MANIMANIAのレトロエロゲーカウントダウン

人生の残り時間が半分を切ったというのに若き日に目にしたエロゲーに魂を引かれ続けるイタいおっさんがこなしたゲームを紹介。

18禁ソフト制度の発足とテクノポリスの衰退-沙織事件の次の一手

2008-06-10 12:26:57 | Weblog
テクノポリス(徳間書店)について,以前に斜め読みした'89年版の後休刊までの分を一部欠けているものの,斜め読みしてみた。

'90,'91年分では,レモンちっくWORLDのページも新作紹介のレモンflashのページもどんどん増えていくのだが,'92年1月号('91年12月8日発売)では11月29日に発売予定だった「ドラゴンナイトIII」(エルフ)の両面見開き広告に,でかでかと「発売延期」の文字(その後,局部を完全に隠すようにグラフィックを修正して'92年1月17日に発売)。

発売延期画像

そして,レモンちっくWORLDのページは扉ページの次ページの見開きで,「美少女ソフトよ,永遠なれ」と題した文字ばかりの記事。署名記事で,執筆者は編集人の「山森 尚」名義。

92年1月号画像

これらの記事は,'91年11月25日,'91年夏の京都の少年による万引きをきっかけとして京都府警が,わいせつ図画販売目的所持の疑いで,フェアリーテール(「ドラゴン・シティ」,「沙織」)とジャスト(「天使たちの午後III・番外編」,「天使たちの午後IV」)の両社を捜索するとともに両社長を現行犯逮捕するという事態(いわゆる「沙織事件」)の発生を受けての急遽の対応だったらしい。

「ドラゴン・シティ」の紹介と感想はこちら
「沙織 美少女たちの館」の紹介と感想はこちら

「沙織」のパッケージ。なにこれ恐い。


ちなみに,この1月号から,LOLI山田なる編集者だかライターだかが,カラーページ1枚潰してゲームキャラに宛てたラブレターを綴るという「LOLIの誌上LOVE LETTER」というコーナーが始まる(12月号まで休載の3月号を除いて全11回)。
はっきり言って気持ち悪いし,誌面の無駄以外の何ものでもなかった。
突発的事態でページを埋めるための緊急措置だったんだろうが,それならとっとと終わっとけ。

'91年12月中旬には,アリスソフトが新作の「D・P・S SG set3」に独自の18禁シールを貼って対応するが,テクノポリスではこの対応を支持しなかったようだ。

'92年5月号('92年4月8日発売)では,レモンちっくWORLDのページに続けて「美少女ソフトは永遠だ!」と題したやはりカラーなのに文字ばかりの記事(こちらは1月号の記事と異なり署名がないが,おそらく先と同じく編集人だった「山森 尚」氏の筆によるものと思われる)内で,「例の事件で問題となった『沙織』は,パッケージにはっきりと『18歳未満お断り』と書いてあるにも関わらず,摘発されたというのも事実だ。現時点でも『ウチは18禁として売ります』と言っているところが多いようだが,それでは何の問題解決にもなっていないと思うのだが・・・・・・。(改行)各ソフトハウスが18禁でいこうと動きつつある中で,テクノポリスでは,『18歳未満お断り』のソフトに関しての紹介記事はしない!という編集方針を立てた。」,「今後の18禁ソフトについては,広告も含めて掲載しないことにした。」と記載している。

92年5月号画像

「18歳未満お断り」のソフトを紹介しない理由は,「読者の半分以上が18歳未満であるということはもちろんだが,18禁シールを貼ればいい!という姿勢にいまひとつ賛成できなかったからであり,『アダルトソフト』ではなく『美少女ソフト』というものをきちんとひとつのジャンルとして確立したい,ということで,この編集方針でいくことにした」('92年11月号)とのことである。

アダルトソフトだか,美少女ソフトだか知らんが,他所様が作ったいわゆるエロゲーのエロ画像を紹介することで未成年者におかずを提供して部数を上げてきた雑誌風情が「美少女ソフト」ジャンルの確立とはご大層なことである。
それなら,編集部で18禁シールの有無にかかわらず,吟味したうえで,これは「アダルトソフト」,これは「美少女ソフト」と区別して後者だけ紹介すればよさそうなものだが,これはしない。
とりあえず,「18歳未満お断り」と指定されたソフトにはもう関わりません,というものだ。「美少女ソフト」ジャンルの確立という大志はどこへ行ったのか。これを語るに落ちるという。

