今までの流れです。
① ② ③ ④
さてさて、ナイトケアが3日目を迎える頃、彼女は不穏のピークを迎え、かなり暴れたと聞きました。主任や所長の腕には引っかき傷がたくさんできていました。『私らの力不足と言えばそうなのかもしれない。でも、お父さんへの思いがそうさせるんやろうな…。』と所長はおっしゃっていました。『暴れると、グループホーム側が断ってくるかもしれない。今日だけのことで落ち着いてくれたらいいんやけど、急に環境を変えることが彼女にどんなに負担になるかを向こうがわかってくれるかも心配やな。』その日は穏やかに過ごしていました。でも時折、「お父さんが待ってるから帰らなあかんねん。」とつぶやき、私はそのたびに気持ちを逸らせたり、つきあったりしていました。
あくまでもナイトケアは緊急的な受け皿です。介護保険外のサービスとして行っています。土・日曜はどうするかとなった時に、お試しならと土日月の朝まで受け入れてくださる施設があるとケアマネさんから話があり、彼女はそこへ体験入所へ行きました。月曜日の夕方に戻ってきたのですが、すごく顔が厳しくなっていました。どうして私は子供の元へ戻れないのか?どうしてこんなところへ押し込めるのか?この人らは私を閉じ込めている!とんでもない悪党だ!という思いが全身から放たれていました。声をかけようとしても、私の前へ現れないで!という勢いで手を払いのけられてしまいました。デイルームには入らずに、玄関のロビーで座ったり、立ったりを続けていました。彼女を見守りながら、自分の力不足を思い知らされました。本当の寄り添う気持ちなんて私はないのかな?どこかに業務を優先している事の気持ちも否定できず、中途半端なもやもやを抱えていました。
主任は、不穏になっている彼女の側にきて、向き合って言いました。『お父さんは今、入院して点滴をしてはるんやわ。だから、お父さんを休ませてあげよう。息子さんにも頼まれてる。大丈夫やから、今日はここで泊まってゆっくりしよう。』何気ない言葉でした。でも、真実です。主任はタイミングよかったんかもと後で言っていましたが、その真実を受け入れて彼女は泣き崩れ、落ち着きました。主任が用事で去った後に、彼女の背中をさすりながら私は考えました。
不安は何もなくて生まれるんじゃない。何かが起こってそれが、何なのかわからないから不安なのだ。それを伝えてくれる人がいたら、頑張っていける。短い間で記憶が消えてしまうから、伝えた事は忘れてしまう可能性は大きいです。だけど、その不安に正面から向き合う相手になることをしたいと、彼女と関わって考えていました。嘘も真実も求めていることを伝えて、気持ちを汲み取っていきたいと。
そして、3日後、彼女の入居が決まりました。入居に行く日は私は休みになっており、その前日に残業をわざとして、彼女とたくさん話をしました。だけど、帰るが言えなくて、嘘をついてしまいました。『○○さん、ご飯外で食べに行く約束したから、行ってくるね!』彼女は笑顔で「行っといで~。」と送り出してくれました。その笑顔が彼女との最後の対話になりました。
彼女の存在があって、色々と考える機会ができたと本当に思います。長々と読んでくださり、ありがとうございました。
① ② ③ ④
さてさて、ナイトケアが3日目を迎える頃、彼女は不穏のピークを迎え、かなり暴れたと聞きました。主任や所長の腕には引っかき傷がたくさんできていました。『私らの力不足と言えばそうなのかもしれない。でも、お父さんへの思いがそうさせるんやろうな…。』と所長はおっしゃっていました。『暴れると、グループホーム側が断ってくるかもしれない。今日だけのことで落ち着いてくれたらいいんやけど、急に環境を変えることが彼女にどんなに負担になるかを向こうがわかってくれるかも心配やな。』その日は穏やかに過ごしていました。でも時折、「お父さんが待ってるから帰らなあかんねん。」とつぶやき、私はそのたびに気持ちを逸らせたり、つきあったりしていました。
あくまでもナイトケアは緊急的な受け皿です。介護保険外のサービスとして行っています。土・日曜はどうするかとなった時に、お試しならと土日月の朝まで受け入れてくださる施設があるとケアマネさんから話があり、彼女はそこへ体験入所へ行きました。月曜日の夕方に戻ってきたのですが、すごく顔が厳しくなっていました。どうして私は子供の元へ戻れないのか?どうしてこんなところへ押し込めるのか?この人らは私を閉じ込めている!とんでもない悪党だ!という思いが全身から放たれていました。声をかけようとしても、私の前へ現れないで!という勢いで手を払いのけられてしまいました。デイルームには入らずに、玄関のロビーで座ったり、立ったりを続けていました。彼女を見守りながら、自分の力不足を思い知らされました。本当の寄り添う気持ちなんて私はないのかな?どこかに業務を優先している事の気持ちも否定できず、中途半端なもやもやを抱えていました。
