弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

LAW&ORDERからみるアメリカ、政治的腐敗

2012年02月06日 | Law&Order

Law&Orderのシーズン19の最終回とシーズン18の最終回は
いずれもシュルボイ・ニューヨーク知事にかかわるもので、
密接に関係しています。

18の方の知事の売春婦との関係については、実際にニューヨーク州知事
に起こった不祥事です。
あの頃は、私はオバマウオッチングをしていましたので、
かなりアメリカ事情には詳しいのです。

マネーロンダリング絡みで高級コールガールの組織が盗聴されていました。
盗聴中に、顧客の中に、当時のエリオット・スピッツァー、ニューヨーク知事がいたのです。
夫人は夫とともに記者発表に立ち合い、夫を支える姿勢を示したのですが、
結局、世論の非難には耐えられず、辞任することになりました。
2008年3月のことです。
そういうときに引き合いに出されるのは、常にビルとヒラリークリントンでした。
「stand by her man」という言葉がマスコミに溢れていました。
こういうときはhusband ではなくman なんですね。
リタ・シャルボイは、そういうことは真っ平御免という態度でしたが・・・
なお、スピッツァー夫人も有能な弁護士だったのですが、夫のためにキャリアを
捨て、政治家夫人として陰で支えていたようでした。

19の方の最終回は、ブラゴエビッチ・イリノイ州知事の汚職疑惑が下敷きです。
オバマ大統領の後任の上院議員のポストを巡って、
空席の指名権があるイリノイ州知事が、その席を金で売ろうとしていたのです。
2008年12月、汚職容疑で逮捕されました。
最終的には2011年12月に14年の禁固刑の言い渡しがありました。

いずれの事件も大々的に報道されましたから、アメリカの人は、
この2回のドラマをみれば、実際の政治の腐敗を嘆くはずです。

マッコイの政治腐敗との戦いというのは、2008年を通して、世間を騒がせた
州知事の腐敗問題があったのです。

Law&Orderはアメリカ社会に対する鋭い問題提起を含んでいるのですね。

最後の夫婦の騙し合いはちょっと悲しいですが、
マッコイのいうように家族は政治家にとっては道具なのかも知れません。

【アメリカ法の豆知識】
配偶者間の秘匿特権について
アメリカのドラマをみていると配偶者が証言を拒否する場面が出てきます。
今回も、夫人のリタは、夫の知事に証言させないことができると
言っていますが、それに対して、夫の知事は例外がある、
ネックレスを持ちだしたからという趣旨の発言をしていますね。
実は、配偶者間の秘匿特権には二つあるのです。

一つは、配偶者間の免除(Spousal immunity)というものです。
 これは、一方の配偶者は他の配偶者に対する証言を拒否できる
 ということです。
 言いたくない配偶者はいわなくてもいいというだけです。
 当の配偶者が、この特権を行使せずに、自ら証言しようとするときは
 他方の配偶者は、これを止めさせることはできないのです。
 これは刑事事件だけです。

もう一つは、婚姻上の秘密情報の伝達に関する秘匿特権(Confidential
Marital Communication)というものです。
 これは、婚姻関係という親密な関係にあるもの間で信頼してなされた情報について
 相手方の配偶者に情報を開示させないという特権です。
 ですから、こちらの方は、一方の配偶者が証言したくても、他方の配偶者は
 証言させないことができるのです。 
 これは民事、刑事の双方に適用されます。
 夫人が言っていたのはこちらの方です。
 したがって、夫人は知事が不利なことを喋ろうとしてもこれを阻止できるというわけです。
 しかし、これには例外があって、その配偶者に対する犯罪がある場合は
 認められないのです。
 ネックレスを夫に黙って持ち出すことは、横領かなにかの犯罪になるはずです。
 ということで、夫の知事は、妻の犯罪について、自由に証言できるというわけです。
 知事の座と引き換えに夫人を売ったというわけです。

最後は、カッターが駄目押しをし、結局知事も辞任に追い込みましたね。
本当に知恵比べ、騙し合いの真剣勝負です。
そこがLaw&Orderのおもしろいところでしょう。

今年は、アメリカ大統領選挙の年です。
オバマの再選がかかっています。
どうなるのでしょうか。今年は仕事や経済の問題が前面にでているので、
4年前の選挙とは全く雰囲気が違っています。