ましてや,「例の事件で問題となった『沙織』は,パッケージにはっきりと『18歳未満お断り』と書いてあるにも関わらず,摘発されたというのも事実だ。」('92年5月号),「現に,摘発された『沙織』はパッケージに大きく『18歳未満お断り』と書いてあったのだ。この事実に各ソフトハウスは気がついているのだろうか。」('92年11月号)などと,「18禁」の表示にこだわるソフトハウスをバカ呼ばわり。
しかし,結論としては「18歳未満お断り」扱いの有無で,誌上で紹介するかしないかを分けるというのだから開いた口がふさがらない。

第一,「18歳未満お断り」ソフトを取り扱いませんという結論を導き出すためには,読者の半分以上が18歳未満であるという理由だけで足りるのに,「美少女ソフト」と「アダルトソフト」なんて区別にこだわるのはなぜなのか。
「去年まで発売されていた美少女ソフトには,アダルトソフトと呼ばざるをえないモノがたくさんあったし,それをテクノポリスでも美少女ソフトとして扱っていたのも事実。こういったソフトもまとめて美少女ソフトと呼んできたテクノポリスとしても,反省しなければならない。」('92年5月号)と書いてある。
そりゃ,「美少女ソフト」と「アダルトソフト」の区別なんて誰も気にしてないんだから当たり前だ。
そして,テクノポリス自身,この'92年5月号の段階でも11月号の段階でも「美少女ソフト」の定義付けすらできていない。
それにもかかわらず,テクノポリスが,顔を真っ赤にして,「アダルトソフト」と「美少女ソフト」は違う!と言いつのるのは,「私たちは6年半もの間,わいせつなものを紹介してきたのではない」('92年1月号)と言い切りたかったからにほかならない。

この編集方針により'92年5月号以降,テクノポリスには18禁のいわゆる「エロゲー」の記事も広告もなくなった。18禁でない「人形使い」や脱衣麻雀は載っているんだが・・・。
「本誌ではすっかり紹介しなくなってしまったソフトハウスもいくつかあるが,このあたりは読者の方にもご理解いただきたいと思う。」('92年11月号)とのことだが,コンスタントにヒット作を出しているメジャーメーカーのアリスソフト,ディー・オー,エルフ,ハードなどの作品が,広告も含めて誌面からまったく姿を消すような編集方針は,同人誌ならともかく,商業誌としては致命的な判断ミスというほかない。
また,紹介できる作品数が減った関係からか,大した魅力のないGAMEテクノポリス製のゲーム(「テセラ」,「初恋物語」,「電脳天使」等)が数か月にわたって繰り返し紹介されるという事態が頻発し,読者を辟易させた。

結局,'92年5月号の決断は,論理的でないのみならず,商業的に誤ったものであることが編集部にも明らかとなったが,編集部はその後もこの方針を修正することができず,2年を待たず,休刊('94年3月)への道を突き進んだ。

2010/05/27 追記
ふと思って「沙織」のパッケージを確認したところ,「例の事件で問題となった『沙織』は,パッケージにはっきりと『18歳未満お断り』と書いてあるにも関わらず」('92年5月号),「現に,摘発された『沙織』はパッケージに大きく『18歳未満お断り』と書いてあったのだ。」('92年11月号)との記述に反して,それらしい記載はない。



せいぜい,上の画像の水色で囲んだ中に小さく「※X指定とはアメリカ映画協会で18歳未満絶対禁止の意味」と書かれているだけだ。



おまけに,このパッケージの「X指定」は,販売店に対して,18歳未満の者への販売を禁止するために書かれているわけではなく,フェアリーテールの単なるブランド名を示すものに過ぎなかった。


「X指定はフェアリーテールの登録商標です。」

結局,テクノポリスは,「沙織」のソフトを持っている者の絶対数が少なく事実関係を確認しにくいことに乗じてウソまでついて,読者の支持する美少女ソフトならぬエロゲーから逃げたのだ。
そして,体面を取り繕った長文の言い訳も読者を繋ぎ止めることはできず,18禁ソフト制度の発足を機に,18禁ソフト制度を批判したテクノポリスがその市場を失い,休刊の道を辿ったのは皮肉というほかない。

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