弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

LAW&ORDERからみるアメリカ、安楽死・尊厳死について

2011年12月12日 | Law&Order

Law&Order のシーズン18が始まりました。
これからが楽しみです。
シーズン18は2008年1月から5月に報道されたものです。
最近のアメリカについて、以前に比べ、知識が増加してきましたから、
背景事情を知っていることで、作品の理解に深みができたように
感じるのです。

18の#1は、安楽死というか尊厳死というか、痛みの激しい末期患者
の自殺を助ける行為です。
実は、Law&Orderはニューヨーク・ポストの第一面の報道記事をヒントに
テーマを選択しているということでした。ただ、出来上がったものは
実話とは全く関係ないということでした。
ですから、どこまでが実話でどこまでが創作なのかも気になっていました。

今回の#1は、多分、「死の医師」として知られていた実在の
ジャック・ケボーキアン氏に関係しているのだと思われます。
同氏は自らの末期患者を約10年にわたり総計130人尊厳死させたとして
1999年にとうとう自殺ほう助(第二級謀殺罪)で有罪になっていたのですが、
2007年に仮釈放になっていたのです。
条件は自殺ほう助はしないということでした。
なお、同氏は、自殺装置をみずから考案していたのです。
薬物を利用したものと一酸化炭素中毒を利用したものがあり、
いずれも患者自身が装置を作動させる仕組みだったのです。
また、1999年の有罪のきっかけはCBSテレビで、実際にほう助の様子を
放映させたことでした。

こういう背景事実を知っていると、#1はかなり事実に近いものがあります。
おそらく、死の医師の仮釈放に刺激されたものと思います。

しかし、その後は創作ではないかと思われます。
というのは、ドラマでは法廷の場で効き目があらわれるよう、薬物を自ら
服毒して自殺をするのですが、
現実の死の医師であるジャック・ケボーキアン氏は、その後も選挙に出るなど
活躍し、今年の6月3日、83歳で自然死をしたのです。
皮肉なものですね。

なお、安楽死・尊厳死に使う薬が死刑執行に使うのと同じというのも、考え
させられます。事実というのはこういうものなんでしょうね。

アメリカでは、医師の処方の下での末期患者の自殺について、
1997年にオレゴン州で、2009年にはワシントン州で法律で認められる
こととなり、その後、連邦最高裁判所でも合憲との判決があったという
ことです。

ということは、#1は自殺をする権利についての、賛成、反対のそれぞれの
立場を法廷という場で明らかにして見せたものといえましょう。
そして、自殺する権利は憲法で認められたものだと、証人席で証言しながら
法廷で自殺を完結させるという、Law&Orderのドラマは、
現実の法律の世界でのその後の動きをみると、極めて象徴的です。

多分、これがLaw&Orderの魅力なのでしょう。

また、若干余談になりますが、シーズン18では、地方検事のアーサーに
かわりマッコイがその後任になるのですが、
シーズン17の最終回でマッコイが辞職願を出し、アーサーに受理を拒否され
撤回する場面があります。
そのときに、アーサーがマッコイの検事昇進を示唆した際、マッコイは
自分は政治に関心はないと言い、アーサーは最初はみんなそういうと答えて
います。
アーサー役のフレッド・ダルトン・トンプソンは、俳優でもありますが、
共和党の上院議員もした政治家で、Law&Orderのアーサー役を降りたのは
2008年の大統領選挙に共和党から立候補するためだったのです。
立候補表明はしたものの、撤退したということです。
オバマの対戦候補になる可能性があったのですね。
最後の場面のアーサーの言葉はとても深い意味があったのですね。

ますます楽しみです。


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