主任は、不穏になっている彼女の側にきて、向き合って言いました。『お父さんは今、入院して点滴をしてはるんやわ。だから、お父さんを休ませてあげよう。息子さんにも頼まれてる。大丈夫やから、今日はここで泊まってゆっくりしよう。』何気ない言葉でした。でも、真実です。主任はタイミングよかったんかもと後で言っていましたが、その真実を受け入れて彼女は泣き崩れ、落ち着きました。主任が用事で去った後に、彼女の背中をさすりながら私は考えました。
不安は何もなくて生まれるんじゃない。何かが起こってそれが、何なのかわからないから不安なのだ。それを伝えてくれる人がいたら、頑張っていける。短い間で記憶が消えてしまうから、伝えた事は忘れてしまう可能性は大きいです。だけど、その不安に正面から向き合う相手になることをしたいと、彼女と関わって考えていました。嘘も真実も求めていることを伝えて、気持ちを汲み取っていきたいと。
そして、3日後、彼女の入居が決まりました。入居に行く日は私は休みになっており、その前日に残業をわざとして、彼女とたくさん話をしました。だけど、帰るが言えなくて、嘘をついてしまいました。『○○さん、ご飯外で食べに行く約束したから、行ってくるね!』彼女は笑顔で「行っといで~。」と送り出してくれました。その笑顔が彼女との最後の対話になりました。
彼女の存在があって、色々と考える機会ができたと本当に思います。長々と読んでくださり、ありがとうございました。
こんな難しい利用者に完璧に対応出来る人は居ないのです。どんなに人生経験が豊富でも、こう言う我侭な人は何を言っても、してあげてもオヘソが曲がって居るのですから・・・
でも それに辛抱強く向かっていらっしゃるisoさんには心から感服してしまいます。
在宅復帰なんて認知症棟では殆どありません。
私は正直に言ってしまうことが多いのだけれど、周囲の職員はみんな隠しますね。
自分の人生を決められず騙される・・・って自分がされたらどんなにショックだろう・・・と思います。
すぐ忘れてしまうにしても理解出来ないにしても、誠心誠意「あなたと会えて良かった、理由があってあなたはここから他のところへ移るけれど、行った先でもきっとよくしてもらえるから。」と希望を持って話すことは、隠して嘘をついて相手を悲しませるよりもずっといいんじゃないかと思うんです。
>不安は何もなくて生まれるんじゃない。何かが起こってそれが、何なのかわからないから不安なのだ。それを伝えてくれる人がいたら、頑張っていける。短い間で記憶が消えてしまうから、伝えた事は忘れてしまう可能性は大きいです。だけど、その不安に正面から向き合う相手になることをしたいと、彼女と関わって考えていました
認知症ケアの基本だと思います。
うーん・・・。わがままといえばわがままかもしれないですよね。鋭敏に元から持っていた性格が出ることもあります。でも、自分がわけのわからないまま、知らない所へ連れて行かれて、右も左もわからない状態。出口がありそうな扉へ行こうとしたら止められる。自分は歩く事ができるし、交通機関を使えば帰ることができるのに、車が帰ってくるまで待ってと言われる。・・・とんでもない所に拉致された!こいつらは悪党だ!・・・ってな考えになって、泣いたり、暴れたりすることが普通になると思うんですよ。大げさじゃなくて。
色んな文献や介護職をされている方のブログやHPを拝見して考えたりするのですが、まだ、自分ははっきりと認知症のこと、向かい合う利用者さんの求めている事を理解できていないなあと痛感します。
>私は正直に言ってしまうことが多いのだけれど、周囲の職員はみんな隠しますね。
私が隠してしまったのは、その人に真実を突きつけるのがやっぱり怖かったのだと思います。知らない所でいきなり生活を送ってもらうということがどんなに負担になるだろうかという思いと、それを伝えることで混乱させてしまうのではないかと考えてたからです。ただ闇雲に事実を突きつけるのではなくて、その人の気持ちを安心させる『希望』を持たせること、誠心誠意、その方を思う気持ちで接する事が大事なのかなと思いました。JUNKOさんがご自身のブログの記事で、辛そうにしている利用者さんに真剣に伝えているところを思い出しました。
認知症のケアに対して、まだまだ、その人の行動について観察するということだけしか出来ていない状況です。向き合って、勉強をしていくことをこれからも続けたいです。