての
検事の取り調べにかかる部分が丁寧に描かれていたと思います。

なお、警部補のヴェン・ビューレンが自らの癌患者としての気持ちをカッターから
聞かれます。確かにプライバシーにかかることで怒りももっともですが、
彼女のいうように、「勝つためなら」何でもする、と簡単に割り切れないと
思います。
私には、むしろ、カッターも真実も知りたかったのでは思います。
そしてその真実は、どちらかというと、被告人に有利なのではと思うのです。
ヴェン・ビューレンも認めるように癌になれば、要は、治る治療法であれば
何にでも救いを求める、その治療法の背景に何があろうと関係ないというのが
本当の気持ちでしょう。
とすれば、そういう画期的な治療法の発見の貢献者でありながら、何も
知らされずただだた利用されてきただけの被告人・被害者一族は
医学の進歩の被害者です。それが大きくクローズアップされると思うのです。
だとすると、陪審員は被告人により同情的になるのではないでしょうか。

今回は、ラボから巨額の示談金を引き出させ、被告人ら一族の50年にわたる
屈辱を果たすために、逆に被告人の裁判が利用されていたように思います。

だから、見終わって、正義が良い形で果たされたという安ど感が残りました。

事件というのは複雑な背景があります。
それぞれの事件に相応しい弾力的な解決ができるという点で司法取引の
制度も悪くないと思います。
しかし、こういう制度は、検事にはとても負担がかかります。
完全に堕落した日本の検事にはできそうにないですね。

 


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