ブラジルとブラジルのマーケティングあれこれ

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【ブラジルの数字】ブラジル人の外食についての調査

2013-07-31 18:55:02 | ブラジルの数字

最近、レストランの値段が高くなって嫌になっているけど、それでもどの店でも人がいっぱいなのが不思議で、さらに新しいい店が次々とオープンしている。実際、ブラジル人のお客はどんな感覚でいるのだろうか、と思っていたところ今日のFolhaがそれについて調べた調査結果を出していたので、少し数字を見てみたい。

新聞の記事なのでサンプルのプロフィールなど以下のことしかわからない。実施会社はDatafolha。

*サンパウロ市内
*サンプル数:563人
*年齢:16歳以上
*社会クラス:ABCクラス
*調査期間:7月2、3日
*誤差:4%

以 下に数字を見ていくけど、この「外食」の定義が記事ではよくわからない。ブラジルでは労働法で昼食のチケット(今はカード)の支給が義務付けられているので、ほとんどの人が週日は外で食べている。昼食を家に食べに帰るというのは、古き良き時代のブラジルの話である(実は僕は仕事場が近いので家で昼食 を食べていることを告白しておく)。だからこの記事でいう「外食」は日々の職場の近くで摂る昼食ではなく、週末や夜の家族や友人との食事と解釈すべきだと 思う。

1)値段について

圧倒的多数(72%)が「高い」あるいは「とても高い」と 答 えている。安いという人はゼロだ。高くなったというのは僕だけの感覚ではなかったのだ。過去12ヶ月のインフレ率(IPCA)は6.7%だが、IBGEの 統計では外食の値段は10.3%に上っていると記事はいっている。誰も指数をそのまま当てはめて値段の改定などせず、切りの良い数字に切り上げるのが普通 だから、体感的にはもっと上がっている気がする。例えば2レアルだったカフェインフレ率を掛けて2.134レアルというようなことはしない、せいぜい 2.3とか2.5にする。またレストランが増えたことにより人材不足も深刻で、人件費の上昇も料理の値段に転嫁されているはずだ。急にレストランが求める 水準の従業員なんて増えるわけはなく取り合いになっている。



2)レストランに行く頻度

数字を足すと87%で、100%にならない。このあたりがいい加減で困るのだが「わからない」「回答なし」というのが13%もあったとしかいえない。タダでデータをくれているのでこのあたりは我慢するしかないか。

「1 週間に1回以上」と「15日に1回」というのが、いわばABクラスの行動様式で、「1ヶ月に1回」以下がCクラスと解釈してもいいと思われる。Cクラスに なる前、Dクラスというのは所得からいって外食に回すお金などなかったわけで、それがレストランの質は問わなくても外食できるようになったのが、近年ブラ ジルでおこった変化であり、それが市場を大きく広げた。



3)頻度の変化

「過 去半年」というのは微妙な設定だが、4月にトマトが19%も値上がりし、食料品全体の値段を押し上げたのを前提にした設問だと思われる。21%が少なく なったと答えているが、頻度を変えなかった人が64%もあり、また14%にいたっては反対に増やしている。多くの人が「高くなった」という認識をもってい るにもかかわらず、こういう結果がでている。このあたりがブラジルの消費者の行動・思考様式を表しているように思えてならない。景気が悪くなっても失業率 が低い水準で推移している現在、所得にはさして大きな影響が現れていないため、倹約というライフスタルの変更を採用するまでには至っていないということだ ろう。「やっぱり楽しみたい」というブラジル的な本能のなせる技であろう。

また記事ではサンプルの社会階層の内訳が不明だが、もしかすると家計に占める外食費の重みが軽いABクラスが多く含まれているかもしれない。いずれにせよ外食産業の人たちにとっては心強い数字だろう。



4)外食が少なくなった理由

複数回答になっている。この設問が上の設問で「少なくなった」と答えたグループのみが対象だとすると、回答者は118人になり、サンプル数としては少し物足りない。

それはさておき、理由の中に「安全でないから」(Segurança)があり、ほぼ他の「お金が足りない」と「高いから」というもっともな理由と並んでいるのが興味深いし、サンパウロの事情を反映しているように思える。

サ ンパウロでは6月から街頭でのデモがおこり、しばしばパウリスタ大通りなどは閉鎖されている。このデモがある日は商店は店を壊されることを恐れて早く店じ まいをしたりしたが、少なからぬレストランも店を閉めた。デモそのものは家族連れの参加もあったりして、一部の「便乗組」が暴れたり、商店の強奪があった が、そういうところに近づかなければ危ないというものではなかった。しかし、一般の人はどうしても夜出歩くの控えたりした。僕も一度会食をキャンセルした ことがあった。別に危なくないのはわかっているけど、何か嫌な気がしたものだ。

調査が行われたのが7月の始めなので、そういう市民の気 持 ちが現われたのかもしれない。また、去年ぐらいから日本食を含めて中級以上のレストランが強盗に襲われるという事態が頻発している。営業時間中に武装して 侵入、店の売上だけでなく(今はカード支払いがほとんどだから現金なんてあまりないが)、お客の財布、携帯電話をごっそりとさらっていくものである。実際 に知り合いの店もこれにやられている。これも夜の外食は危ないという印象を市民に与えているのは間違いないだろう。



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